#29『I got rhythm 音楽が生まれる時』 概要と選曲リスト

是非これを見ながら聴いてください!


今月のテーマ:「The World of Black & Blue」(第12回:リズム&ブルーズ)
パーソナリティ:ピーター・バラカン(ブロードキャスター)


ソウル・ミュージックのリズムがみえる。
レコードプレイヤーから響きラジオからほとばしる。

WVON が伝えるのは、黒人暴動のニュース、
ヒッツヴィルUSAのヒット曲。
外では平等な権利を獲得するために戦う。
けれど、うちではダンスダンスダンス。

ソウルのリズムがみえる。
耳慣れた声が今、新しいメッセージを歌う。

<番組のもとになった本>

絵本『リズムがみえる I see the rhythm』(サウザンブックス社)より
(文:トヨミ・アイガス、絵:ミシェル・ウッド、翻訳:金原瑞人、監修:ピーター・バラカン)

<番組のトーク・パート(概要)と選曲リスト>
― 今月は、ブラック・ミュージックの歴史を描いた絵本『リズムがみえる I See the Rhythm』を基に、ブラック・ミュージックの歴史を紐解いていきます。今回のテーマは「リズム&ブルーズ」です。

今回の「リズム&ブルーズ」は、第二次世界大戦が終わった直後から始まるプロセスになります。それまで大流行だったビッグ・バンドが、色んな理由で維持しにくくなっていき、スウィング・ジャズのエッセンスを保ちながら、小さな編成のグループが流行るようになります。その最たるものが、ルイ・ジョーダンというサックス奏者が率いた
グループです。

1「Choo Choo Ch’Boogie」Louis Jordan
<Spotifyリンク>※ラジオでOAしたものとバージョンが異なる場合があります。

 スウィング・ジャズの雰囲気を持ちながら、ほとんどロックンロールの原型のような雰囲気もある、1946年の曲です。ルイ・ジョーダンは、非常にエンターテイナーとしての素質も大きく、大人気者でした。B.B.キングやチャック・ベリーも、彼の音楽に影響を受けており、次世代のブラック・ミュージックの担い手のほとんどは、彼を崇拝していたと言っても過言ではありません。彼がこの曲を使った時は、「リズム&ブルーズ」という呼び方はなく、大衆来なブラック・ミュージックは、「レイス・ミュージック」と呼ばれていました。1949年になると、業界紙のビルボードが、「レイス・ミュージック」のチャートの名前を「リズム&ブルーズ」に変えます。

―50年代に入っていくと、ゴスペルの雰囲気を取り入れつつ、ブルーズの要素のある、徐々にまた新しいスタイルのブラック・ミュージックができていきます。それが、のちに「ソウル」に発展していきます。
 ここで、ソウルの草分け的存在の人たち3人の曲を紹介します。1人目はレイ・チャールズです。

M2「I Got A Woman」Ray Charles
<Spotifyリンク>※ラジオでOAしたものとバージョンが異なる場合があります。

 1954年に作られた画期的な曲で、よく知られたゴスペル・ソングの歌詞の一部を変えてラブ・ソングにしたものです。50年代半ばに、こうことを時々していたレイ・チャールズは、一部のゴスペル・ファンの中で物議を醸したこともありました。その様子は、映画『Ray(レイ)』をご覧頂くとわかります。

―2人目に紹介するのは、ジェイムズ・ブラウンです。

M3「Please, Please, Please」James Brown
<Spotifyリンク>※ラジオでOAしたものとバージョンが異なる場合があります。

 1956年に出た、ジェイムズ・ブラウンのデビュー曲。当時彼は22歳です。ほとんど「プリーズ」しか言っていない歌詞に、レコード会社の社長は文句を言っていましたが、いざレコードを出すと、大ヒットになりました。
 ジェイムズ・ブラウンは非常に貧しい環境で育ち、車を盗んだことで一時期少年院に入っていました。その中で出会ったザ・フェイマス・フレイムスらと仲間になり、この曲で彼らをバックに従えています。

―3人目に紹介する、ソウルの草分け的人物は、サム・クックです。名門ゴスペル・カルテットの有名なグループの一つにソウル・スターラーズというのがありましたが、そのリード・ヴォーカルを途中から務めたのが、当時まだ10代だったサム・クックです。彼は歌も素晴らしく、ルックスもよかったので、ゴスペルの世界ではほとんどアイドルのような存在になりました。しかし、次第に彼はポップ・シンガーに変わっていきたいという気持ちになりました。ゴスペルの敬虔なキリスト教者の支持者がたちは、それを許しませんでしたが、誰になんと言われようと、自分の進みたい道を進みました。

M4「You Send Me」Sam Cooke
<Spotifyリンク>※ラジオでOAしたものとバージョンが異なる場合があります。

 サム・クックのポップ・シンガーとしてのデビュー曲です。ゴスペルの雰囲気が非常に色濃く出ています。彼はポップの世界で成功したいという気持ちが強く、レイ・チャールズやジェイムズ・ブラウンに比べると、洗練された歌い方で、聴きやすい雰囲気のレコードを作り続けました。
 彼は1964年に33歳の若さで亡くなりますが、没後約20年後に、生前には発表されなかったライブ・アルバムがレコードで発売されます。それを聴くと、レイ・チャールズやジェイムズ・ブラウンに負けないくらいの迫力で歌っています。

M5「Shout」The Isley Brothers
<Spotifyリンク>※ラジオでOAしたものとバージョンが異なる場合があります。

 アイズレー・ブラザーズが1959年に発表したデビュー曲。ほとんどゴスペルのような曲です。当時はまだ「ソウル・ミュージック」という呼び方はないですが、本日お送りした楽曲はどれも、ソウルになっているようなリズム&ブルーズです。