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速水健朗

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コロナが浮き彫りにした、生活保護の現実

2020/9/9 (水)21:00
2020年9月9日Slow News Report


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速水:Slow News Report 今日はフロントラインプレスの藤田和恵さんとお送りします。藤田さんは労働や福祉に関する問題を長年取材されていますが、今日は新型コロナウイルスの問題で浮き彫りになった生活保護をめぐる問題をリポートしていただきます。今、仕事を失ったり収入が無くなった方が増えていて、おそらくこれからまた増えていくと思うんですが、その中でセーフティネットは非常に大事になっています。現状生活保護の申請の数って増えているんでしょうか。

藤田:生活保護の申請件数は緊急事態宣言があった4月に一気に増えたんですけれども、4月の全国の申請件数は約21500件です。これは前年の同じ月と比べると 25%の増加なんです。東京23区で言いますと、去年と比べて4割も増えているんですね。生活保護の現場で働く方に取材したのですが、今回は、まさか自分が生活保護になるとは思わなかったとショックを受けている人がすごく多かったと話していたのがとても印象に残っています。

速水:そうした申、生活保護をめぐっては以前から問題だったことがより顕在化したことがあるということなんですが、これはどういうことですか。


コロナ禍で顕在化する水際作戦と無低の問題

藤田:まず一つは水際作戦と言われているものですね。水際作戦というのは、自治体の窓口で生活保護の申請に来た人をはねつけた上で追い返すことです。

速水:よく「エアコンあるんですか?」みたいなこととか「マイカー持っているんですか?」みたいな、本来は生活保護受給の条件としては関係ないはずなのにそういうことを聞くといいますが、水際作戦とはそういうことですか。

藤田:そうですね。一般的なのは「まだ働けるでしょう?」とか、コロナ禍でも「まだ仕事探してください」と言われた人もいます。私が今回取材をしたなかでは、「あなたの実家のある地元に帰った方が申請通りやすいから」と言われて交通費だけ渡されて追い返されたということもありました。

速水:基本的に行政としては、本来であれば受け止めてそれを支払う立場なのに、なぜそこで食い止めるんですか。

藤田:法律のことを言いますと、申請というのは必ず受け付けなくちゃいけないんですね。その後支給するかどうかを決めるのはまた別の話なので、本来水際作戦はすべからく NG なんです。なのになぜ追い返してしまうのかというと、自治体ができるだけ財政負担を減らしたいとか、あるいはケースワーカーの業務負担を減らしたいという思惑も水際作戦の背景にはあるんじゃないかなと感じます。

速水:仕事を減らしたいというのは、仕事が多くて忙しいという現場の状況があるんですか。

藤田:生活保護のケースワーカーたちの仕事というのはめちゃくちゃ忙しいです。人手が全然足りていないです。

速水:また、もう一つ顕在化している問題というものに“無低”の問題があるということなんですが、“無低”とはなんでしょうか。

藤田:無料低額宿泊所のことなんです。無料低額宿泊所というのは、生活に困窮している人が文字通り無料、もしくは低額な料金で利用できる社会福祉法に基づく民間の施設のことです。これは全国に今大体570箇所くらいあるといわれていて、多くが民間の NPO 法人や株式会社によって運営されています。ただ、一部には良心的な無低もあるんですけれども、残念ながら多くは居室も狭く不衛生で、人権無視と言われても仕方ない処遇をしているところが多い。ホームレス状態の人が生活保護を利用しながら入る、数十人規模の大規模相部屋施設という風にイメージしてもらうとわかりやすいかなと思います。生活保護法では本来、住まいのない人が申請に来た場合はアパートで保護しなきゃいけないということになっています。施設じゃなくてアパート。これが原則なんですけれども、日本は家賃が高いのでアパートがなかなか見つからないんですね。それで本来は例外的、一時的であるはずの無低に入居をさせるということが当たり前になっていってしまい、無料低額宿泊所が急増していったという経緯があります。

