FUTURES ラジオ版学問ノススメ 蒲田健の収録後記&OA曲

ゲスト:中村文則

“この物語をずっと書いてみたかった”

中村文則さんの最新刊「その先の道に消える」

禍福は糾える縄の如し、自縄自縛、一筋縄ではいかぬ、・・・等々。「縄」という文字を使う慣用句にはどこかミステリアスな気配が含まれるものが多い。
それもそのはず、古来より縄は神事と密接な関係があるのだという。

今作では人々の欲望を満たすための重要なツールとして登場する「縄」。そしてそれは単なる道具としてというレベルではなく、様々なものが絡まり折り重なっていくことにより表出してくる人間の業をも象徴している。

小説というものはストーリーを描いてゆく中で、読者に本質的なことを想起、喚起させてゆく装置。フォーカスする部分は作家によって千差万別。その中にあって、中村さんは人間のダークサイドに特に注力する。そのことによって、ブライトサイドはより鮮やかに、より立体的に浮かび上がってくる。

ダークで、時に暴力的でグロテスクな描写もありながら、最終的なメッセージは過去の作品同様「共に生きましょう」ということで通底している。

「束ねられ 一つになって いくことで
          そこに宿りし 力増しゆく」

P.S.  本質をえぐる作品で、日本のみならず世界でも注目される中村さん。新聞連載も抱え、「いやーこの業界、人手不足なんですよー」と冗談交じりで仰ってましたが、求められる発信はこれからも益々増えていくことは間違いないでしょう。ご自愛いただきつつの今後のご活躍、大いに期待しています!

OA曲:TIE ME DOWN(Gryffin with Elley Duhé )