番組に登場する詩⑤〜声に出して読んでみよう!〜

なかなかシュールで、刺激的な詩ですね。 でもなんか情景が思い浮かんでしまう、夕間暮れの1シーンです。

「ゆうぐれ」 谷川俊太郎

ゆうがた うちへかえると
とぐちで おやじがしんでいた
めずらしいこともあるものだ とおもって
おやじをまたいで なかへはいると
だいどころで おふくろがしんでいた
ガスレンジのひが つけっぱなしだったから
ひをけして シチューのあじみをした
 
このちょうしでは
あにきもしんでいるに ちがいない
あんのじょう ふろばであにきはしんでいた
となりのこどもが うそなきをしている
そばやのバイクの ブレーキがきしむ
いつもとかわらぬ ゆうぐれである
あしたが なんのやくにもたたぬような

(『よしなしうた』青土社(1985)より)