敏感という個性を持つ人々、HSC/HSP

2020年10月14日Slow News Report


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速水:今日取り上げるのは「ハイリー・センシティブ・チャイルド」(HSC)です。最近耳にする機会が増えたかもしれません。「ハイリー・センシティブ」とは人一倍敏感ということになるんですが、そんな個性を持つお子さん、大人の方について、フロントラインプレスの当銘寿夫さんにお話を聞いていこうと思います。まずはハイリー・センシティブ・チャイルド、つまり非常に敏感な子供ということなんですが、この特性を教えてください。


ハイリー・センシティブ・チャイルドとは?

当銘:アメリカの心理学者エレイン・アーロン博士によって提唱された心理的な概念なんですけれども、状況をよく観察して深く処理するであるとか、過剰に刺激を受けやすいとか、共感力が高いといった四つの性質を併せ持ったお子さんの事をハイリー・センシティブ・チャイルドといい、人一倍敏感な子供達というような定義づけがされています。

速水:これは内向的とか、コミュニケーション能力のない子どもと誤解されやすい性質なんですか。

当銘:そうですね。刺激に対して敏感ということは、刺激を受けやすくて疲れやすいわけですが、HSC(ハイリー・センシティブ・チャイルド)を知らない人からすると「あの子はすぐに疲れたと言うね」というように映ってしまいます。また、共感する能力が高いというのはいいところでもあるんですけれども、裏を返すと「他の人のことなのになんであなたがこんなに落ち込んでいるの?」というように言われかねない。HSCのことをよく知らない方からすると、この様々な特徴がマイナスに捉えられてしまう可能性もあるんです。


ハイリー・センシティブ・チャイルドは病気ではない

速水:共感しすぎてしまったり、人の微妙な感情の変化なんかに左右されてしまうという特質があるということだと思うんですが、この「ハイリー・センシティブ・チャイルド」(HSC)は病気ではないんですよね。

当銘:そうですね。病気や障害ではなく気質だと言われています。特に病気ではないので、お医者さんの中にもこの概念が浸透していなかったりというような状況もあったりするので、お医者さんに相談にいっても「これは発達障害のグレーゾーンですね」などと診断されるというケースもあったりして、余計に保護者の方に混乱が生じる場合もあるそうです。

速水:軽度な発達障害というふうになってしまうと学校現場での対応で問題が起こってくる可能性があるということでしょうか。

当銘:そうですね。発達障害であれば障害者差別解消法や発達障害者支援法で、学校現場でこういう対応を取りなさいという具体的な方向性が示されるようになっているので、学校側もそれなりの対応をとっています。しかし、HSCに関しては、発達障害ほどは学校現場で認知されていません。取材を進める中でHSCのお子さんを育てているお母さん方が綴るブログなんかもいくつも読んだんですけれども、学年が変わるたびに新しく担任になる先生にお子さんの気質、特徴というのを説明に行っているとか、校長先生の移動で新しい校長先生になったら、前までやってもらえていたような柔軟な対応がとってもらえなくなったというようなご苦労が綴られています。HSCのお子さんを育てている多くの保護者の方は、学年が変わるたびに次の先生はどうか理解してくれていますようにという、祈るような気持ちで新学年を迎えるというケースも多いみたいです。


HSCへの接し方を考えれば、みんながすごしやすい環境になる

速水:自分の子供もがしかしたらHSCもと思ったら、まずどう接すればいいんでしょうか。

当銘:HSCのお子さんに対しては急かしたり、叱ったりなどの無理強いをしないとか、その子のペースを尊重するということであったり、先ほど言ったように刺激に疲れやすいので早めに休ませるといったことが必要と言われています。でもこれは、HSCであろうとなかろうと、どんなお子さんと接する時にも大事なことですよね。HSC関連の書籍を出されている明橋さんというお医者さんに取材をした時に、「敏感なお子さんのサインを大事にするようにすれば、みんなが過ごしやすい学校になるはずです」と助言をしていました。ですから、そういう風に接するようにしたほうがいいと思います。

