#44『I got rhythm 音楽が生まれる時』 概要と選曲リスト

是非これを見ながら聴いてください!


今月のテーマ:「The World of Black & Blue」(第18回:ブラックミュージックの行方)
パーソナリティ:ピーター・バラカン(ブロードキャスター)

<番組のもとになった本>


絵本『リズムがみえる I see the rhythm』(サウザンブックス社)より
(文:トヨミ・アイガス、絵:ミシェル・ウッド、翻訳:金原瑞人、監修:ピーター・バラカン)

<番組のトーク・パート(概要)と選曲リスト>

― 今月は、ブラック・ミュージックの歴史を描いた絵本『リズムがみえる I See the Rhythm』を基に、ブラック・ミュージックの歴史を紐解いてきました。今回は最終回となります。テーマは「ブラック・ミュージックの行方」です。

 80年代から、ヒップホップがブラック・ミュージックの主流になり、それが今も続いていますが、90年代に入って、ヒップホップの影響を受けた、新たなソウル・ミュージックが生まれました。
特に70年代のソウル・ミュージックの影響を強く受けた歌手たちが、次々とデビューしてきましたが、その中には、古き良きソウル・ミュージックの良さと、ヒップホップ時代の新鮮なリズム感の両方を兼ね備えたものが多く、今日はその中からいくつか紹介していきます。

1「On & On」Erykah Badu
<Spotifyリンク>※ラジオでOAしたものとバージョンが異なる場合があります。

 1997年にデビューしたエリカ・バドゥのデビューアルバムから。シングルとしても大ヒットした曲です。
 このくらいの時期から、ネオ・ソウル動きが大きくなっていきました。

― エリカ・バドゥが2年デビューした2年前に、ディアンジェロという男性歌手がデビューします。デビューアルバム『ブラウン・シュガー』はかなりのヒットとなりましたが、その後5年くらいの空白があり、2000年に2作目のアルバム『ブードゥー』が発売されました。これもとても話題になり、グラミー賞を取りました。しかし、その後なんと14年の空白があります。個人的な問題で、2010年代に入ってからライブ活動を初めて、2014年に『ブラック・メサイア』を出します。この時期には珍しく、完全にアナログで作ったレコードです。

M2「Devil’s Pie」D’Angelo
<Spotifyリンク>※ラジオでOAしたものとバージョンが異なる場合があります。

 ディアンジェロが2000年に出したアルバム『ブードゥー』から1曲。彼は社会的な意識を持っているシンガーで、ブラックロックやファンク、ヒップホップを併せ持ったアーティストでもあります。

― さて、次はアメリカを離れ、イギリスのネオ・ソウル歌手エイミー・ワインハウスを紹介します。
 彼女は2000年代に入ってからデビューしましたが、2011年に27歳の若さで亡くなってしまいます。彼女のことを描いたドキュメンタリー映画『AMY エイミー』もおすすめします。
 彼女のデビューアルバム『フランク』は、どちらかというとジャズ寄りでしたが、2007年に出た次のアルバム『バック・トゥ・ブラック』は、まさにネオ・ソウルという雰囲気です。ヒップホップ時代の雰囲気を持ちながらも、昔のモータウンやスタックスのような古典的なソウル・ミュージックの雰囲気が濃厚に出ています。

M3「Rehab」Amy Winehouse
<Spotifyリンク>※ラジオでOAしたものとバージョンが異なる場合があります。

 アルバム『バック・トゥ・ブラック』から、一番ヒットした楽曲。
当時、リハビリ施設に入ることを拒否した彼女の姿勢は、かっこよく聞こえたものですが、このアルバムを出した直後から、彼女がアルコールとドラッグの渦に巻き込まれたことを考えると、「Rehab」に行っておけばよかったのにと、多くの人が思っていることでしょう。

― この『バック・トゥ・ブラック』の曲の半分くらいは、ダップ・キングスという人たちが演奏しています。ダップ・キングスは、ブルックリングのファンクバンドです。
 ダップ・キングスは、ダップトーンというレコード・レーベルを持っており、そのレーベルから5~6枚アルバムを出した女性ヴォーカリスト、シャロン・ジョーンズもまた、素晴らしい活動をしました。

M4「This Land Is Your Land」Sharon Jones
<Spotifyリンク>※ラジオでOAしたものとバージョンが異なる場合があります。

シャロン・ジョーンズは1950年代の生まれで、70年代にデビューしようとしましたがうまくいきませんでした。しかし、2000年代に入ってから、他の人のバック・ヴォーカルで歌っているところ、才能が認められ、ダップトーンレーベルからデビューすることになります。その時既に、彼女は40代後半くらいで、当時特にニューヨークで話題になりました。
彼女は癌を克服してはまた再発し、残念なことに、数年前、60歳で亡くなります。彼女こそ、往年のゴスペルから発達したソウル・ミュージックの良さを、このヒップホップの時代に持っていた人です。
この楽曲はウディ・ガスリーで有名な曲ですが、シャロン・ジョーンズならではの解釈をしています。
 
― ピーター・バラカンさんのナビゲートでお送りしてきた「The World of Black & Blue」のシリーズは、今回が最終回となります。
シリーズを通して、100年くらいのブラック・ミュージックの歴史を紹介してきましたが、ブラック・ミュージックはこれからも、新たな展開があるに違いないでしょう。