ウーバーイーツ配達員の労働問題

2020年7月21日Slow News Report



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ウーバーイーツの仕事は甘くない

速水:Slow News Report今日お越しいただいたのはフロントラインプレスの記者 藤田和恵さんです。藤田さんは労働をめぐる様々な問題を取材されているということなんですが、今日取り上げるのはウーバーイーツ配達員の問題です。ちなみに藤田さんがウーバーイーツの配達員の取材をされるようになったきっかけというのは何だったのでしょうか。

藤田:元々フリーランスとか個人事業主という働き方には関心がありまして、この1~2年くらいインターネットを通して仕事を請け負うという新しいフリーランサーとしての働き方があるということを聞いて、その典型的な働き方がウーバーイーツ配達員だということで取材をしてみようと思いました。

速水:僕は非常にウーバーイーツの配達員に憧れるところがあって、僕は10代20代の頃って、散々面接に落ちて、なんでダメだったんだろうなって思うことがあったんですが、今ネットに登録すればすぐ働ける。またウーバーイーツの場合は、よく公園なんかでスマホを見ていて、パッと指令が来てパパっと受け取りに行くみたいな、なんかすごい手軽にやれるし、ネットで司令が来てみたいなSF 感というか 、

藤田:ゲーム感覚とか自由というイメージがありますよね。

速水:そこへの憧れみたいなところでウーバーイーツやってみたいと言っているんですが、実際取材を重ねてみるとそんなに甘いもんじゃないんですね。

藤田:ウーバーイーツ配達員の取材をしていていちばんよく聞かれるのが、結局いくら稼げるんだということなんですね。これにバイクか自転車かとか、あるいは地域によって本当にまちまちなんですけど、フルタイムで無理のない働き方をして大体月収20万円がいいところなのかなという感じなんですね。配達員というのは Uber の従業員ではなく、個人事業主なので、例えばバイクであればガソリン代とか、自転車であれば修理代とか全部自腹ですし、自転車なんかはレンタルとかもあるんですけれども、当然レンタル料金とかかってきます。基本的には自己負担なんですね。


速水:個人事業主なんだというところはまず一つ大事なところですね。20万円という金額を聞くと、まあいいような悪いような両方あるんですけれども、1回の配達でいくらぐらいもらえるんでしょうか。

藤田:ざっとした言い方になってしまうんですが、距離にもよるんですけれども、待ち時間とかも含めると1回の注文で大体500円前後ということになります。ととても最低賃金を上回る額というのは稼げない、食べていけるだけの額を稼ぐことはできないということですね。

速水:なるほど。その中でもやっぱり時間帯であるとか条件によって変わってくるんですね。

藤田:そうです。基本料金だけでは到底食べていけないので、ウーバーで食べていこうと思ったら、例えば雨とか雪が降っているような悪天候時とか、あるいは炎天下のランチタイムとかに働かないとそれなりの収入にはならないんですね。それは基本料金+そういった需要が高まるところに行くとインセンティブというのが追加報酬としてつきまして、それを合わせてようやく大体月収二十万くらいになるかなという感じですね。

速水:自分の働きたい時にちょっと時間を作って働くみたいなことで稼げると考えると、ちょっとそれは見方が甘いということですよね。

藤田:そのインセンティブを得るためには、週末とか悪天候時、つまり注文が多くなる時間帯に出勤しなくちゃだめですし、炎天下の都心部なんかで働かなきゃいけないわけですね。基本料金が1.1倍になったりとか1.2倍になったりとか、この時間帯に何件こなせば追加報酬が付きますよ、というインセンティブがあるんです。頑張れば頑張るほど稼げる仕事という風には言えるかもしれないんですけれども、巷で言われている様に好きな時に好きなだけ働いてなおかつ食べていけるというような、バラ色の仕事ではないということですね。


ステイホームで配達員が増えたが…

速水:このステイホーム期間中、デリバリーって増えたように感じますが実態はどうなんでしょうか。

藤田:実数は公表されていないんですけども、現場の配達の方に聞くと、配達員の数は2~3割は増えたと言われていますね。配達員が増えた影響というのは大きく二つありまして、一つはやはり配達員が過剰に増えちゃったことによって一人当たりの収入が減っています。私が取材した限りですと、早朝から深夜まで仕事をしている人なんかは影響が大きくて、収入が1/3になっちゃったとか、あるいは新宿のランチタイムでずっと待っていたんだけれども結局一件も注文が入らなかったという人もいますね。

速水:仕事って需要と供給なので、働きたい人が増えちゃうとどうしても給料は下がりますよね。

藤田:そしてもう一つは危険運転の増加ですね。

速水:僕も一回目撃したことがあるんですが、配達しているときなのか、帰りなのかちょっと分からないんですけれども、スマホを見ながら運転していて追突しちゃってましたね。

藤田:車道を結構なスピードで逆走してくる人もいますよね。あとは無灯火とか、信号無視とかですね。そういった危険運転が配達員が増えたことによって増えているといわれていますね。