速水:例えば先生が怒鳴るみたいな大きい音に対して、HSCの子は敏感になりすぎるということがあるんですが、じゃあ先生が怒鳴るのをやめましょうという話って、実はHSCに関係なくその方がいいですよね。

当銘:そうですね。何か先生が叱らないといけない場面が出てきても、みんなの前で大声で特定のお子さんを怒鳴るというのではなく、きちんと個別に「こういうことはしちゃいけないんじゃないか」というのを怒鳴らないで説明するようにする。そういうようにHSCの子が通いやすいような学校にするというのは、お子さんみんなが通いやすい学校になるんじゃないかと思います。

速水:当銘さんがこのことを取材されるきっかけって何だったんでしょうか。

当銘:私自身は大人の発達障害に強く関心があったので、それに関して何か取材ができないかなと色々リサーチをしている中でHSC、HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)という言葉に行き当たったんです。それまで全く自分が知らない概念だったので色々調べてみると、こういうような気質を持った人たちがいるんだということを知りました。かつて10~20年前までは、発達障害が同じように広く知られていなかったがゆえに、社会や学校の中で困った子だ、困った人だというような扱いを受けてきたのが、今はかなり理解が進んで、学校現場の対応というのも始まってきています。ですが、HSCはまだ広く知られていない概念なので、多くの当事者、保護者の方が苦しんでいる状況にあるんだろうなと思って、それで取材をしてみようと思いました。

速水:なるほど。概念として定着することで、社会としても対応されるようになっていく。こういうことがあるんだと知ること自体が大事だという部分があるわけですね。後半は大人における“ハイリー・センシティブ”について伺っていきます。


【HSPカフェメリッサ主宰 秋池葉子さん】
世間的な常識と言われることが HSP の人は疎い人が多かったりします。それがやはり自分自身が不安に思うことがあるから、人と関わるのが怖くて、病気ではないけれども殻にこもってしまいがちなんです。それでお茶会にきたというだけで私は本当にすごいことだなと思うんですね。


速水:この声は当銘さんが取材をされた、ご自身が HSP である秋池葉子さんの声ですが、秋池さんはどのように自分が HSP だと気付いたんでしょうか。


ハイリー・センシティブ・パーソン HSP

当銘:秋池さんは若い頃から職場の人間関係に悩まされてきて、ご本人の言葉を借りると、気がつくといつもフラストレーションをぶつけられる立場で、転職を重ねる日々が続いていたそうです。そして40代半ばのある日、書店でエレイン・アーロン博士の HSP について書いた書籍の日本語版に出会い、その場で本の中にある23項目のチェックリストを試してみたら、ほぼ全てに該当していたそうです。それで気づいたんだそうです。

速水:なるほど。チェックシートの項目にはどんなものがあるのでしょうか。

当銘:他人の気分に左右されるとか、明るい光や強いにおい、ザラザラした布地、サイレンの音などに圧倒されやすいなど、感覚に強い刺激を受けると容易に圧倒されてしまうとかですね。あとは一度にたくさんのことを頼まれるのが嫌だとか、そういうような項目があります。

速水:これはどのくらい該当すればHSPということになるんでしょうか。

当銘: 23の項目のうち、14以上“はい”と答えた方は HSP だろうということになります。

速水:これはある種の個性や特性であって、そういう気質を持っていますよということを自覚するということですよね。

当銘:そうですね。

速水:そして先ほどの秋池さんの発言の中に“お茶会”という言葉が出てきましたが、これはどういうものなんでしょうか。

当銘:秋池さんご自身がHSPなんだと気づいたのが2000年頃なんですけれども、その時点でも日本国内では HSP に関する情報というのが少なくて、かなり時間が経ってからなんですけれども、当事者同士の交流会というのにようやく参加することができたそうなんです。その時に自分の中で非常に心が落ち着く場所だったそうで、そういった場をご自身でも開きたいと思うようになって、2013年からHSP カフェ メリッサという名称でお茶会という交流会を開くようになったそうです。最近、ようやくテレビなどでも放送されるようになって、少しずつ浸透していってはいるんですけれども、やっぱり周りに理解してもらえないというような苦しみを抱いている方々が、当事者同士で集まって共有しあうという場所です。私も昨年の取材の際にこのお茶会に同席させてもらったんですけれども、参加者の皆さんは秋池さんのように職場での人間関係に苦しんでいたりとか、周りに理解してもらえないという辛さを当事者同士で共有しあっていらっしゃいました。

