女性管理職の2030年問題、なぜ延期に?

2020年8月27日Slow News Report



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速水:Slow News Report今日はビジネスインサイダージャパン統括編集長の浜田敬子さんとお送りします。今夜のテーマは「女性管理職の2030年問題なぜ延期に?」というテーマです。安倍政権の看板政策の一つとして女性活躍ということを掲げていたと思うんですが、指導的地位に占める女性の割合30%に上昇させるその目標の達成期限が今年2020年だったんですよね。それが達成されず、“2030年までの可能な限り早期”に引き伸ばされました。


「女性活躍推進」安倍政権の看板政策だったのに…

浜田:今コロナ危機で大変な時になんですけど、あまりにしれっと延期されてしまったんですね。2020年までに女性の指導的地位における女性の割合を30%にというのは、安倍政権が発足した時の看板政策だったわけですが、これを実現できなかったら、普通は総理が会見なりをしてなぜ実現できなかったのかということをちゃんと事情を説明して、背景も分析して、次はこういう対策を立てていつまでに必ずやるんだということをするのが政策ですよね。

速水:政治家がやると言ったんだから、出来なかった以上はその理由を聞かなきゃいけませんが、発表はされていないですよね。

浜田:しかもニュースでもあまり大きな扱いにならなかったと思いませんか。

速水:正直言うと、僕は浜田さんがこの企画を持ってくるまでは、「何かそんなのあったよね」くらいの感じでしか受け止めてませんでした。

浜田:そうですよね。もちろん私たちの周りではええ!?という感じだったんですけれども、そもそもニュースでの扱いも小さかったし、もう少し話題になってもよかったんじゃないかと思って、今日のテーマにしました。

速水:これは2020年を迎えるに当たり、実際に政策に則った指導であるとか、法律の変更などをして、惜しいところまでいったんだけど…みたいな話なのか、それとも全然具体的な政策として何も進んでいなかったのでしょうか。

浜田:もちろん企業に対して30%を目指してくださいというようなことは言われていました。しかし、あくまでも企業の自主努力なので、達成しなくても何らかの罰則規定があるわけでもなく、達成しなかった企業名を公表しますよみたいなこともなかったわけです。実際に女性管理職30%を達成している企業って何パーセントぐらいだと思いますか。

速水:正直僕の周りでは、例えばこの番組のチーフは女性ですし、僕の周りでも結構女性が管理職になっているケースは多々見られるので、3割くらいあるのかなという気はします。


日本の会社の半分は女性管理職がいない

浜田:実は7.5%なんです。最近発表になった帝国データバンクの調査があったのですが、これは23650社の調査なので結構幅広く調査しているんですけども、女性管理職はまだ7.7%というのが平均です。30%いる企業は先ほど言ったように約7%。もっとびっくりしたのが、女性管理職がいない企業が46.7%なんです。半分の会社にはまだ女性の管理職がいないという実態は私も衝撃でした。

速水:日本は非常に中小企業が多いですが、例えば大企業はクリアしているけど中小企業はクリアしていないとか、そういう問題なんでしょうか。

浜田:大企業もクリアできていないと思います。例えば“女性の問題で”とかって取材に行くと、「浜田さん、今更女性活躍もういいでしょう。まだ取材しているの?」とか「今は LGBTQ の支援だったり、定年を廃止して中高年の支援だったりという方に話題が移っているよね」と言われるんですが、そういう企業に限っては女性の管理職が10%もいなかったりするんですよ。だから一時の流行というか、政権も言っているから頑張ったけれども、もうそろそろ女性活躍は終えて次でしょうみたいな感じなんですよね。でもこれって本質的になぜ達成しなきゃいけないのかというところが分かってない経営者、企業が、国も含めて多いんじゃないかと思うんです。だからなかなか目標を達成できないんだろうと思うんですね。

速水:その誤解って、例えば「十分女性が活躍している。社会は変わったんだ」と思っているのか、女性の管理職を増やすことに関してはそうあるべきだよねと思うんだけど、じゃあ40代50代の管理職の男性が自分の座を女性に譲るかというと、それはまた別の話となるのか。どうなんでしょうか。

浜田:両方あると思いますね。やっぱり総論はみんな賛成するんですよ。多様性はすごく大事だよね、ジェンダーギャップも解消しなきゃいけないよね、実力がある女性を登用しましょうと。経営者はこの事に対して誰も表立ってはノーとは言わないですよね。本音はわからないですが。でもこれだけ日本企業が停滞していて、新しい事業とかイノベーションが生まれないのは人材の多様性がないからだということは、多くの経済学者とかが指摘していることです。でも実際どうでしょうか。例えば大企業の役員室に行くと、中高年男性一色みたいな風景は変わっていないですよね。

速水:女性の管理職が多い海外の状況なんかを見て、それが会社に対して不利になっているのであれば、これは経営判断としてしない理由もあるわけじゃないですか。でもそうじゃないわけですよね。


