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速水健朗

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赤ちゃんポストとフランスの匿名出産制度

2020/9/24 (木)21:00
2020年9月24日Slow News Report


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速水:Slow News Report 今日は西村カリンさんとお送りします。テーマは「赤ちゃんポストとフランスの匿名出産制度」です。まず赤ちゃんポストとはどういうものなんでしょうか。


赤ちゃんポストとは

西村:赤ちゃんポストはいろんな国にある施設で、自分で産んだ子供を育てることができない親が匿名でそこに預けて、そこで養子縁組をするというものです。

速水:日本では熊本県熊本市にある慈恵病院が2007年からこのシステムを採用しているということなんですが、世界中にあるものなんですね。

西村:いろんな国にあります。最も知られているのはスイスですね。

速水:熊本の慈恵病院はまさに今回カリンさんが取材をされているという話なので、後ほど伺いたいと思いますが、日本では13年前いろんな議論を呼びました。そしてここ一箇所から増えていない現状なんかもあるんですが、日本の法律では制度的にグレーゾーンの部分があるということなんですか。

西村:そうですね。法律の面で定められていない状況が続いています。ただ違法でもないので、いわゆるグレーゾーンです。赤ちゃんポストは相談窓口の役割もあります。単純に赤ちゃんを置く場所というよりも、子供を育てるのは難しいと思う人がまず相談して、それからどうするか考えます。日本では1箇所しかないのですが、その一箇所で年間6000件の相談を受けていますので非常に重要な役割を果たしています。


匿名出産制度

速水:その取材の内容についてはまた後ほどお伺いしますが、もう一つのテーマである匿名出産制度、僕なんかは正直知らなかったんですが、これはどういうことですか。

西村:フランスにある制度ですが、名前を出さずに完全に匿名で出産ができる制度です。何らかの事情で匿名で出産をしたい母親のための制度で、どこの病院でもどんな理由でもできます。フランスでは民法に定められたのは1993年ですが、その前から同じような制度はありました。

速水:これはどういう人が利用するための制度なんでしょうか。

西村:いろんな人が利用します。例えばレイプで妊娠した人とか、あるいは不倫で妊娠した人、あるいは未成年だから親に言えない状況にある人、中絶の期間を超えてしまった人とか本当に色んな理由があります。

速水:僕も含めてスタッフの中でもこういう考え方があることすら気づいていなかったんですが、フランスでは社会的によく知られている制度なんですか。

西村:そうですね。ほとんどみんな知っていると思います。私も子供の時からその話を聞いているし、そういう風に生まれた知り合いとかもいます。だから私にとっては当たり前のことですね。


赤ちゃんポストは相談窓口としての機能も重要

速水:なるほどそこら辺は社会による違いがありそうなんですが、今回カリンさんは赤ちゃんポストをやっている熊本の慈恵病院に取材をされたそうですね。取材しようとしたきっかけは何かあったんでしょうか。

西村:色々ありますね。13年前に赤ちゃんポストができた時から取材したかったんですけれども、前にいた会社ではできなくて、フリージャーナリストになってできるようになったということ。またもう一つの理由は、是枝裕和監督の次の映画のテーマが赤ちゃんポストでやることが分かって、やはり今こそ取材しないといけないと思ったんです。

速水:是枝監督は確かに今までの作品の中でも、「誰も知らない」なんかもいわゆる育児放棄の実際の話をフィクションとして描いている。家族の問題を描いている中でなぜ是枝さんは赤ちゃんポストに興味があったんでしょうか。

西村:是枝監督はずっと「家族とは何か」が主なテーマですが、是枝監督のインタビューをした時に、もしドキュメンタリー映画を撮るならどういうテーマにするかと聞いたら「熊本市にある赤ちゃんポストです。」と。それは2~3年前の話ですけれども、今回はフィクションの映画になるんですが、なるほどと思いました。

