あの『Number』が、藤井聡太を表紙にした理由

2020年10月20日Slow News Report


 今すぐ聴く 


速水:番組では珍しいテーマなんですが、今日はスポーツ関連の話題です。お送りするテーマ「あのNumberが、藤井聡太を表紙にした理由」です。先月40年の歴史をもつ老舗スポーツ雑誌Numberが初めて将棋特集を組んで話題になりました。タイトルが「藤井聡太と将棋の天才」、そして表紙に藤井聡太二冠が載っています。ずっとイチローであるとか、マイケル・ジョーダンであるとか、アイルトン・セナとか、大谷翔平であるとか、アスリートが表紙になるということが当たり前だったところに藤井聡太二冠が載ったということで反響は非常にあったと思います。今日はそれを仕掛けた張本人でもある 『Sports Graphic Number』 編集長 宇賀康之さんに来て頂いております。さっそくこの反響についてお伺いしたいんですが。


大きな反響が会ったNumberの将棋特集

宇賀:いやもうびっくりしましたね。こんなに反響があるとは思いもよらなかったです。ものすごくよく売れまして、雑誌としては珍しい増刷を3回しました。木曜日から発売になるんですけども、日曜日でほとんど売り切れてしまうという状況で、近年稀に見る売上のスピードでしたね。

速水:総部数はどれくらいでしょうか。

宇賀:合計23万部刷ったんですけれども、最初が12万部だったので、それの倍くらい刷ったということになります。雑誌の場合、通常は次の号が出ると違うものに変わってしまうんですが、それでも置いてくだる書店さんもあって、まだ売れ続けています。やっぱり20万部近くはおそらく売れているであろうと思います。

速水:メッセージを一つ読みます。「企画された方は将棋のどんなところにスポーツを感じたのかな。やはり頭脳戦というところなのでしょうか」というメッセージが来ているんですが、やっぱりスポーツの専門誌で将棋をやるという驚きってあったと思うんですが、なぜスポーツ紙で将棋だったんでしょうか。

宇賀:元々私は藤井聡太さんにNumberに登場していただきたかったんですね。藤井聡太さんは時代を変えるスーパースターです。羽生善治さんをはじめ、棋士の方にはNumberに昔から出ていただいておりまして、そこのハードルはあまりなかったんです。それで藤井聡太さんに出ていただきました。やはり将棋は勝負事として大変面白いし、読む物語として大変素晴らしい作品もあると思うんですけども、そうしたノンフィクションにすごく親和性が高い。そうしたことと人間にすごく魅力があるということで、もう将棋特集でいこうじゃないかということで始めたわけなんです。

速水:例えばNumberってスポーツを取り上げるときも人物に焦点を当てたり、「江夏の21球」でやったように、あの時どの選手がどう思っていたか、自分の声で語ったことをジャーナリストが取材するみたいなことがありますが、Numberが将棋をやるということは、やっぱり同じ手法でやるんだよということですか。

宇賀:そうですね。良き物語を届けるということもあるんですけれども、棋士という人間に迫るということ。あとは、勝負の裏側にあるドラマというのが「江夏の21球」に凝縮されていると思うんです。そこはもう原点として変わっていないので、それと同じ手つきでやることができたと思います。

速水:ちなみに僕もこれは絶対売り切れると思って、初日に朝一で買いに行ったんですが、どんな記事の反響が大きかったですか。

宇賀:当然ながら巻頭の藤井さんの記事の反響は多かったんですけども、我々が「ああそうか」と思ったのは、1ページのコラムなんですけれども、先崎学さんという棋士が書かれた「22時の少年 羽生と藤井が交錯した夜」ですね。これは羽生さんと藤井さんが対局をすることに関わるエピソード、秘話が明かされるような、素晴らしいエッセイでして、これが一番面白かったという声が大変多かったですね。

速水:僕もNumberが出てすぐに読んだ時に一番頭に残った記事が先崎学さんのエッセイでした。そこで何が起こったかということを掘り起こしながらも謎を残すみたいな、おそらく先崎さんはNumberを意識して書いたんじゃないかなと思いました。編集長というのは、もちろん「この特集やるよ」ということは判断をされているんですが、基本的には自分が取材に行くわけではないですよね。

宇賀:そうですね。作り手というのは編集部員がやるものですから、僕は監督する立場なんですけれども、今回将棋に詳しいデスクがNumberにいてくれたので、それでできた形もあるんです。

速水:ただ普段はスポーツをやっているわけですから、どんな記事が上がってくるんだろうという不安なんかもあったんじゃないですか。

宇賀:そうですね。だから僕は直接存じ上げない将棋のライターの方がたくさん記事を書かれていて、どんな記事が上がってくるのか、ゲラがあがるまで私はわからないんですが、実は一番最初に読んだゲラが先崎さんの書かれた記事だったので、これは素晴らしいなと思いました。もうデスクに「これすごいじゃない!」とすぐ言いましたね。


