コロナ禍のシングルマザーと子供達

2020年6月25日Slow News Report



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「ひとりじゃないよプロジェクト」

速水:Slow News Report今日のテーマは「コロナ禍のシングルマザーと子供達」。浜田敬子さんとお送りします。リスナーの皆さんには「あなたの周りのシングルマザーの話教えてください」というテーマでメッセージを募集しておりますが、早速冒頭にメッセージを読んでみたいと思います。女性の方からのメッセージが多いようですが、30代女性東京パートアルバイトの方「一歳の娘を持つ母子家庭です。接客業なのでコロナで仕事もなくなり、退職扱いになりました。なんとかやりくりしていたのですが、貯金もなくなりました。Twitter で検索して、母子家庭の支援団体の NPO 法人リトルワンズを見つけて食事支援をたのみました。行政は何も助けてくれなかったのに助けてくれる人がいたんだと泣きそうになりました。母子家庭の皆さん、行政が頼れなくても友達と NPO に頼ってください。きっと味方が見つかります」というメッセージをいただいています。シングルマザーの方の経済状況が厳しいという話はコロナ以前から耳にする機会はありましたが、今はそのしわ寄せが更にきている状況ということで特集のテーマになっています。まず浜田さんが小島慶子さんと一緒にされている活動のお話を伺えますでしょうか。

浜田:皆さんは特別給付金一人10万円という話が出た時に、このお金をどう使おうかって考えたと思うんですね。例えば仕事もなくなっていないし、収入も減っていないという人もかなりいらっしゃるわけですよね。そうした場合に、少しでも困っている人に寄付したいという声が結構あったんです。じゃあ誰に寄付してあげたらいちばんお金が役に立つんだろうという時に、やっぱり元々経済的に非常に厳しいシングルマザー家庭とそのお子さんたちではないかということで、その団体に寄付が集まる仕組みが作れないかということで立ち上げたのが「ひとりじゃないよプロジェクト」というサイトなんですね。

速水:プロジェクトに参加している方々はみなさん手弁当で参加されているそうですね。

浜田:そうなんです。みんなボランティアで、国連事務次長の中満泉さんをはじめ、100人くらいの方に賛同人になっていただいています。私たちがお金を集めるわけではなく、どんな団体がどんな活動をしているのかを紹介するサイトなんですね。例えば10代の女の子たちを助ける団体もあるし、子ども食堂をやっていらっしゃる団体もある。サイトを見た人がその活動内容を知って、こういう人を助けたいと自分の意思で寄付先を選んでもらうんです。また、先ほどのメッセージのように、困った時にどういうところに行けば助けてくれるのかがわからないという方がいらっしゃるわけですが、例えばシングルマザーの方がご覧になった時に、シングルマザーフォーラムという団体をはじめ、いろんな団体があるので、ここに行けば食事を支援してもらえるなどという情報を得ていただきたい、繋がりたい人に繋いでつなげてあげたいという意味もあります。

速水:僕たちもどこに寄付したいという情報がまずわからないですからね。支援したいなというものをまず知るためには情報が必要で、そして今実際に苦しんでいる人達もどこに助けを求めていいか分からない。その二つどちらも情報の部分を手助けすることができるということですね。

浜田:寄付のキュレーションサイトみたいなものを目指したんですね。また、3月くらいから収入が減ったり、無くなったり、仕事が雇い止めになっていて今すぐ支援が欲しいのに、なかなか行政からの支援金が入らないということが多くあります。そこで私たちが目指したのは、例えば食事だったり何か現物支給ですぐに支援に回してくれるような NPOや団体を重点的に掲載しています。

速水:「ひとりじゃないよプロジェクト」ではアンケート調査をしたそうですね。 どんなアンケートだったのでしょうか。


コロナ禍で追い詰められるシングルマザー

浜田:そもそもシングルマザーの方達がコロナ禍でどんな影響を受けていらっしゃるのか。まず現実を皆さんに知ってもらいたいし、私たちも現実を知ることでどんな団体が一番お役に立てるのかというのも知りたかったので、5月1日~3日にかけて全国のシングルマザーの方124人に Web アンケートをしました。やっぱり経済面の影響というのは9割の方が受けていらっしゃって、82%の人が「貯金を切り崩してます」とか「食事の回数を減らしてます」とか非常に苦しいということだったんですね。あと学校が休校になったことで、それまでシングルマザーのお子さん達は給食費免除だったのが、家でお昼ご飯を食べることになると食費が相当かかるので苦しいという声もありました。先ほどのメッセージの方もどこに助けを求めたらいいのかわからなかったと言っていましたが、今シングルマザー家庭の9割が離婚や未婚によるシングルなんですね。皆さん離婚したことなどに非常に罪悪感を抱いていらっしゃって、ご両親を頼れなかったり、養育費をもらっていなかったり、自分で何とかしないとと思いつめていらっしゃる方が多いということがアンケートから浮かび上がってきました。