速水:自分が理解されていないことに対して情報を共有するという側面が大きいということですか。

当銘:そうですね。あるいはどう対処しているかというようなヒントも、みんなで共有しあったり交換しあったりという場面もありました。

速水:どう対処すればいいのかというと、やっぱり周りに知ってもらうということになるんでしょうか。

当銘:そうですね。周りに知っていただいたり、自分自身で人混みはできるだけ避けたりするとか、感覚が強く揺れ動くような場面にできるだけ行かないなど、自分自身の取扱説明書を作るというようなこともすすめられていました。

速水:一通メッセージを読みたいと思います。「私自身と娘二人が診断を受けています。周囲の人が怒られているだけで自分が怒られているように感じてしまいます。私は特に聴覚過敏がひどくて、耳栓イヤーマフが欠かせません。いろんな人が一度にワイワイ話をしているテレビ番組を見ることも困難で、ラジオで情報を得るようにしています」という方なんですが、例えばテレビをみんなでワイワイ見るとか、テレビの中の番組でワイワイ議論をしているみたいな事って、それが苦手な人がいるってなかなか気付かないですよね。

当銘:そうですね。他の人にとっては平気なことが平気じゃないというところがあったりするので、そこをわかってもらえるかどうかというのはかなり大きなポイントだと思います。


得意分野を生かせるような社会に

速水:当銘さんが考えるHSC、HSPとの理想的な付きあい方というのはあるでしょうか。

当銘:そうですね。HSCのようにこれまで共有されていなかった概念が提唱されて浸透していくのを見るにつけ、私たちが小さい頃から当たり前のように思っていた“普通の子”とか、当たり前のことを当たり前にできるようにしなさいとか、そういう考え方が実は存在していなかったんじゃないのかなと思うんです。“当たり前”というものはなくて、得意分野はみんなそれぞれ違うよねという方が認識としては正確なものになるんじゃないかなと思うんです。HSCの関連の書籍を多く出している明橋医師の「敏感な子のサインを大事にするようにすれば、みんなが過ごしやすい学校になるはずです」というのと社会も同じで、みんながそれぞれの得意分野を生かせるような社会になっていくように、私たち一人一人が努力を続けていくことでみんなが生きやすい社会になっていくと考えています。

速水:もう一つお伺いしたいんですが、先ほどのメールにありましたが、医者にかかって診てもらうこともできるんですか。

当銘:HSCやHSPの気質に関して詳しくて、発達障害とはこういう事が違いますよと指摘もできるお医者さんも国内にいらっしゃいます。職場であったり学校が、もしそうだったらお医者さんから診断書をもらってきてほしいと要求するようなケースがあるようで、それで詳しいお医者さんのところに行って、客観的にHSCですというようなお墨付きをお願いしないといけないというケースもあるようです。

速水:学校の現場で対処が進んでいない部分があるというのはそういうことですよね。もう一通メッセージを紹介します。「子供の不登校を相談したスクールカウンセラーの先生から HSCの話を聞いて、以来何かがストンと落ちて楽になりました」というメッセージもいただいています。こういう傾向の人っているんだということを知るだけでも、随分社会は変化するかもしれないということですね。

当銘:そうですね。自分自身が苦しんでいたり、周りの方がもしかするとそうかもしれないなと気づいて、その人が苦しまないような接し方を模索していければ、みんなが生きやすい社会になっていくのかなと思うんですね。

速水:こんな特徴がある人もいるんだということを前提とした社会、その方が生きやすいですよね。今日はフロントラインプレスの当銘寿夫さんにHSC、HSPとの付き合い方、伺いました。ありがとうございました。