速水:そうなんですね。慈恵病院の取材に行かれたのが今年ですよね。どなたに取材をされたんでしょうか。

西村:副院長先生です。赤ちゃんポストを設置した方の息子さんです。

速水:取材してみて、見えてきた事ってありますでしょうか。

西村:13年経ったので世論は変わったのかとか、運営することがどれほど難しいことであるかとか伺いました。ベテラン看護師にもあったんですが、仕組みの説明を受けた後、彼女が感じたことを聞きました。突然赤ちゃんポストに来た時、やっぱりドキドキするそうです。ただ小さい命を救うべきという気持ちが非常に強いんですね。

速水:ただ、日本の法律上はそこをフォローする法律が制度がないためにグレーゾーンになっているとでしたが、そうなると非常にコストがかかるというか、たくさんの問題がありそうですよね。

西村:そうですね。やはり赤ちゃんポストを設置すれば済むということじゃなくて、やはり相談窓口が重要であり、それがなければ赤ちゃんポストを設置するのはあまり意味がないんです。そして24時間365日運営すべきサービスなので、それが出来る病院は限られているんですね。でも理想的には、やはり一県一箇所あるべきだと副院長は言っていました。

速水:ここに赤ちゃんポストがあるということで、わざわざ遠くから来られる方なんかも多いんですか。

西村:はい。ただ、行きやすい所でもないし、やはり今はコロナの影響で赤ちゃんポストを利用する人は減っています。それは本来良いニュースであることだけど、我慢している母親はどこかにいると考えられるので、やはり心配な状況であるとは病院の方は考えています。

速水:周囲の誰にも相談できずに、病院ではない自宅の風呂場であるとか、どこかのトイレで産んでしまったみたいなケースもありますよね。そういうことを救うために、また赤ちゃんの安全のためにも、日本でちゃんと法整備をするべきだということが副院長の法の考え方ですか。

速水:そうですね。そして赤ちゃんポストだけでは足りない、匿名出産制度も必要だと、フランスやドイツの事例を見て副院長は考えているんです。ただいきなり病院でやるというのはそれほど容易なことではないんですね。

速水:赤ちゃんポストが熊本以外に広がりを見せないのは、非常にコストがかかるし、制度的にもグレーですよということで難しいわけですね。

西村:そうですね。やはり相談窓口など、それが出来る病院はそれほど多くはないですね。


キリスト教と赤ちゃんポスト

速水:それでも慈恵病院がやっているのは、慈恵病院自体がキリスト教をベースにしているというところがキーですよね。

西村:そうですね。やはり考え方はフランスのキリスト教に似ていて、実親が自分の子を育てない場合は社会がやるべきという考え方で、妊娠したことは自分のせいと言われるかもしれないけど、そうではないケースもありますので、そういう人はむしろ救うべきですね。

速水:個人に全部負担を任せるわけではなくて、コミュニティとして引き受けるよいう考え方は、キリスト教的な考え方と今回取り上げている匿名出産が関わっているという所だと思うんですが、先ほどフランスやドイツの視察をされている話をされていましたが、ドイツの内密出産の制度はどういうものなんでしょうか。

西村:匿名出産に似ていますが、名前を出さずに子供を産むことです。ある程度情報を出しても、それは秘密のまま残るという仕組みで、将来は子供が自分の情報を知りたい場合はある程度引き出すことができる仕組みです。

速水:なるほど。その後育っていく子供がどう自分の出自みたいなことに向き合っていくかということも含めた制度なわけですね。先ほどフランスでは匿名出産という考え方が根付いているし、93年には民法で定められているという話を伺ったんですが、それ以前から存在していたということなんですよね。

西村:そのルーツはフランス革命のところぐらいですよね。やはりキリスト教との関係があって、もともと教会に放棄された子供が多くて、そんなふうに生まれました。

速水:赤ちゃんポストですね。

西村:そうですね。まさに赤ちゃんポストです。

速水:教会の前に子供が置かれているみたいな話って、確かに海外の物語なんかでは描かれたりしてますよね。まさにキリスト教と結びついている、この問題の一番根っこのところだと思うんですが、慈恵病院がやっているというのもそういうところなんだなとわかりました。匿名出産制度を実際に利用している人たちの件数って、どの程度のフランスではあるんですか。

