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速水健朗

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藤井聡太と AI と

2020/8/19 (水)21:00
2020年8月19日Slow News Report



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速水:Slow News Report 今日は藤井棋聖と木村王位の対局、王位戦が行われ、明日も引き続き行われるんですが、今日のテーマは「藤井聡太と AI と」です。将棋と AI について以前から取材してきた、北海道新聞デジタル編集委員の田中徹さんにお話を伺いたいと思います。田中さんはどういうきっかけで将棋、AIを取材されるようになったんですか。

田中:もともとテクノロジーには関心があって、社会にどういう変化をもたらすかということをひとつの取材テーマにしていたんですけれども、日本の AI 研究のフロンティアで将棋も研究していた松原仁先生という方が函館の大学にいらっしゃいまして、その方を取材したのがそもそものきっかけでした。

速水:第2局は北海道で行われましたが、田中さんも関わられたんですよね。

田中:新聞社連合で主催しているんですけれども、北海道新聞もその一つで、その縁もあって当日は裏方で解説の中継ですとかウェブの運用みたいなことをずっとやっていました。本当は現場に行きたかったんですけど結構大変で、会社から会場もわりと遠かったので現場には残念ながら行けませんでした。

速水:取材もすごい増えていますよね。

田中:そうですね。ただコロナのことで色々制限があって、普段は前夜祭みたいなこともやるんですけれども、今回は控えたりとか、そういうことが続いていますね。


AIを相手に指し手の研究を

速水:今日の本題「藤井聡太棋聖と AI と」というところに移りたいんですが、藤井棋聖が強くなった要因の一つが AIを相手に指し筋の研究をしていて、ステイホーム期間中に格段にパワーアップしたと言われています。具体的にはどういう練習をしていたんでしょうか。

田中:もちろんステイホーム期間中も当然研究されていたと思うんですけれども、幼い時から身近なところに AI みたいなものがあって、自身の読み筋と AI の評価値を比べていますみたいなことをおっしゃているんですよね。もうちょっと具体的に言うと、よくある局面、重要なパターンですとか、対局相手が得意とする手や陣形を AI に作らせて、それを上回る手を色々研究しているようです。

速水:それはつまり、こういう状況だとこう打てばいいということを研究しているのか、それとも次の対戦相手の指し筋を研究させるのか、藤井さんの場合はどちらなんでしょうか。

田中:もちろん対局相手の研究はしますし、将棋そのものを探求していくという意味でも使われるし、そこは両面だと思います。

速水:今非常に藤井聡太さんとAIの比較が注目されていますけれども、元々コンピューターやAI というのは藤井世代が最初というわけではないですよね。

田中:そうですね。この前棋聖戦を戦った渡辺明さんは、もう10年くらい前に取材した時からコンピューターを研究に使っていらっしゃっていますし、今の棋士の方はほとんどだと思いますけれども、藤井さんが特徴的なのは、本当に幼いうちからそういうものを使っていたということだと思うんですよね。大人になってから使うのと子供の頃から慣れているものというのは、やっぱり感覚は全然違うんだろうなと思います。


AIは人がためらうような手も打てる

速水:そして藤井さんの場合、12歳で詰将棋のチャンピオンになっていますよね。渡辺明さんなんかは実戦の局面で使うことはないんだと詰将棋に対して批判的な立場ですが、藤井さんはものすごく詰将棋好きで、趣味でもある。この辺はどうなんでしょうか。

田中:詰将棋は玉を詰むためにどうするかという、パズルみたいなものなんですけれども、AIも特に終盤に強いと言われているんですね。玉を取るために最短の距離を見つけるのはやっぱりコンピューターにとってはすごい得意分野で、そこら辺も詰将棋で12歳の時にプロに勝っちゃうようなことというのは、やっぱり AI の影響というのは考えられますよね。

速水: AI 世代の棋士とそれ以前の世代では何が違うのかという中で、「怖さを感じるかどうか」という話があるそうですね。

田中:藤井さんの将棋を解説する棋士の方々がしばしば言うのは「これ怖い手だよね」とか「なかなかこれ指せないよね」ということなんです。確かにいい手かもしれないけれども、ひょっとしたら自分が大逆転されるんじゃないかというような手なんですけれども、実はこれって AI に近いんです。やっぱり人間はどうしても本能的に守りたがるらしいんですよね。ただ藤井さんは AI 的に割と攻めていくという感じで、経験を積んだ人ならむしろ怖くて「ちょっと…」と思う手を指していけるところがあるということは色んな方がおっしゃっていますね。

速水:なるほど。普通であればあまりやらない手を、 AI だと何億通りの中から探し出して、今までの習慣に関係なくポンと打ててしまうようなところがある。それが藤井棋聖にもあるということですね。

田中:やっぱり経験ってメリットとデメリットがあって、人間は経験を積んで成熟するんでしょうけれども、失敗の経験もあると、いいと思ってもできない事ってあると思うんですよね。

速水:藤井棋聖の将棋が基本的に攻めを重視する攻撃的な将棋ということもありますよね。僕も素人ながら見ていて、飛車をポンと捨てちゃって攻めに行くというような、駒得よりも攻撃にいってしまうような所が多々見られて、そこは見る側としても魅力ですよね。