速水:コロナ禍の現在、誰でも仕事を失い、収入を失うことはあり得るわけですが、例えば僕のような40代男性だとどれくらい生活保護を受けられるものなんでしょうか。

藤田:東京23区内にお住まいだった場合、40代単身者ですと支給額というのはおよそ13万円くらいです。住宅扶助というんですけども、このうち家賃に当てるのが最大で53000円なので、実際には支給額から住宅扶助を引いたおよそ8万円で1ヶ月の水光熱費とか食費をやりくりする。そんなイメージですね。

速水:なるほど。23区内で5万円のアパートを探すってちょっと難しいかもしれないですよね。

藤田:まさにそこが問題のキモなんです。だから無料低額宿泊所がはびこってしまうんです。

速水:無料低額宿泊所に入れば安く生活保護の中で暮らしていけるということではないんですか。

藤田:全く違うんですよね。無低って90年代くらいからでき始めたんですけれども、当時から一部の悪い無低のスタッフが公園なんかに出向いて、ホームレス状態にある人に声をかけては生活保護を申請させて施設に入れるという手口が横行していたんです。私が取材をしたケースですと、そういった施設の入居者が職員の監視の下で保護費13万円をもらいに行くんですね。そうするともらったそばから封筒ごと13万円全額没収されちゃうんです。入居者の手元には一銭も残らない。無低は生活保護利用者から保護費を搾取するという貧困ビジネスの温床になっていると言われています。

速水:なるほど。宿泊するだけなのにテレビのレンタル代だとか何とか料だとか費用を上乗せして、結局それがビジネスになっている。生活保護費をごっそり取られてしまうとこれは問題がありますよね。

藤田:そうですよね。それでは到底自立できません。一方で食事もとても粗末だったりするし、厨房とか清掃の仕事を強制されるケースもあるんです。しかもただ働きなんですね。また、そういった狭い部屋ですからストレスも溜まって入居者同士の殺人事件が起きたり、職員による暴行死事件なんかもあります。数多く取材したケースでは脱走してくる人たちがもう日常茶飯時です。そういう人たちに言わせると、「もう二度と無料低額宿泊所だけには入りたくない。あそこは現代の強制収容所だ」というお話も数多く聞きました。

速水:脱走するのも簡単ではないですよね。

藤田:施設によるんですよね。ただ、基本的に持ち金0で脱走しなきゃいけません。

速水:交通費も無くて、次行く場所なかったら、とりあえずそこにいるしかない人たちを見据えたビジネスということなんですね。生活保護をめぐる問題は、コロナと関係なく以前から指摘されていたと思うんですが、どうして改善されて来なかったんでしょうか。


無低には行政の側にもメリットがある

藤田:水際作戦や無低の話は以前からあったんですけれども、今回のコロナ禍で新しく住まいを失った人が急増したということがあります。例えばネットカフェを追い出されたとか、雇止めにあって社員寮から追い出されたというような、まさか自分が生活保護になるとは思わなかったという人達も申請に行くわけです。そうすると、半ば強制的に現代の収容所のような無低に送られる。これまでは無低の主な被害者というのはホームレス状態にある人だったわけですけれども、今回のコロナ禍でその被害の裾野が一気に広がったという感じはしています。取材でお話を聞かせて頂いたある40代の男性のケースですが、今年5月に派遣会社を雇い止めにされて自治体の生活保護の申請に行ったわけですね。これは横浜のケースですが、そうすると窓口の人から生活保護を受けるには無料低額宿泊所に入ってもらいますと言われたそうなんです。その男性は「無料低額宿泊所って何ですか?」と聞いたら、部屋の中にいくつか二段ベッドがあって、そこで共同生活をしてもらいますと言われたんですね。この男性は「コロナの感染は大丈夫なんですか?」と聞いたら担当者は黙っちゃったんです。無低入居が生活保護利用の条件ですというのはそもそもおかしいんですけども、そうじゃなくても感染拡大まっただ中で相部屋入居を強制するというのは、これはまるで「金が欲しいんだったら多少の感染リスクは仕方ないですよね」と言っているのと同じ事ですよね。結局この男性は感染が怖くて申請をやめたんですね。つまり水際作戦成功です。この男性は自治体が用意した体育館で寝泊まりしたそうです。

