MC蒲田健による放送後記。
今回お迎えしたエキスパートは、劇作家、演出家、作家の宮沢章夫さんです。
サブカルとサブカルチャーは似て非なるもの。
宮沢章夫さんの最新刊「NHKニッポン戦後サブカルチャー史 深堀進化論」
宮沢さんの説によればサブカルチャーの起源は1956年、と明確に規定される。
エルビスプレスリー、ビートニク、太陽族が世に出た年。
そして忘れてはならないのが宮沢章夫生誕の年でもあるということ。
えっ、そこも重要なファクターなの?というツッコミが入るが
半ば強引に極個人的な時間軸もそこに持ち込むことで
一つの説としてのサブカルチャー論が、創造物という要素を持ちながらも
借り物でないリアリティを持ってくる。本職が実作者であることの面目躍如でもある。
サブカルチャーはストリートカルチャーとほぼ同義であると宮沢さんはいう。
ロード(街道)サイドの均質な巨大ショッピング施設に対しての
ストリート(路地)に点在する猥雑な個人経営セレクトショップのイメージが
近いだろうか。セレクトショップごとに深堀するベクトルも深さも異なり
それが多様性を生み出す。21世紀以降は更にサイバー空間がバーチャルな
ストリートの役割を果たすようにもなってきて広がりは増し続けている
昨今ではいわゆるクールジャパンの主要コンテンツという文脈でも語られることの
多い「サブカル」。もはや国を代表する文化という様相すら呈している。
だが「サブカルチャー」というのは、時の権威(ハイカルチャー)が
眉を顰めるようなものとして発生してきた。大いなるものへ“なんでやねん”
というツッコミとしての存在。
この本質においてサブカルとサブカルチャーは似て非なるものであるのだ。
グローバル化が加速する社会において、サブカルチャーの役割は今後より
重要になるのではという思いにもなる。「そんなこと言われても」と
サブカルチャー側からはニヒルにいなされそうではあるが。
「果てしなく 人の営み 網羅する
愛しきそれが サブカルチャー」
P.S.今回も、時にブラックな要素もありながらも、ユーモア・笑いを常に芯のところに含ませる、飄々とした語り口でお話しくださった宮沢さん。
ご自身がサブカルチャーそのものを体現しているように思わせる方です。
対話の中で想起される予定調和でない即興性に今回も大いに刺激を受けました。