田中:おっしゃる通りだと思います。僕も中継を見ていて、結構時間を忘れることが多いですよね。

速水:僕なんかが最初に将棋をやったのはコンピュータ以前で、ファミコンに将棋ってあったななんていう記憶もありますが、後半はいわゆる将棋ソフトが強くなったきっかけについて伺いたいと思います。


将棋ソフトが強くなったのは

田中:ボナンザというソフトが2000年代の後半に出てきたんです。そのソフトが出てくる以前は駒の強さとか駒の配置を人間が計算して式を作ってやってたんですよね。ですので、ソフトを作る人自身も将棋の強豪だったりすることが多かったんですけれども、ボナンザというのは、現在国立電気通信大学にいらっしゃる保木邦仁さんという方が作ったんですけれども、保木さんは将棋がほぼできなかったんですよね。その時に、自分はできないけれども、昔の棋譜を参考にすればいいじゃないかということで、江戸時代からの上手い人の棋譜を機械に自動的に読み込ませるという手法を使ったんですよね。そうしたら、それまでの将棋ソフトとはちょっと違う棋譜のソフトが出てきて、すごく話題になったんです。これが一つの大きなブレークスルーの一つだったと思います 。

速水:今現在の将棋 AI は、そこからさらに強くなっているわけですよね。

田中:そうですね。その後は機械同士が対局して新しい手や定石を見つけてきたりしています。まあ機械同士なんで疲れないでずっとやれますから、やっぱりその進化というのはさらに速くなっているというようなところだと思います。

速水:将棋の AI がどんどん発達する一方で、例えば「矢倉」というかつて流行った陣形が見直されていたり、藤井聡太さんも「雀刺し」という、懐かしい感じがするかつての戦略を使ったり、古いものが見直されている傾向があると思うんですが、これはどういうことなんでしょうか。

田中:やっぱり人間だけで研究していた段階ではなかなか物理的な限界がありますが、コンピューター同士で対局させたり、コンピューターを使って研究すると、もっと先々まで戦局を読んでいけるわけです。そうすると、廃れた戦法でも、実はこうすればもっと有効だったとか、そういうことが分かってきたんだと思います。

速水:となると、流行とかもどんどん変わっていくということですよね。

田中:そうですね。昔「新手一生」という言葉がありまして、新しい手を一つ考えると一生食える、もしくは一生に一回しかそういうことってできないという意味だったんですが、今は「新手一生」の「生」が「勝」になっていて、新手を考えても一勝しかできませんよみたいな言われ方をしています。将棋ってどんどん研究されても、またわからないことばっかりだという意味では、やっぱり奥が深いゲームだなと思いますね。


AIが計算する棋士の戦闘力

速水:もう一つ将棋と AI をめぐる興味深い話なんですが、歴代最強の棋士は誰かということを AI に考えさせる試みがあったんですよね。

田中:将棋の AI でYSSというレジェンド的なソフトがありまして、これを開発した山下宏さんという方が3年前にある試算をしたことがあるんです。将棋ってミスをどれだけ減らせるかというゲームでもあるんですが、そこで山下さんはミスに注目をして、ミスが少ない棋士ほど強いだろうということで色んな式を作って、 AI を使って計算をさせたら、3年前は藤井さんも当時に29連勝で注目されていた頃ですけれども、当時でも羽生さんとほぼ同じ数字、強さが出たんですよね。

速水:ドラゴンボールの戦闘力みたいな形で、何歳ぐらいの時の誰が強かったみたいな事って、まあ頭の中で想定したりして楽しむことはあると思うんですけど、それを AI が算出するという試みなんですね。

田中:そうです。過去のタイトル戦みたいな重要な対局の棋譜を使って、まさにドラゴンボールのスカウターみたいに最盛期の強さはどれくらいだということを、あくまでも試算ではありますけども、そういうことをされました。実際に名を残した棋士さんはすごく高い数字が出ているので、実際の感覚に近いものがあるなという気はしますね。

速水:現在の藤井聡太棋聖を測るとどうなるんでしょうね。全盛期の加藤一二三さんとか羽生さんとかと比較して、そこを上回るのかどうか。ちょっと知りたいですよね、それ。

田中:藤井さんの全盛期がいつ来るのか、まだおそらくこれからどんどん強くなるんでしょうし、この前棋聖線で勝った渡辺さんもその後名人になりましたから、やっぱりまだまだ強くなると思うと、とても興味深いですよね。

速水:観戦する方も、AI が今どのくらいの勝率であるということを示してくれるだけでもかなり見方が変わるし、初心者でもとっつきやすくなりますよね。テクノロジーで将棋自体が進化する部分と、見る側も非常に補助される部分がありますよね。

田中:そういう数字なんかを出してくれると、観戦の仕方もまたちょっと変わってきて楽しみが増えるかなという気はすごくしますね。

速水:しかも解説の方が、「この AI の数字はどういうことなんでしょう」と言うね、必ずしもプロの目から見ると正しいとも限らないところが面白さでもありますよね。最後にお伺いしますが、今後の王位戦の展開、どういう予想されていますか。

田中:いやそれはちょっとプロの方でもわからないので、素人の私は何とも言えないですけれども、私も木村さん、速水さんと同じ47歳ですので、これまで3連敗なのでここで一矢報いて欲しいなと思っています。まあどっちも応援しているんですけれども、本当どっちも勝って欲しいなという感じですね。

速水:わかりました。田中徹さん、どうもありがとうございました。
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