短編小説
以下、豊本さんの『バナナは僕のガードマン』あらすじ・感想文です!
(豊本さんの文章そのまま掲載させていただきます byスタッフ)
『バナナは僕のガードマン』あらすじ・感想文
<あらすじ>
バブリアン作、短編小説『バナナは僕のガードマン』 あらすじ
主人公は、小学5年生のヒロシ。背が低い彼は、同級生で幼なじみのタカヒロからいつも意地悪ばかりされていた。
しかし、ひょんなことからヒロシは、タカヒロの“弱点”を知り、復讐を始める。
タカヒロの弱点。それは、バナナだった。
理由はわからない。でもタカヒロはバナナが嫌いで嫌いでしょうがなかった。食べるのはもちろん、なんと見るのもダメで、バナナを使ったヒロシのイタズラに毎回悲鳴をあげて驚いた。バナナをきっかけに、二人の立場は完全に逆転してしまったのである。
そして一ヶ月がたったある日……
ヒロシはついに、なぜタカヒロがあんなにもバナナを嫌うのか? その理由を知ることになる。
タカヒロがバナナを嫌う理由。
それは、3年前の春休み、妹のミヨが、散歩中にたまたま道端に落ちていたバナナの皮を踏んで転び、頭を打った衝撃で、身体にとても深刻な後遺症が残ってしまったからだった。
ヒロシは、そんなタカヒロの悲しみを知り、今までのことを謝り、仲直りを果たす。
そして、物語は最後にこうシメられて終わる。
「なんか、笑っちゃうけど・・・バナナは僕の友達を取り戻させてくれた。
そう、いろんな意味で・・・バナナは僕のガードマン」
以上
<感想文>
『バナナは僕のガードマン』を読んで/東京03豊本明長
僕は最初タイトルを聞いて、一体どんな話なのか? どんなジャンルなのか? 何もかも想像がつかず、かなり前のめりになっていました。
しかし読み進めるうち、その前のめりが仇となり、強烈なカウンターパンチをくらう事になりました。そう、“狂気”という名のカウンターパンチを。
これは、友情物語や学園モノといったジャンルで収まりきる代物ではありません。主人公のヒロシがタカヒロに意地悪をされる描写で
「机の引き出しにクラスの半分のたて笛がぎっしり入っていたり」
というのがありました。
一見、単純にダイナミックな意地悪だと思いましたが、考えてみて下さい。小学生がやりそうな意地悪が数ある中で、クラスの半分の縦笛。この独創性。この独創性に僕は強い狂気を感じました。
しかもタカヒロの意地悪は小3の春から小5まで“長期”にわたって続いているんです。机の引き出しにクラスの半分のたて笛がぎっしり入っていたりする2年間を想像すると、もはやホラー作品です。
さらに物語の最後
「なんか、笑っちゃうけど・・・バナナは僕の友達を取り戻させてくれた。
そう、いろんな意味で・・・バナナは僕のガードマン」
一見ハッピーエンドの結びなんでしょうが、ヒロシは便利なガードマンを手に入れたので、またいざとなったらバナナを使ってタカヒロを追い込むのではないか? まだ描かれていないこの物語の先にも狂気を感じました。
そして何より、いちばんゾッとしたのが“タカヒロがバナナを嫌う理由”です。
急に来ました。まったく準備していないところを殴られた感じです。
というのも、なぜ生放送のラジオのディレクターが、“後遺症”という重い展開が出てくる作品をわざわざチョイスして提出してきたのか? これはもう狂気を通り越して、単純にバカなんじゃないかと思いました。彼女のラジオディレクターとしてのガードは一体どうなっているのか?
そしてお待たせしました。
前作、『ガラスのくつを履く日』でも見受けられた【独特な比喩表現】は、今作でも健在でしたので、紹介しておきます。
背が低い主人公とはうってかわり、成長期で背を伸ばしていくタカヒロのことを……
“ジャックと豆の木の木が伸びる様な速さでグングン背を伸ばし”と、表現。
そして、二人が仲直りするシーン。ヒロシがランドセルをあえて胸の前に抱えている姿のことを……“逆カタツムリ”
さらに
タカヒロが妹の不幸を思い出して涙するシーンでは……
“大粒の涙は、涙製造工場のようにポタポタと落ちている”
これらには、相変わらず強いオリジナリティーを感じました。
バブリアン先生に聞きたいです。涙製造工場とは一体どんな工場なのか? 僕は今までに一度も見たことも聞いたこともないのですが、小説ではさも“皆さんお馴染みの”みたいな感じで出てきていました。
比喩表現ファンタジスタことバブリアン先生。
またもや、次回作に期待せずにはいられません。
豊本明長