将棋の専門のライターだけでなく、スポーツのライターも記事を書いている

速水:Numberは、例えば欧州サッカーだったり、日本代表のサッカーもあるし、フィギュアスケートの回もあったり、毎回違うスポーツを特集していて、その専門的なライターの方がいますよね。例えばNumberでよく見かける藤島大さんはラグビーの方ですが、今回は将棋でも書いていたり、スポーツ系のライターと将棋系のライター両方書かれていますよね。

宇賀:今回は割と将棋の専門の方にお願いしているのが多いですね。けれども藤島さんとか、週刊文春で落合中日元監督の非常に面白い連載をやっていて、ずっとNumberでも連載をしていただいている鈴木忠平さんとか、競馬のライターをされている片山良三さん、この方は奨励会会員だった方で、将棋と競馬に詳しいのでその方に書いていただいている感じですね。

速水:今回は藤井聡太二冠が表紙ですが、今活躍をされている豊島将之さんであるとか、谷川浩司さんとか出ていますが、中でもいろいろ反響の大きかった羽生善治さんの記事なんかは鈴木忠平さんが書いているんですよね。

速水:はい。これもその当時七冠だった羽生先生に負かされている森雞二先生と森下卓先生の二人にお話を伺って、もう1回その当時の戦いを描くという、まさにスポーツノンフィクションの王道の記事だと思いますね。

速水:これはまさにNumberならではの“あの時”というものですね。ここで取り上げられているのは95年から96年、七冠を羽生善治さんが獲得する“あの時”ですが、当時僕は『1995年』という本も書いたことがあるんですけど、宇賀さんはNumberに入社したころですか。」

宇賀:文芸春秋という会社に入社してすぐにNumberに配属されたんですけれども、新人時代の95年春にNumberが羽生先生のインタビュー記事を4ページやっていました。ですから、これは「将棋もスポーツとして取り上げていいんだな」という刷り込みはありましたね。

速水:その後編集長になって将棋の特集をやるという、ちょっと運命な感じなんかもありますね。将棋の業界からの反響はいかがでしたか。

宇賀:そうですね。出ていただいた棋士の方は皆さんツイッターなんかで告知していただいたり、本当に暖かい反応を頂いています。


永瀬拓矢王座は次回の将棋特集に?

速水:その中でもにわか将棋ファン的には、なぜか永瀬拓矢王座が出ていない。そこは何かしらの理由があったんですか。

宇賀:理由は特になくて、どうしてもページが足りないので、泣く泣く永瀬先生は次回にですね、

速水:“次回”ということを今明言されましたけれども、将棋特集をまたやるんですか。

宇賀:またやります。

速水:ちなみに時期は決まってるんですか。

宇賀:まだ決まってないんですが、来年は必ずやりたいと思います。

速水:そうなると羽生さんの通算100期のタイトルというタイミングもあるし、またこれ表紙はどうするんだという話になりますね(笑)。

宇賀:竜王戦は本当に楽しみにしていて、もう一局終わっちゃったんですけど、12月までずっと続きますから、これは注視しているところです。

速水:次もやろうというのは、前回の反響で将棋はひとつのNumberの特集の柱になると考えたからでしょうか。

宇賀:一回やってこれだけの反響を頂いているのに、次はないということはないんじゃないかというところですかね。将棋がスポーツだということはあんまり意識してなかったんですけど、Numberが将棋特集をしてこれだけの反応があったので、やっぱり将棋は面白いものだということはどんどん伝えていきたい。そういう姿勢も込めてもう1回は必ずやりたいと思っています。


表紙がこの写真になった理由

速水:先ほど1000号という話もしましたが、その歴史の中ではスポーツ選手以外が表紙になるというのはこれまでもあったんですか。

宇賀:古くは石原裕次郎と加山雄三特集というのがありました。最近では今年の2月に桑田佳祐さんに表紙にご登場いただいています。両方とも似ているんですけど、スポーツと音楽という特集をやりました。

速水:Numberといえば SPORTS GRAPHIC、 写真の部分も非常に大事だと思うんですが、Numberはどういう風に写真を撮るんだろうとか、どういう写真を表紙にするんだろうみたいなことってやっぱり気になります。ちなみにこの藤井聡太二冠の表紙の写真に関してはどういう意図があったんでしょうか。

宇賀:藤井先生が非常に端正なお顔立ちをされていて、その真剣でありながらも愛らしさみたいなものが伝わってくる表情だなと思いました。いつも写真にNumberというロゴと総タイトルを置いてみるんですけれども、これはハマるなと思ったのがこの写真だったんですね。

速水:和服姿という選択肢もあったかと思うんですが。

宇賀:棋聖戦の際に非常にいい和服を着て対局されている写真があるんですけれども、それも表紙候補としてはあげたんですけれども、この写真の方がより強く読者の方に伝わるんじゃないかということで決めました。

