サッカー香川危機一髪、揺れるドルトムント事件の真相

中西哲生と高橋万里恵がパーソナリティをつとめるTOKYO FMの番組「クロノス」。 4月17日(月)放送の「クロノス+PLUS」のコーナーでは、ジャーナリストの仲野博文さんにドイツで起こったドルトムントのバス爆破事件の真相とそこから見える世界の現状ついて話を伺いました。

4月に入り朝鮮半島では不安定な情勢が続いていますが、ヨーロッパでも政治的に不穏な状況が危惧されています。その一例が現地時間4月11日に起きたサッカー日本代表の香川真司選手が所属するドイツ一部ブンデスリーガのドルトムントのバス爆破事件。
この事件ではドルトムントの選手が1人ケガをしましたが、関係者の話ではもし爆発物が1秒でも早く着火していたらより多くの重傷者、あるいは死者が出ていた可能性もあったとか。地元メディアでは死者が出なかったことが奇跡と報じられているようですが、この事件に関して気になる続報が届いています。

そもそも事件発生からしばらくして、ドイツの警察と検察はイスラム過激派による犯行と見て、過去にイスラム国の部隊指揮官として活動していたことのあるひとりのイラク人を拘束。
事件現場には西側諸国によるイスラム国壊滅作戦に関与しているドイツに対して復讐を示唆するメモが残されていたこともあって、当初はその線が濃厚でしたが、数日前から状況が一変。
そのメモの内容が通常のイスラム国や過激派の文体や文面、内容が異なること、さらにはわざとメモを残していたことなど問題視される点が多々あがり、その結果イスラム過激派とは思想的に真逆のドイツの極右勢力による可能性が出てきたそうです。仲野さんの話では「ネオナチ、そういった類いのグループによる犯行」と報じられているそうで、ドイツの新聞社にはネオナチ組織から今回の事件は最後警告だという声明も届いているとか。
今ドイツでは選挙に向けて動いており、4月22日にはケルンで右翼政党に反対する人たちによる大規模なデモが計画されています。そして、そこでは新たなテロが予告されていて、もしかするとドルトムント事件はその警告だった可能性があると仲野さんは言います。
「ドイツでテロや事件と言うとイスラム系の組織というイメージがあるんですが、実はネオナチによる犯罪も増えていまして……」と話す仲野さん。日本ではあまり報道されていませんがそういった事件は続いており、2013年には約700件しかなかったヘイトクライムも2015年にはおよそ1300件まで増えているそうです。
しかも、以前であればユダヤ系や少数民族がターゲットにされていましたが、今はトルコ人やイスラム教徒が狙い撃ちにされている事例が多いとか。仲野さんはこうした傾向が9月から始まる選挙にどう影響するのか、とても心配していました。
また、仲野さんがさらに危惧しているのが極右の存在と、今まで中道と言われていた政治的には真ん中にいる人たち。これまでは両者による対立の構図がありましたが、「今はその振り子が大きくなって、極右と極左、つまりはリベラル系だった人が左寄りになって、今は政治的に真ん中にいた人たちが右か左かどちらかに寄りつつある状況になっているんです」と話します。

一方、中西が不安視しているのはアジア。
北朝鮮のさまざまな問題に対し、アメリカは中国、韓国、日本と対策をとっていくと言いますが、軍事行動のオプションは依然として残したまま。北朝鮮がもしも地下核実験やミサイル実験を行った場合には何が起こるかわからない、まさに一触即発の状況です。
そんな現状に対して、仲野さんは「アメリカは自制していると思いますね」と言い、今ものすごく緊張した状態にあると話しますが、もしこれが切れたら……「どっちが切るかということもあるんですが、そうなった場合にアメリカが大々的に動く可能性はあります」と最悪の状況をも示唆していました。