TOKYO FM開局50周年記念番組 True Stories
11月1日放送回 アーサー・ビナードさん 2週目
音楽と言葉を電波に乗せて、東京の空へ。
詩人、アーサー・ビナードさんとの池袋散歩、後篇です。
大学を卒業してすぐ、何のゆかりもないまま東京・池袋にたどり着き、そのまま暮らし始めたアーサーさん。日本語学校に通いながら、街や銭湯、そしてちょっと怪しげな看板で“生きた日本語”も学んでいきました。
今も、東口の盛り場に残る細い路地、その軒先で店員さんと気軽にコミュニケーションをとりつつ、駅の北側にある地下道を潜り抜け、西口へ。
10分ほど歩けば、昔からある住宅街の様相になっていきます。外国人のアーサーさんのみならず、詩人や画家といった様々な表現者を受け入れた池袋の街。その一角に、お気に入りの『大桃豆腐』がありました。
3代続くお豆腐屋さんの先代からは、戦後まもなくの池袋の風景や、日本の様々な習慣を聞き、現主人からは、大豆や土、ひいては自然と人間の関係など、2代続いてさまざまなことを学んでいるというアーサーさん。3代目の大桃伸夫さんは、おいしいと思う大豆を、安心して育てられる土を探し、そこで育てた豆を用いて豆腐作りをしています。お店には、その味を求めるお客さんが絶え間なく訪れていました。
大切な人の暮らす街・池袋で、アーサーさんが大きく羽ばたくきっかけとなったのが、同じく池袋に暮らした詩人、小熊秀雄を知ったことでした。戦前のアトリエ村を、“池袋モンパルナス”と名付けた彼の作品は、日本語学校のテキストに使われていたそうです。その言葉の魅力を英語で伝えたいという想いから、アーサーさんは1993年に童話『焼かれた魚』を英訳、出版します。そして自身も表現者として、この街で最初の一歩を踏み出したのでした。散歩の締めくくりは、小熊秀雄の詩『池袋風景』と、『日本的精神』に込められたものについて考えました。
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お送りした曲は
『自転車に乗って/ 高田渡』
『Grapefruit Moon/ Tom Waits』
『Piss Factory/ Patti Smith』
『The Passenger/ Iggy Pop』
『Walk On The Wild Side/ Lou Reed』
次回、11月8日は小説家、磯﨑憲一郎さんと、上野の街を散歩します。