速水:表紙はすましている表情の写真ですが、特集の扉の見開きでは、スーツなんですが非常に笑っている写真。そしてご本人の最初の特集が「天翔ける18歳」というタイトルですが、ここは和服で真剣に盤面を見ているという、その写真のチョイスだけ見ていて面白いなと思いました。編集長は写真に関しては口を出す権利はあるんですか。

宇賀:これは口出ししましたね。

速水:僕の一番好きな写真は、佐藤天彦さんと中村太地さんという、おしゃれ番長二人の縁側でのツーショットの見開きページですね。これ非常に良い写真で、スポーツって画で見て楽しめることもあるんですが、将棋もまさに画でみて十分楽しいなというところがありますね。ちなみに明後日、木曜日発売の次のNumberは何の特集でしょうか。

宇賀:ラグビー特集です。ラグビーワールドカップのベスト8になってから1年ということで、「桜の再会」というタイトルです。「桜の○○」というのをずっと続けているんですが、今年も続けてしまいました。稲垣啓太選手と堀江翔太選手の対談を表紙に、たくさんのラグビー日本代表の選手が出ていただいていますのでぜひお読みください。

速水:この二人が表紙というのもかなりベストチョイスなんじゃないかなと思いました。

宇賀:ちょっと変わった表紙ですので見ていただければ面白いかと思います。

速水:ラグビーワールドカップの興奮から1年経ったんだなという、この扉の写真もぐっとくるものがあります。話は尽きませんがまた是非遊びに来てください。『Sports Graphic Number』は隔週木曜日発売ということです。今日はNumber編集長 宇賀康之さんにお話を伺いました。ありがとうございました。

おすすめ番組

台湾東部沖地震 JFN募金

台湾東部沖地震 JFN募金

ワイドハイター presents りいちゃんの相談窓口

ワイドハイター presents りいちゃんの相談窓口

AuDeeプレミアム

AuDeeプレミアム

Expedia presents Magical Scenery Tour

Expedia presents Magical Scenery Tour

まんきつのぶらり美容放浪記~美容ワンダーランドへ小旅行

まんきつのぶらり美容放浪記~美容ワンダーランドへ小旅行

杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより

杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより

ライアン先生の勝てるビジネスメソッド~Season 2~

ライアン先生の勝てるビジネスメソッド~Season 2~

長渕剛 Bro² BLOOD

長渕剛 Bro² BLOOD

沢口愛華のわりと良い朝が来るように

沢口愛華のわりと良い朝が来るように

花宮初奈「217find!」

花宮初奈「217find!」

佐倉初のういすくり〜む

佐倉初のういすくり〜む

風とロック  スーパーアリーナへの道~I WAS BORN IN FURUSATO~

風とロック  スーパーアリーナへの道~I WAS BORN IN FURUSATO~

いとうせいこう × 倉本美津留 ワラボ

いとうせいこう × 倉本美津留 ワラボ

東京・春・音楽祭 presents 上野文化塾

東京・春・音楽祭 presents 上野文化塾

50年目のバンド・オン・ザ・ラン by 藤本国彦&佐井大紀

50年目のバンド・オン・ザ・ラン by 藤本国彦&佐井大紀

もものすけの未完成ラジオ

もものすけの未完成ラジオ

ゆみこ日和

ゆみこ日和

ECC presents @小豆の妄想トラベル行ってみた!

ECC presents @小豆の妄想トラベル行ってみた!

chay, like you~clothes save people~

chay, like you~clothes save people~

田中ちえ美のたなかのカナタ!

田中ちえ美のたなかのカナタ!

大熊和奏 朝のささやき

大熊和奏 朝のささやき

超学生の仮面を脱ぐ夜

超学生の仮面を脱ぐ夜

White Tailsの王道ラジオをやってみた!

White Tailsの王道ラジオをやってみた!

となりのカイシャに聞いてみた!supported by オリックスグループ

となりのカイシャに聞いてみた!supported by オリックスグループ

『福山雅治 福のラジオ』ゲスト・大泉洋スペシャル対談!~ノーカット版~【2023年6月17日(土)放送】

『福山雅治 福のラジオ』ゲスト・大泉洋スペシャル対談!~ノーカット版~【2023年6月17日(土)放送】

K-STAR CHART presents POP-K TOP10 Friday

K-STAR CHART presents POP-K TOP10 Friday

里山ZERO BASE コラボレーションラジオ 『Sato Note』

里山ZERO BASE コラボレーションラジオ 『Sato Note』

メットライフ生命 presents マイ マネーハック

メットライフ生命 presents マイ マネーハック

FM-NIIGATA LOTS ON

FM-NIIGATA LOTS ON

福山雅治と荘口彰久の地底人ラジオ

福山雅治と荘口彰久の地底人ラジオ