速水:アンケートのいろんな具体的な数字が示されたところから、実際の今の現状みたいな話を引き続きお伺いしたいんですが。

浜田:例えば緊急小口融資みたいな制度があっても、これって収入が減少してないと申し込めなかったりするわけですよね。そもそもが手取りで10~12万みたいな生活をしているので、そこから減収になりようがないという方もいらっしゃる。なので支援も限られていたり、あとやっぱり非正規社員の方が多く、勤め先は例えば飲食や小売などサービス業が多いわけですよね。そういうところは外出自粛によって仕事自体がなくなって雇い止めになってしまうんですね。2020年3月に35歳から44歳の非正規社員の方で仕事がなくなったのは男性は3万人なんですけれども、女性は25万人という数字が出ています。

速水:これはいわゆる雇用の調整弁という、いちばん手軽に切りやすい人たちが非正規雇用になっているみたいなことが元々ある中で、コロナウイルスの影響以前から起こっている問題が今さらに強く、引き続き出ているということですよね。

浜田:まさにおっしゃる通りです。格差とか貧困の問題はもともとコロナの前から深刻になっていたというところから、おそらくいちばん弱い人たちに影響が最も出ているというのが今回のコロナの影響だと思うんですよね。


女性は非正規雇用が多い

速水:例えば安倍政権下で女性の活躍ということがひとつの政策として大きく看板が掲げられてきました。そして雇用が回復してきたという数字も出てきていますし、人手不足みたいなこともありましたから、女性の雇用状況は良くなっていたんじゃないんですか。

浜田:M 字カーブってご存知でしょうか。出産した女性が一旦退職するので、女性の就労者はいったん谷になって、それでまた子育てが終わったら就労していくので、一回女性の雇用が下がるのをM字カーブというんですけれども、安倍首相はこの谷が浅くなったということをすごく喧伝されていたんです。

速水:雇用がずっと継続するような社会になったんだよということですね。

浜田:それに女性の雇用もこうやって増えているでしょうというふうにおっしゃっていたんですけれども、その就労者の中身を見ると、やっぱり女性は非正規の割合が多いわけですよね。例えば女性の非正規の数でいうと、1990年は全雇用者の37.9%だったのが56%になっているので、結果的に女性の非正規雇用の方が増えて谷が浅くなっているんですよね。

速水:メッセージを一通読みたいと思います。「職場に1名小学生のお子さんを育てているシングルマザーの方がいらっしゃいます。コロナの休業要請を受けて4月から7月まで休職になりました。久しぶりに連絡を取ったところ、自分の子育てを見直す機会になって充実しているという話でした。それを聞いてとても安心しました。でも他のお母さんの中には、父親が非協力的だったり、会社が休めなかったりという方も多いんだろうなと思いました。周りの協力がないと子育ては出来ないと思います。」というメッセージです。この方どういう雇用の状況が分からないんですけれども、4月以降 休めているということは正規雇用なんでしょうね。

浜田:そうかもしれないですね。やっぱり正社員かどうかで全然違いますよね。あとサービス業だと在宅では仕事ができないですから、どういう雇用形態になるのか、どういう職業についているのかによって、また賃金もやっぱり正社員と非正規社員では違いますよね。正社員で男性と同じ賃金を守られている人は自分だけの力で子どもを育てられるけれども。


コロナ後の社会の豊かさは共助の精神

速水:もう一通メッセージです。30代神奈川県男性の方「ちょくちょく飲みに行くバーでアルバイトをしている3人の子のシングルマザーさんと仲良くなり、日々 LINE のやり取りをしています。その人は本職で介護の仕事をしていて、母親が子供の面倒を見てくれるそうで、その点は緊急事態宣言の中で子供たちが学校にいっていない時もある程度なんとかなっていたようなんですが、今利用者が増えて忙しいそうで、この前は事務処理的な仕事を家に持って帰ってやっていると言っていました。密かに彼女に想いを寄せている僕。やりがいがあって好きな仕事と言っている彼女を陰ながら応援していきたいです」 という秘めた恋の話でもありました。

浜田:でもこの人のようにちょっとでも応援してくれたりとか、愚痴を聞いてくれたりとか、慰めてくれる人がいるだけで全然違うと思います。やっぱりアンケートから浮かび上がってくるのは精神的な孤独です。ある人は暗いトンネルの中にずっといるようで、先が見えませんと言います。それを誰にも言えないのが辛いと思うんですよね。

速水:孤立は制度の問題ではなく精神的な問題ですよね。

浜田:行政的な支援だけじゃなくて、例えばこの人みたいなお友達でもいいし、ご両親の力もそうだし、近所のママ友でもいいし、私たちがこのプロジェクトに「ひとりじゃないよ」つけたのは、やっぱり一人じゃないよと呼びかけてあげたかったんですよね。