日本のジェンダーギャップ指数は先進国中最下位

浜田:おそらく二つの論点があって、例えば今国連が出しているSDG'sみたいな17個の目標がある中にはジェンダーギャップの解消というのがあって、本質的に差別はいけないという部分でも私は必要だと思うんですけども、企業においてはジェンダーギャップを解消して女性を登用した方が良い結果が出るという調査もたくさんいているんです。例えば多様性があるとか、女性が活躍している企業の方が業績が良いということも出ています。ゴールドマンサックスという金融会社がありますけれども、今年の1月に、役員に女性がいない会社の IPO はもう担当しませんというようなことも言っているわけですね。それくらい多様性というものがこれからの企業の成長に大事だし、理念的にも本質的にも大事だと、両方の面で海外では動いているわけですね。去年の末に発表になったジェンダーギャップ指数というのがあって、これは政治や経済の分野でジェンダーギャップがどれくらいかという指数なんですけれども、日本は毎年毎年順位が落ちていて、今121位まで落ちてしまいました。当然先進国では最下位ですね。さっき速水さんが「女性活躍してるでしょう?」とおっしゃいましたが、日本はそういう男性多いんですよ。女性は楽しそうに働いているし、活躍してるじゃない?と言うけれども、海外がどれくらい進んでいるかが分かっていないんです。

速水:比較対象として、どうしても国内企業と比べてしまうという。

浜田:そうなんです。「うちはあそこよりマシ」ぐらいの感じでみんな思っているけれども、世界はもうどんどん女性の登用が進んでいます。そしてコロナやブラックライブズマターでより加速すると言われているんですね。例えばブラックライブズマターというのは黒人の差別問題といわれているんですけれども、そこから一歩踏み込んでいろんな差別をなくしましょうとなっている中で、もっと海外では加速していくと思います。例えば BBCでコメンテーターは必ず男女半々にしましょうとか、アメリカのカンファレンスに行くと男性だけが登壇しているという風景はありえませんと言われたり、かなり厳しいんですよね。

速水:黒人差別に関して何かしらの態度を発表していない企業に対しては不買運動が起こったりするような流れってありますよね。世界はそれだけ差別に関して敏感になっている。日本の企業もそういうことをやっていない企業に関しては、消費者に悪い感情を持たれるようなところがあってもおかしくない。だけどそこですら鈍感なところがあるかなという感じがしますね。

浜田:もう少し各企業の女性登用の実態の数値を明らかにして、低い企業に対しては就活時に避けるとか、そういった企業の商品を買わないとかということをしない限り、企業はなかなか変わらないと思うんですよね。


女性がフェアに競争できる土壌を

速水:いくつかメッセージを読んでみたいと思います「才能のある男性と才能のない女性がいて、女性の採用率が少ないからというだけで簡単に才能のない女性を採用していいのでしょうか」という質問が来ています。

浜田:これもよく言われることなんですけれども、会社の人事担当者に伺うと、新入社員の採用試験の時に、点数だけでやると女性ばかりになっちゃうんだよと言うんですね。

速水:よく聞きます、それ。

浜田:でも蓋を開けてみると、大企業総合職で6:4とか7:3で男性の方が多いという結果になっているわけです。これって私が思い出すのは、東京医大の不正入試問題なんですよ。結局点数では勝っている女性達が減点されて男性達が受かっていたわけですよね。つまり、入口のところで本当に平等にちゃんと審査されていますか?ということなんですよ。面接の点数って結局印象ですよね。男性の方が出産とか育休で休まないから長時間労働もするだろうとか、もっと言えば男性の仲間内で選ぶから男性の方が働きやすいとか、そもそも入り口で公平に実力を見ていますか?という事が一つ問題としてあると思います。

速水:東京医大の場合は、「その後働いてくれる人達はやっぱり男性だから」ということを誰かが言ったというだけではなく、受験している人たち全員がなんとなく把握していたことだというのは非常に驚いたことだったんですが、だったらテストやる意味ないんじゃないの?ということですよね。

浜田:本質的な問題は、職場が長時間労働だから男性しか働けない、女性が働きにくかったから女性を採らなかったわけですよね。企業も全く同じで、なぜ男性の方を採用するのかといえば、男性の方が長時間労働に耐えると思われているわけですよね。それもだんだん変わってきていますけれども、日本だと圧倒的に男性の家事や育児の時間が少なく、女性達がワンオペ育児といって家事育児をやっている状況で一緒に競争するのはそもそもフェアじゃないですよね。企業でよく両立支援制度といって、時短勤務が取れますとか、育休制度が取れますとか、そういう仕事と育児のバランスを取りながら働くことを女性に優しい制度とか言ったりしているわけです。でも両立支援制度は男女両方が使うべきもので、だから男性も育休を義務化したりという話に今なったりしている。だから男性がもっと家事育児に参加して女性の時間的なハンディみたいなものがなくなって、本当に女性の実力が発揮できる土壌にならないと競争がフェアじゃないと思っているんですね。

速水:例えば女性に優しいという働き方それ自体が、その後の女性のキャリアを阻害してしまうという“マミートラック問題”というものがあります。これはどんなものなのでしょうか。

