輪島塗、大堀相馬焼、加茂桐箪笥…歴史ある「伝統的工芸品」が長年使い続けられている理由とは?

杉浦太陽と村上佳菜子がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより」(毎週日曜 7:30~7:55)。「学びと成長」をコンセプトに、毎回さまざまなゲスト講師をお招きして、明日の暮らしがもっと豊かになる情報や気になるトピックをひも解いて、今よりもちょっと成長することを目指す番組です。

6月1日(日)の放送テーマは、「古いのに新しい! 伝統的工芸品」。経済産業省 伝統的工芸品産業室の久保田裕子さんから、伝統的工芸品の特徴や魅力について伺いました。


(左から)杉浦太陽、久保田裕子さん、村上佳菜子



◆東京オリンピックで日本の伝統技術を発信

広島の熊野筆、神奈川の箱根寄木細工、岩手の南部鉄器など、日本には昔から生活のなかで使われてきた“伝統工芸品”が数多くあります。これらの工芸品は、生活の道具としての機能を持ちながら、長い年月をかけて磨かれてきた技術や美しさを今に伝えています。

近年では、伝統の技を活かした新しい製品や現代的なデザインのものも増えており、若い世代や海外でも注目を集めています。たとえば、2021年に開催された東京オリンピックでは、卓球台の脚部分に石川県の輪島塗の装飾が、表彰状には岐阜県の美濃和紙が用いられて話題となりました。

その一方で、伝統工芸品の生産量は年々減少し、「担い手の高齢化」「後継者不足」といった課題にも直面しています。2024年に発生した能登半島地震では、輪島塗の工房が大きな被害を受け、今もなお職人たちの日常は戻っていません。

◆「伝統的工芸品」に選ばれる条件は?

日本にはさまざまな工芸品がありますが、そのなかでも、伝統的な技術や技法を守り、次の世代へと伝えていくことを目的に経済産業大臣が指定したものを「伝統的工芸品」と呼びます。久保田さんは、選定されている品目について、「伝統的工芸品には衣料品に用いられる織物や染色品、食器などに用いられる陶磁器や漆器などのほか、家具などの木工品や和紙、仏壇、人形などもあります」と説明します。

現在までに指定されているのは、愛知県高浜市の「三州鬼瓦工芸品」、大阪府和泉市の「いずみガラス」、沖縄県宮古島市の「宮古上布」など、全国で243品目にのぼります。ちなみに、伝統的工芸品に選ばれるには5つの要件を満たす必要があります。

1:人々が暮らしのなかで使う日用品であること
2:製造過程の主要部分が手工業的
3:伝統的な技術・技法により製造
4:伝統的に使用されてきた原材料が現在も主たる原材料として用いられていること
5:一定の地域で産地形成がなされていること

“伝統的”とは「約100年以上の歴史を有すること」とされており、制度上の1つの基準となっています。そして、指定品目に選ばれると、「伝統的工芸品」の名称が使えて、製品にシンボルマークを付けることができます。

◆大阪・関西万博で伝統的工芸品を展示中

伝統的工芸品は、単に「歴史がある」「文化を感じる」といった理由で残ってきたわけではありません。長く使われてきた背景には、その優れた機能性があります。

その1つが漆製品です。輪島塗などに代表される漆器は、木に漆を重ねて塗ることで耐熱性や耐久性が高まるほか、独特の光沢や色合いが生まれます。さらに、漆には古くから抗菌性があると考えられていましたが、「新型コロナウイルス感染症が拡大した際に改めて検証したところ、食中毒を起こす菌への抗菌性や新型コロナウイルスへの抗ウイルス性が確認されました」と言及。

そして、漆製品は日常的に使うことでツヤが増し、風合いが深まっていくのに加えて、壊れても修復して使い続けられることからSDGsの観点からも注目されています。

他の伝統的工芸品でも、最近は現代的なデザインのものや、これまでにない製品が誕生しています。福島県の大堀相馬焼という伝統的工芸品には「二重焼(ふたえやき)」という技法を使った湯呑みがあります。ひと回り大きさの違う器を重ねて焼くことで二重になっている湯呑みで、飲み物が冷めにくく手が熱くならないという長所があります。最近は、この長所を活かしたタンブラーなども登場しています。

他にも、新潟県の加茂桐箪笥(かもきりたんす)の技術で作られたスマホ用スピーカーや、長崎県の波佐見焼で作られたコーヒーフィルター、宮崎県と鹿児島県の本場大島紬で作られた洋装のコートなど、伝統的工芸品の技術を活かした製品のバリエーションはどんどん増えています。

そして、伝統的工芸品の素晴らしさを世界中の人々に広めるべく、現在開催中の大阪・関西万博では、石川県の輪島塗で作られた直径1メートルの巨大地球儀が展示中です。「夜の地球Earth at Night」という作品名で、宇宙から見た地球の夜景、漆黒の闇と文明の明かりを輪島塗で表現しています。

この地球儀は万博会場中心部の「静けさの森」の近くで常時展示されていて、事前予約なしで鑑賞することができます。また、8月には伝統的工芸品の展示や職人の指導による製作体験ができるイベントの開催も予定しています。改めて久保田さんは「ぜひ、多くの方に伝統的工芸品の素晴らしさを味わってほしいです!」と呼びかけました。

番組のエンディングでは、杉浦と村上が今回学んだ「伝統的工芸品」について復習。2人が特に注目した点をピックアップして発表します。村上は“あなたの地元の伝統的工芸品は何ですか?”とスケッチブックに書き、「聞かれても“何だろう?”っていう人が多いと思うから、これをきっかけに調べてもらえたらいいなと思いました」と話します。

続けて、杉浦は“日本の宝 伝統的工芸品を知ろう!”を注目ポイントに挙げ、「興味を持った方は、伝統的工芸品に指定されている全243品目の詳しい情報を発信している「伝統工芸 青山スクエア」のWebサイトをご覧ください」と話していました。


(左から)杉浦太陽、久保田裕子さん、村上佳菜子



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6月1日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2025年6月9日(月)AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。

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<番組概要>
番組名:杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより
放送日時:毎週日曜 7:30~7:55
パーソナリティ:杉浦太陽、村上佳菜子
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/manabiyori/

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