西村:大体年間で600人くらいが匿名制度を選んでいます。


子供の知る権利も考える必要がある

速水:一通メッセージを読んでみたいと思います。「匿名出産について素朴な疑問ですが、生まれてくる赤ちゃんにも誰が母親か秘密ということですか。もしそうなら将来親が誰か分からないのはかわいそうな気がします」というメッセージですがいかがでしょうか。

西村:その質問はよく聞かれますが、13歳になったら知る権利はあります。もしお母さんが匿名で出産したとしても、情報を封筒に入れてどこかで保管されているんです。お母さんが選んだ情報を残すことができるんですね。自分の名前を書くのも可能だし、お父さんの名前を書くことも可能だし、どういう状況で生まれた子供とか、いろんな情報を書いて、特定の機関がその封筒を保管します。匿名出産で生まれた子供は13歳になると、大人と一緒に手続きをすれば閲覧することができるはずですね。

速水:13歳というのは非常に早い気もいるんですが、大人と一緒にということは、自分の判断で全部決めるということではなくて、育ての親と相談の上どうするみたいなことを13歳から話し合うということですか。

西村:そうですね。フランスでは養子縁組家庭環境で育てた子供は自分のストーリーを早めに知った方がいいという考え方があります。だから育てた親が説明をするわけです。「あなたはここの家庭で生まれた子供ではない。本当の親は将来は知ることができる可能性はある」という説明をして、18歳になったら一人でも手続きできるようになります。

速水:なるほど。おそらくもうちょっと早い時期から、周囲から聞いたり、自分でなんとなく分かったり、きっと十歳くらいからそういう事ってわかったりしますよね。

西村:そうですね。やっぱり3~4歳から説明すべきとよく言われていますね。


小さな命を守るため、危険な出産を防ぐための制度として

速水:匿名出産という考え方自体が日本にはあまりなじみが薄い所があるのですが、まず医療機関に自分の身元を明かさないということを宣言することが最初ですよね。その後はどんな選択肢があって、どんな経緯をたどるんでしょうか。例えば養子縁組になるのが普通の経緯ですか。

西村:そうです。ただ、やっぱり自分の子だから自分で育てたいという気持ちになった場合は、2ヶ月以内であれば変えることができます。母親も父親も可能です。その制度はなぜ必要かというと、やはり危険な出産を防ぐための方法なんですね。

速水:そこですよね。まず一人で抱えてしまうことで非常に危険が増えるわけですよね。そうではなくて、病身元がなくても病院でちゃんと産めますよということだけでも大きく違うということだと思うんですが、やっぱり匿名出産ということをまず日本でも認知させて法整備をするべきなんでしょうか。

西村:今のままでは危険な出産を防ぐことができない状況だと思います。なぜ匿名出産が必要かというと、やはり不倫だったり、レイプ、あるいは経済的なこととか、子供を育てられない事情は日本でもいろいろありますが、やっぱり良い環境で子供が大きくなるために必要です。今はそれが出来ない時もありますが、それは虐待になる一つの原因でもあります。ですから、小さい命を救うために必要な方法である思います。それは匿名出産であるとか、赤ちゃんポストをもっと改善した形で広げる方法なのか、わからないけれども、今のままではやはり何か足りないということは感じています。

速水:匿名出産は、母体、赤ちゃんの安全をめぐる問題として、そこをまず制度として今後広めていく必要があるのか議論が必要だと思いました。そしてそれを制度として考える上で、子供の知る権利みたいなことなど、議論するテーマは非常に多岐に渡ります。家族間の話とかって日本ではなかなか新しく次に行こうとならない分野でもあると思うんですが、ただ単に制度を導入すればいいというわけではないわけですね。まずは議論が全然足りていないなという風に感じました。今夜は「赤ちゃんポストとフランスの匿名出産制度」について西村カリンさんに伺いました。

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