ウーバーイーツユニオンが記者会見を

速水:ウーバーイーツの問題といった時に、事故とか危険運転なんかが頭に浮かぶ方が結構多いと思うんですが、今日は記者会見がありました。ウーバーイーツユニオンの記者会見も取材されているんですよね。

藤田:確かにウーバーイーツの配達員の危険運転が増えてたといわれていますが、当然配達員個人が気をつけるべき問題でもあるんですけれども、同時に仕組みの問題でもあると思っています。例えば道路交通法なんかでは、営業車を一定数保有する会社というのはきちんと責任者を設けて、社員に交通安全のルールを学ばせてくださいということが義務付けられているんですけれども、ウーバーイーツの場合は、彼らは従業員ではなく個人事業主になるので、会社はそういう義務がないんですね。だから個人の問題でもあるんですけれども、交通ルールを学ぶ機会のないまま配達員になれてしまう仕組みの問題でもあるというふうに私は思っています。

速水:タクシーなんかでもタクシーセンターというのがあって、研修や講習会をやって交通安全についての厳しい取り組みを自分たちの業界内でやってますよね。あまり参入障壁をあげてもという今の流れもあるかもしれないですけども、ウーバーイーツに関しては業界としての取り組みが弱いんということでね。

藤田:そうですね。そんなふうに感じています。

速水:そして今日の記者会見の様子なんですが、どのような内容だったのでしょうか。

藤田: 10月に一部の配達員が立ち上げた労働組合ウーバーイーツユニオンが、厚労省の中にある記者クラブで今日会見を開きました。この会見の内容というのは、一つは事故関連なんですけれども、配達員が配達中に怪我をした事故、あるいは逆に配達員が道を歩いている人に怪我をさせてしまった事故について調べた事故調査プロジェクト、これをユニオンが行ったんですけれども、その結果というのが報告されました。ウーバーイーツユニオンがネットのアンケート等を使って調べることができたのは全部で32件なんですね。当然氷山の一角なんですけれども、その内訳をみると、32件のうち骨折をした人が2割くらいいるんですね。あるいは怪我によって一か月以上仕事を休まざるを得なかったという、割と深刻なケースがあるということが改めて浮き彫りになったということですね。あともう一つは、ウーバーイーツの配達員が怪我をすると見舞金が支給される傷害補償制度というのがあるんですね。けれどもその32件中、この制度を現在利用が確認できたケースというのは一件もないんです。

速水:それはどうしてなのでしょうか。

藤田:配達中の事故に対象が限られているので、例えば待機中や配達が終わって帰る途中というのは対象にならないんですね。また、配達員の話ではあるんですけれども、怪我をした人が問い合わせたところ、もしこの制度を利用するのであればアカウントを停止すると言われてこの制度の利用を思いとどまったというケースもあるようです。結局利用したというケースは確認できなかったんですね。

速水:制度はあるけど誰も利用できない。しかもアカウントを停止されるということは、普通に考えれば解雇と同様じゃないですか。非常にこの制度自体が運用されていないことへの疑問がありますね。

藤田:はい。絵に描いた餅状態ということですね。


なかなか連絡が取れないウーバーイーツ


うちの嫁が自転車にはねられまして、意識がなくなって救急車で運ばれたんですけれども、お客様センターにかけたら、コロナの影響というアナウンスだったかと思うんですが、やってませんという事でした。


速水:今お聞きいただいたのは、奥さんがウーバーイーツの自転車配達員の自転車にひかれたという話なんですが、お客様センターに電話かけたところ、やっていなかったという話なんですね。

藤田:今日の会見では、ウーバーイーツの配達員に歩道を歩いていてぶつけられて骨折をしたという被害者の女性と、その夫の方が二人参加されたんですね。今のお話は夫の方の話なんですけれども、妻が骨折をしてウーバーに連絡をしようと思っても、ネットを調べても電話番号も分からない。メールアドレスお問い合わせフォームもない。なんとか探してお客様センターにかけたところ、コロナでやっていない。とにかく人と繋がらないということで非常に苦労をしたというお話をされていましたね。

速水:これに関しては、ウーバー側は何か返答しているんでしょうか。

藤田:ウーバーイーツの日本の法人はUber Japanというんですけれども、最終的にはなんとかして会社にはつながりました。怪我をさせられた通行人に対しては対人対物の保証というのがあるので、最終的にはこの方はおそらく保証は受けられるはずなんですね。ただ最初のところで連絡がつかず、やっと担当者に繋がったところ、この方のお話によりますと、配達員は個人事業主なので、こちらに問い合わせされても困ると言わんばかりの対応だったそうです。

速水:そこですよね。ウーバーイーツの配達員というのは雇われて働いているわけではなくて、ここのフリーランスの請負業務として請け負っている人たちであるというところなんですよね。そうなると、ウーバーイーツ側の今の話は、うちの知ったこっちゃないよということになりますよね。会社側は知ったこっちゃないというふうに放っておいて許されるものなんでしょうか。フランスでは事実上の従業員とみなされるようですね。

