「家賃の未払いリスク」「入居できない不安」を軽減…今年10月から施行され た「改正住宅セーフティネット法」で何が変わった?専門家が解説

杉浦太陽と村上佳菜子がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより」(毎週日曜 7:30~7:55)。「学びと成長」をコンセプトに、毎回さまざまなゲスト講師をお招きして、明日の暮らしがもっと豊かになる情報や気になるトピックをひも解いて、今よりもちょっと成長することを目指す番組です。

10月12日(日)の放送テーマは、「安心して暮らせる住まいを! どう変わった? 住宅セーフティネット法」。国土交通省 安心居住推進課の横田圭洋(よこた・よしひろ)さんから、「住宅セーフティネット法」の詳細や、10月から施行された改正ポイントについて伺いました。


(左から)杉浦太陽、横田圭洋さん、村上佳菜子


◆「住宅セーフティネット法」とは?

現状、単身世帯の約3割が高齢者であり、2050年には、この割合が5割近くに達すると推計されています。持ち家率の低下もあって、今後は賃貸住宅で暮らす高齢者がますます増えることが予想されています。

その一方で、高齢の一人暮らしの方から「大家さんから高齢を理由に入居を断られないか」といった声が上がることが少なくありません。実は高齢者に限らず、所得の低い方や子育て世帯、障がいのある方なども、さまざまな理由で入居を断られるケースがあります。とはいえ、大家側も「入居者の死亡」「家賃滞納」「近隣トラブル」などのリスクを懸念し、慎重にならざるを得ない事情があります。こうした課題に対応するため、2007年に施行されたのが「住宅セーフティネット法」です。

セーフティネット法について、横田さんは「低所得者や高齢者など、住宅の確保が困難な方々が、安心して賃貸住宅に入居できることを目的として制定された法律です。2017年に大きな改正をおこない、『住宅確保要配慮者』とされる方の入居を拒まないセーフティネット住宅を設ける仕組みを作りました」と解説します。なお、住宅確保要配慮者の対象は、低所得者や高齢者のほか、障がい者、子育て世帯、外国人、被災者などが含まれています。

セーフティネット住宅は、大家が都道府県などに登録することで利用できる賃貸住宅で、すでに全国で約94万戸(2025年3月時点)が登録されています。専用サイト「セーフティネット住宅 情報提供システム」では、所在地や家賃などを検索でき、住まい探しをスムーズに進められます。

◆10月より創設「居住サポート住宅」

さらに、今年10月1日に再び住宅セーフティネット法の改正法が施行されました。「ポイントは、住宅の確保が困難な方と大家さんの双方が、より安心できる改正になっている点です」と横田さん。ここからは、その改正ポイントについて学んでいきます。

まずは「居住サポート住宅」の創設です。居住サポート住宅は、入居者の生活の変化やトラブルに対応できるよう、大家さんと居住支援法人が連携して支援をおこなう仕組みです。居住支援法人とは、要配慮者が円滑に賃貸住宅に入居できるよう支援する団体で、都道府県が指定しています。不動産会社や福祉系企業、NPO法人などがこの役割を担い、住宅情報の提供や相談対応、生活支援などをおこなっています。

また、具体的なサポート例として、横田さんは「センサーやIoT家電、電気、ガスなどの使用状況を見て、動きが一定時間なければ自動通知するようなシステムを導入して安否確認をしたり、支援スタッフが定期的に直接訪問するなどして見守りをおこないます。また、見守りのなかで入居者の生活や心身の状態が不安定になったときには、状況に応じて福祉サービスにつなぎます」と説明します。

他にも、暮らしに課題を抱えるひとり親や障がいのある方に対して、専門の相談窓口につないでくれるケースもあります。心身の変化に気づきにくかったり、相談をためらったりする人にとって、見守りを通じて支援につなげられることは大きな安心となります。

◆家賃の未払いリスクや回収の手間を軽減

続いての改正ポイントは、「家賃滞納に困らない仕組み」の創設です。横田さんによると、これまで賃貸住宅を借りる際は連帯保証人を求められることが一般的でしたが、近年は、連帯保証人の代わりに家賃債務保証業者を利用するケースが増えました。

借主が家賃を支払えなくなった場合、この保証会社が一時的に家賃を立て替えて大家に支払うため、借主は大家との契約に加えて保証会社とも契約を結ぶ形になります。この仕組みにより、親族に保証人を頼みにくい人でも部屋を借りやすくなり、大家も家賃の未払いリスクや回収の手間を軽減できるようになりました。

一方、家賃債務保証業者のなかには強引な取り立てをおこなう業者もありました。そのため、前回(2017年)の法改正の際に、一定の要件を満たす家賃債務保証業者を国に登録し、その情報を公表することによって業者を選択できるようになりました。それが今回の改正では、新たに「一定の基準を満たした家賃債務保証業者」を認定する制度を国土交通大臣が新設しました。

この制度について、横田さんは「一定の基準は主に2つあり、1つ目は先ほどご紹介した居住サポート住宅への入居を希望する要配慮者の家賃債務保証を原則断らないこと。もう1つは、家賃債務保証の契約条件として、緊急連絡先を親族などの個人に限定していないことです」と解説します。

◆利用しやすくなった「終身建物賃貸借契約」

このほかにも、住宅セーフティネット法に関連が深い「高齢者住まい法」も10月1日に法改正され、今回の改正によって終身建物賃貸借契約(借主が亡くなるまで契約が続き、死亡時に終了する賃貸契約)の手続きが簡素化されました。

一般的な賃貸借契約では、借主の死亡後に契約が家族や親族に相続されるため、大家は相続人への対応や家賃回収に時間がかかることがあります。しかし、身寄りのない高齢者の場合は相続人の特定自体が難しく、対応に苦労するケースも少なくありません。

一方、終身建物賃貸借契約では借主の死後に契約が自動的に終了するため、大家にとっては手続きの負担が軽減されます。そして、借主にとっても「生涯同じ家に住み続けられる安心感」を得られます。ただし、この契約を結ぶ際、従来は都道府県などへ申請・認可が必要でした。それが今回の改正により、その手続きが簡略化され、より利用しやすくなりました。

最後に横田さんは「住まいは人生の土台です。改正された住宅セーフティネット法などによって、これまで以上に皆さんが安心して暮らせる仕組みに変わっています。まずは、住宅セーフティネットについて理解を深め、みんなで安心の輪を広げていきましょう」と呼びかけました。

番組のエンディングでは、杉浦と村上が今回学んだ「改正された住宅セーフティネット法」について復習。2人が特に注目したポイントをピックアップして発表します。まず村上は“2025年10月から居住サポート住宅が始まります!”を注目ポイントに挙げます。続いて杉浦は、注目ポイントを“住宅セーフティネット法が改正されました!!”とし、「住宅セーフティネット制度について詳しく知りたい方は、国土交通省のWebサイト、または、最寄りの自治体へご相談ください!」とコメントしました。


(左から)杉浦太陽、村上佳菜子



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<番組概要>
番組名:杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより
放送日時:毎週日曜 7:30~7:55
パーソナリティ:杉浦太陽、村上佳菜子
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/manabiyori/
番組公式X:@manabiyori_tfm

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