ゲスト:穂村弘(歌人)
「きっとあの人は眠っているんだよ」
穂村弘さんの最新刊「これから泳ぎにいきませんか:穂村弘の書評集」「きっとあの人は眠っているんだよ:穂村弘の読書日記」
穂村さんの膨大な読書歴の一端をうかがい知ることの出来る今回の2冊。取り上げられている作品は、小説、エッセイ歌集、漫画・・・とジャンルも様々。基本的には新聞の書評などのために書かれたものが多いので、それぞれの作品の魅力がコンパクトに凝縮されている。魅力は伝えつつ、でもネタバレはしてはいけない、というギリギリの寸止め具合がスリリングである。
またそれぞれのタイトルが良い。いずれも中で紹介されているエピソードに由来するのだが、前後の説明があれば何でもないようなセンテンスなのに、コンパクトであるが故にリテラシーが発動され、様々な背景が想起される。いきなり「きっとあの人は眠っているんだよ」と言われたら、何とも言えない不気味さを感じる人は少なくないはずだ。
歌人・穂村弘の面目躍如である。
「ためになる ものじゃないもの 咀嚼して
いつか血になり 肉となる かも」
P.S.「人間:ことば:世界」の関係性を「クモ:クモの糸:クモの巣」に見立てた例えが秀逸でした。また、ヘンなもの、とんがったもの、だからこそ手に取る、というニュアンスの話も非常に味わい深し!