速水:正確に法律通りに運用されるのであれば、まずアパートが第一だったはずじゃないですか。これではまるで業者とつながっているかのように見えてしまいますね。

藤田:そうですよね。この問題がなかなか解決してこなかった理由というのは、無低サイドにしてみるとボロい商売だからやめたくないですよね。一方で自治体の側も、なかなか安いアパートが見つからないなか、無低に頼みさえすれば電話一本で確実に受け入れてくれる。また、無低だったら皆さん一箇所に入るわけですから、個別訪問の手間も省けて、ケースワーカーの負担も軽減できる。先ほども言ったように、現場のケースワーカーの人手が足りていないというのも事実なんです。ケースワーカーの人達に取材すると「無料低額宿泊所が問題なのは重々分かっている。だけど申請に来た人を再び路上に放り出すよりはまだマシでしょうと思って、目をつぶってきてしまった結果がこうなっちゃったんだよね」と言うんです。

速水:ケースワーカーっていろんな業務がある中で、生活保護を受給している人たちの管理みたいなところも含めて仕事なんですね。

藤田:そうです。一人当たり80件とか、多いと100件くらい受け持つんですね。それで戸別訪問をして、生活保護費ちゃんと使っているか、ギャンブルとかに使い切ってないかといったところを、お話を聞いて相談に乗るという業務があるんです。これが無低だと一箇所で済むわけですよね。

速水:それは業者としての目論見と、非常に忙しいケースワーカーの手間が省けるという意味では両者にとって得ということになっているわけですね。

藤田:長年持ちつ持たれつの関係に陥ってしまったことが、批判されながらなかなか解決してこなかった原因の一つだと思っています。

速水:一通メッセージを読みます。こちらは40代男性の方です。「私も実は生活保護を受けようと考えたことが過去にありました。しかし受給にはかなりのハードルがあるということで、どうも相談する気にはなれず、受けたら受けたで定期的に見回りに来られたり、帰省すらできなかったり、窮屈な思いをするのではないかということもあり結局は諦めました」というメッセージです。定期的な見回りというのは今のケースワーカーの話なわけですね。そしてやっぱり窮屈な思いをするんじゃないかってどうしても申請する時に考えますよね。

藤田:活保護って収入が無くなっただけじゃ受けられないんです。基本的に資産があるとダメなんですね。利用中は貯金も出来ませんし、宝飾品とか車、持ち家なんかの資産も原則売却を求められます。巷で言われているように簡単に受けられるものでは決してないんです。

速水:もう一通読みます。「私もコロナの影響で失業した人間の一人です。今はまだ失業手当でなんとかなっていますが、支給終了までに就職できなかった時にはどうすればいいのか不安な毎日を過ごしております」この方は20代で地方から上京してきてという方なんですが、こういう方はまさに今増えていますよね。今日のお話にもありましたが、生活保護を受ける際には、必ずしも無料低額宿泊所に行かなくては行けないわけではないんだということも知識として持っておく必要がありますね。

藤田:その通りです。もし生活保護を申請する時は、「申請はとりあえず受け付けてください」ということと「無料低額宿泊所に入ることは私は了承してません」ということをはっきり言うのがいいと思います。


無低の問題解決のために低所得者層向けの公営住宅の供給を

速水:今後も生活に困窮していく方々はまだまだ増えそうですが、この問題を今後解するためにはどんなことがあるでしょうか。

藤田:無低に対する直接的な規制とか、不安定な雇用をなくすということももちろん有効だと思うんですけれども、私が一番大事だと思うのは、これだけ低所得の人を増やしちゃったわけですから、低所得者層の人が安い家賃で借りられる公営住宅を国の政策として供給していくということをもうそろそろ考えないと、この無料低額宿泊所の問題というのは深刻化していくだけだと思います。

速水:イギリスなんかではそういう公共住宅みたいなものありますが、あれに匹敵するものは日本には今のところないですよね。

藤田:そうですね。公営住宅というのは存在はするんですけれども、入居のハードルがべらぼうに高いですね。

速水:その辺の対策今後も考えていく必要があるかもしれません。本日はフロントラインプラス藤田和恵さんにお話伺いました。どうもありがとうございました。
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