浜田:2000年代に入って大企業は企業内保育所を作ったり、さきほどの両立支援制度をどんどん整えていったんですね。でも結果的に何が起きたかというと、女性は働きやすくはなり、勤続年数ものびました。でもこの両立支援制度を使うのは女性みたいな、そういう形に押し込められてしまったために、例えば時短制度を使うと昇進とか昇給が遅れてしまう。これを「マミートラック」というんですね。あなたは子供を産んだ後もうちの会社で働いてもいいけれども、別のキャリアのトラックを走ってねというのがマミートラックなんです。

速水:そうするといざ管理職になりたいといった時に、その経験がないじゃないかということになってしまうわけですよね。

浜田:そもそもマミートラックには管理職という選択肢すらないという状況もあります。ですので、トラックを一緒にするためには、やっぱり深夜まで働く人を評価するような会社では出産後の女性は働けないし、そもそも今はそういう会社で男性も働きたくないですよね。だからやっぱり働き方改革が必要だと、そういうことになると思うんですよね。

速水:となると、冒頭には政策としての女性活躍という話をしましたが、夫が働いてお金を稼いで、その代わり家事はやらないというような暗黙の了解みたいなことって、政治が介入することじゃないじゃないですか。そういう意味では社会の問題というか、家族の問題の部分の方が大きいかもしれないですね。

浜田:ただ政策で残業を厳しく規制することで、どの企業も残業できなくなればそこで条件が同じになったりもしますし、男性の育休を義務化しようというような動きもありますけれども、そういったことをしていくことは政策的にできることだと思います。

速水:そこに関しては世代間問題みたいなものもありますよね、働き方に関しても家事の分担に関しても。

浜田:20~30代の男性に聞くと、自分だけが大黒柱で長時間労働をやるのは嫌だという男性は増えてきています。例えば夫婦で働く場合も、ある程度対等に家事も育児も分担したいと。共働きで稼ぎも50:50でやりたいというような人たちは増えてきているので、そういった若い男性達が、女性をきちんと登用しないような会社にノーと言っていくということはこれから増えていくと思います。

速水:企業と家族の問題みたいな部分ですよね。メッセージが来ているので読みたいと思います。「(偏見で申し訳ないです)自分の周りで女性で管理職をされている方はバツイチで一人暮らしだったり、結婚していなかったり、子供がいない方が多いです。女性進出を阻んでいるのは家事、出産、育児の問題も大きいと思います」というメッセージです。

浜田:そうですね。自分の時間を犠牲にしてまで働く人じゃないと、つまり男性と同じような働き方をする女性だけがリーダーになれるというのもちょっとおかしい話だと思うんですよね。よく企業側に取材をすると、「いや、浜田さんの言うことは分かるけど、女性たちが管理職をやりたがらないんだよ」っていう言い方をされるんですよ。でもそれも結局こういう長時間労働で、今までのようなマッチョな働き方をする男性のリーダーを見ていたら、ああは働けない、なりたくないと思いますよね。だからリーダーそのもののあり方、管理職そのものの働き方を変えていかないと、私もやってみたいと思う人は少ないと思います。そこから変えていかないといけないんです。

速水:もうひとつ、まさに芯を食ったご意見なんですが、「半沢直樹の東京中央銀行の会議室風景、ほとんど女性が目に入らない」というつぶやき。僕も半沢直樹は見ているんですけれども、確かに女性の登場人物に関して思うところはちょっとありますね。

浜田:あれすごく話題になっていますよね、男性ばっかりというのが。かたや私と速水さんが大好きな「愛の不時着」では女性がCEOだったりするわけですよね。だから韓流ドラマを見て日本の「半沢直樹」見ると、みんな凄く違和感があるというのを最近聞きます。半沢直樹の奥さんも専業主婦で、“転勤になってもどこでもついていくわ”みたいな事を言うのが、働いている女性から見るとうーんみたいな。

速水:最近登場したキャラクターいますよね。

浜田:国交大臣ですね。

速水:おそらく誰かと誰かのミックスをしたようなキャラクターなんですけど、まあいやなキャラクターだったりしますよね(笑)

浜田:働く女性をああいう風にしか描けないんですよね。働く女性の強さというか、名誉男性化したところだけをキャラ化しているというか、ああいうキャラしかいないのかとちょっと残念な感じですね。

速水:何かものすごくあのドラマを見ちゃうというのは、あれはある種の日本社会の縮図だと感じるからなんですが、そこに表出しているものが、女性の管理職がいないという問題。まあ西田尚美さんがやっているライバル銀行のトップの役は非常にカッコイイんですけね。

浜田:今は銀行も役員に女性は必ずいます。なのでちょっとあの風景はもうないかなという感じはしますね。

速水:続編が作られるとしたら、キャラクター、キャストの見直し問題も是非半沢に切り込んでいただきたいなと思います。今夜は「女性管理職の2030年問題なぜ延期に?」というテーマを届けしました。

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