速水:この方はラジオを聴いていらっしゃるわけですから、例えばこういう活動している人がいるってラジオでやってたよみたいなことでもつながっていくわけですよね。

浜田:そうなんですよ。ラジオで言ってたよと情報を教えてあげると支援がつながるんですよね。

速水:このラジオのことも是非 LINE で教えてあげてください。もう一通読みます。40代女性茨城県の方「コロナ禍のシングルマザー、その日食べるものにも困る世帯を報道で見て心が痛みました。私の周りのシングルマザーの方はこれまで通り時短休暇でもなく、保育園も休園せず持続して保育してもらえたようで、感謝されていました。本題からはズレますが、単身赴任のお父さんは都内から帰宅できず、3人のお子さんを毎日朝から晩まで一人で面倒を見て、疲れ果てた友人がいます」というメッセージです。

浜田:この方は経済的には大変じゃないかもしれないけど、一人で3人のお子さんを育てるという、そういうのワンオペ育児というんですけれども、夫はいるんだけれども実質自分で全部家事も育児もやらなきゃいけない。そういうお母さん達も非常に精神的に追い詰められていきますよね。

速水:なるほど。40代会社員女性の方「 私はシングルマザーです。子供は、一人は元夫側、成人した子供は私と暮らしています。私は看護師でコロナ前後の毎月の収入は変わりませんが、法人の収入が激減したためボーナスは半分しか出ません。老後のことを考えコツコツ貯金していますが、身を削って働き、本来より少ない収入はつらいです」 というメッセージです。

浜田:やっぱり貯金を切り崩している方多いですね。お子さんのために教育資金として貯めていたものを削って、それでなんとかやってますという声も聞きますね。

速水:本来はなるべくみんな同じ条件で子育てできるということ、これは社会のためだというのは大前提だと思うんですが、社会の雇用を改革する時って、まだ景気がマシな時であれば、おそらく正規雇用を増やすような社会制度って作りやすかったんだと思うんですよ。

浜田:だと思いますね。コロナの前はどちらかというと人手が足りないといっていたわけですからね。日本はこれから人口が減っていくので、中長期的には人手は足りないんですけれども、でも今は一旦は雇用環境がすごく厳しくなっているわけですよね。なのでこうなる前にいろんな日本の中にある社会課題を少しでも解決しておけば、痛む人は少し減ったのかなと思うのと同時に、私たちはこういう時どうしても行政の支援とか、国が制度を変えなければと思ってしまうんですけれども、私も今回の活動をして分かったのは、実は私たちでもできることがあるということなんですよね。例えば NPO なんかで活動するということもそうだし、忙しいからできないという人でも、お金を寄付をするということはそういう人たちを間接的に支えるという側に回れると思うんですよね。

速水:行政におんぶにだっこで僕らの税金が使われる時って、まあだいたいまあろくでもないことになったりするので、そうであれば自分たちでやろうよという側面もあるじゃないですか。

浜田:まさにそうなんですよ。もらったお金を自分たちできちんと回したいと。今回一緒にこのプロジェクトをやった中で、ETICという団体の代表の宮城さんという方がおっしゃっていたんですけれども、「コロナ後の社会の豊かさというのは、こういった共助、支えあいみたいなことなんじゃないか。そして寄付というのは社会の一つの入り口になる」と。私たちが社会のために何かしたいという時に、やっぱり寄付というものを通してできることは沢山あるわけですよね。

速水:ちょっと厳しめのメッセージなんですけれどもこれも読みたいと思います。50代の女性神奈川県の方「子供が通っていた小学校の学区に県営住宅があり、片親の方が多くいらっしゃいました。片親 だと優先的に入居できるそうですが、世間で取り上げられているような大変そうな方はいませんでした。高校の同級生は離婚して一人で四人の子供を育てましたが、国や県や地域のあらゆる免除や手当を使い、そんなにお金に困らなかったそうです。給食費全額免除や、学校関係については手当がもらえたり、大変だと言う前に賢くならないとシングルマザーはしんどいだけだと思います」というご意見なんですが、おそらくこの方の周りでは公共の支援があったという、もちろんそういう側面もあったと思います。その他いろんな支援が出ている部分もあるんですけど、共助ということを考えた場合に、公共が支援できる部分、個人でできる部分、それでもできない穴埋めみたいなところなのかなという。

浜田:そうですね。パブリックがやる部分と、でもパブリックの部分がどんどん縮小されていますよね。なのでやっぱり抜け落ちている部分というのを誰かが支えるということが、これからはどんどん必要になるのかなと思います。

速水:「国の支援が必要ですよ」という話もあるんですけれども、そうじゃないやり方みたいな話も含めて今日は議論ができたかなと思います。たくさんのメッセージもいただきました。今夜は「コロナ禍のシングルマザーの子供達」についてお送りしました。