藤田:そうですね。フランスではそういう扱いになったのはごく最近のことなんです。こういったインターネットのプラットフォームを通して働くということが増えたことによって新しく法律ができたんですね。フランスはいち早く対応したんですが、日本は遅れているということになります。

速水:日本も10年くらい前ですけど、偽装請負が横行して、ちゃんと法の網の目を細かくして新しい働き方を雇用として守ったりするような流れの中で、まず第一段階として組合ができたわけですね。そこで会社との窓口になって新しいルール作りをしていくという段階の中で、この対処当然必要ですよね。

藤田:今日会見された男性はこうも言っていたんですね。「デリバリーサービスは今非常に欠かせないサービスになってきている。ウーバーはそのサービスを提供する会社で、それによって利益を得ている会社なんだから、やっぱり配達員が事故を起こした時には彼らが労働者なのか、個人事業主なのか、そういうことは関係ない。やっぱり責任を持って怪我をした配達員、あるいはその被害を受けた通行人をケアサポートをするのはその会社の責任なんじゃないか」と。個人事業主だから知らないという態度を見ていると、自分の妻にぶつかってきた配達員もまたある意味被害者なんじゃないかと言っていましたね。

速水:先ほど見舞金が制度としてあるのに、おりないという話なんかともつながってくると思うんですが、ひとつ今の話をお伺いして気になった部分というのは、窓口が用意されていないというところなんです。藤田さんご自身も取材を通じて感じたそうですね。

藤田:ウーバーイーツの取材を通していちばん衝撃を受けたのは、Uber Japanの広報担当者となかなか連絡が取れなかったということなんです。この男性と同じで、ネットで探しても電話番号もメールアドレスもわからない。しょうがないから登記をとってその住所まで行ったんですけれども、確かにそこにビルはあるんですが、そこのビルは立入禁止なんですよ。だから行ってはみたものの、本当にそこにUber Japanが入っているのかすらわからない。インターネットではサポートセンターという電話番号があって、私もかけたんですけども、アカウント番号を入力してくださいとか、アプリのヘルプからお問い合わせを下さいといった音声が流れるばかりで、とにかく人と繋がらないんですね。会社の広報のコメントを一言取るのにこんなに苦労したというのは、私は記者を30年近くやっていますけれども初めてのことですね。

速水:最終的には広報のコメントは取れたんですか。

藤田:あまりにも複雑すぎて、どうやってコンタクトしたのか私も忘れちゃったんですけど、とにかくお問い合わせフォームからメールを投げたら、Uber Japanじゃなくてサニーサイドアップという会社から連絡がありました。

速水:PR 会社のサニーサイドアップですよね。

藤田:そこの担当者の人から連絡があって、うちがUber Japanの広報業務を請け負っている会社として取材対応させて頂きますということでした。

速水:社会問題に対してちゃんと前向きに対応してるのかというと、ちょっと疑問が残りますよね。

藤田:おしゃれな CM であるとか、テレビ番組に神配達員みたいな人を出演させている。そういったキャリアというのは凄くあると思うんですけども、こういった事故対応とか社会問題としてのメディア対応についての実績というのは、ちょっとどうなのかなと感じますね。


自由な働き方と責任

速水:なるほどそこにこの問題の本質があるような気もします。メッセージを一通読みたいと思います。「3年以上前のローンチの頃から気まぐれにユーバーの配達行っています。正直ユニオンの存在はとても迷惑です。同じように思っている人は多いです」というちょっと衝撃のメッセージなんですが、「雇用ではないのだから、各々が業務中に適用される保険に入るべきだと思います。自由と責任と収入のバランスを考えて、気に入らなければ仕事を辞めればいいだけと思います。ウーバー に責任を求める範囲が広がれば広がるほど配達員の自由もなくなります」というご意見もあるんですが、確かに働いている方達も自由だからいいんだよという方もいるわけですよね。

藤田:確かにそういう声ってあるんですね。実際に取材していても、ネットの記事のコメントにそういうのがありますし、ユニオンにもそういう声が寄せられています。好きな時間にアプリをオンラインにすれば働けるし、働きたくない時はオフにすればいいので、一定の自立性はあるんですね。誤解がないようにこれだけはちょっとお伝えしておきたいのは、ウーバーイーツユニオンというのはけっして雇用契約を結んで欲しいとか、自分たちを正社員にしてほしいという要求はしていないんです。彼らが問題だと言っているのは、事故が起きた時に配達員だけが一方的にリスクを負うのはおかしいということであったり、あるいは、昨年に報酬の一方的な切り下げがあったんですね。旧に単価が150円だったものが60円に下がったりしているんですが、そういった働くための条件を一方的に変えられるのはおかしいんじゃないかという、そういう要求なんですね。

速水:あくまでもそういう自由の中でも言いたいことを言えるような状況を作った方がいいよということですね。

藤田:自由な働き方というのは両立すると思うんですね。

速水:まだまだ聞きたいことたくさんあるんですが、明日も引き続きこの問題とはまた別の問題について藤田和恵さんに伺います。藤田さん、ありがとうございました。

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