#43『I got rhythm 音楽が生まれる時』 概要と選曲リスト

是非これを見ながら聴いてください!


今月のテーマ:「The World of Black & Blue」(第17回:ラップ/ヒップホップ)
パーソナリティ:ピーター・バラカン(ブロードキャスター)


ヒップホップのリズムがみえる。
ファンクによって産みだされ、母なるアフリカによって育てられた
ヒップホップのリズムがみえる。
わたしたちの中に生きつづけるリズムがみえる。

<番組のもとになった本>

絵本『リズムがみえる I see the rhythm』(サウザンブックス社)より
(文:トヨミ・アイガス、絵:ミシェル・ウッド、翻訳:金原瑞人、監修:ピーター・バラカン)

<番組のトーク・パート(概要)と選曲リスト>

― 今月は、ブラック・ミュージックの歴史を描いた絵本『リズムがみえる I See the Rhythm』を基に、ブラック・ミュージックの歴史を紐解いていきます。今回のテーマは「ラップ/ヒップホップ」です。

 ヒップホップ文化が誕生するのは、80年代に入ってからになりますが、ラップはもう少し前に誕生します。70年代後半というのが定説ですが、例えばブロック・ロックのときのチャック・ベリーの畳みかけるような歌詞の雰囲気は、ラップにかなり近いものがあります。
70年代初頭には、メロディーがなく、詩の朗読に近いようなことをするユニークなアーティスト、ギル・スコット=ヘロンが活動を始めます。彼自身はラップではないと言っていますが、少なくともラップに影響を与えたのは間違えないでしょう。

1「The Revolution Will Not Be Televised」Gil Scott Heron
<Spotifyリンク>※ラジオでOAしたものとバージョンが異なる場合があります。

 70年代初頭、ギル・スコット=ヘロンの初期の有名な曲。曲名は、「革命はテレビ放映されません」という意味で、の理由を最後に「The revolution will be live(革命は生だから)」と歌っています。細かい例をたくさん出しながら、白人の消費文明を批判した、皮肉っぽい曲です。

― ラップやヒップホップが誕生する裏には、70年代の後半、楽器をやりたくても楽器が買えない貧しい黒人の若者の存在があります。彼らの家にはレコード・プレイヤーしかなく、10セント程で安い中古のレコードを買って、それを回しながら自分たちでラップをして、音楽を作り出した、というのが定説になっています。
 次第にそういった音楽がレコードで販売されるようになります。そのラップの世界で初めて大ヒットしたのは、1979年にニュージャージーからデビューしたシュガーヒル・ギャングというグループです。

M2「Rapper’s Delight」Sugar Hill Gang
 サンプリングがまだない時代ですが、この楽曲のバックで使われているのは、Chicの『Good Times』です。そのため、随分後になってから、著作権侵害だということになり、印税が支払われることになります。
 先ほどのギル・スコット=ヘロンの曲に比べると、こちらの楽曲の歌詞は大して深いことを言っている訳ではありませんが、とにかくノリがよいです。

― ラップはどんどんライミングを続けるので、曲が長くなり、1曲が10分以上に及ぶこともよくありました。そのため、シングル盤では足りなくなり、必然的に12インチ(LPサイズ)シングルが必然的に誕生し、70年代終わり~80年代にかけて、多く使われました。

M3「The Message」Grandmaster Flash & The Furious Five
<Spotifyリンク>※ラジオでOAしたものとバージョンが異なる場合があります。

 1982年に大ヒットした、12インチシングルで出された曲。グランドマスター・フラッシュ&ザ・フューリアス・ファイヴというグループが作ったレコードですが、実際はラッパーの一人であるメリー・メルだけが参加して作った曲です。作曲はデューク・ブーティで、演奏はミュージシャンたちの生演奏です。
 ニューヨークのゲットーの様子を、ドキュメンタリー映画のように細かく描いています。

M4「Africa’s Inside Me」Arrested Development
<Spotifyリンク>※ラジオでOAしたものとバージョンが異なる場合があります。

 時代が進み、かなり機械的な作り方のヒップホップが多くなっていた中、珍しく有機的なバンドとしてデビューしたアレステッド・ディベロプメントの初期の曲。JOE SAMPLEの有名な曲がサンプリングされています。
 アレステッド・ディベロプメントのリードヴォーカルのスピーチは、社会的な意識が強く、世の中で起きていることによく触れるタイプのラッパーでした。

― アレステッド・ディベロプメントと同じ、90年代の初頭に、ディスポーザブル・ヒーローズ・オブ・ヒップホップリシーという2人組が、ほんの短い間居ました。

M5「Television, The Drug Of The Nation」Disposable Heroes Of Hiphoprisy
<Spotifyリンク>※ラジオでOAしたものとバージョンが異なる場合があります。

 まるで麻薬のようなテレビのことを、避難的に歌ったラップです。彼らのうちの1人のマイケル・フランティは、のちにスピアヘッドと、素晴らしいグループを結成します。彼は、最初に紹介したギル・スコット=ヘロンと同じように、詩の朗読に近い感覚を持っていた人です。