#91『I Got Rhythm~音楽が生まれる時』 選曲リスト

今月のテーマ:「拡張する現代ジャズシーン」 (第3回:今、再び熱いUKジャズシーン) パーソナリティ:柳樂光隆

<番組のトーク・パートと選曲リスト>

 今月は、「拡張する現代ジャズシーン」と題して、現代のジャズシーンに焦点をあててお送りします。今回のテーマは「今、再び熱いUKジャズシーン」です。

― 今まで、UKのジャズと言えば、クラブ・ジャズやニュー・ジャズと呼ばれる、打ち込みっぽいジャズが話題になることが多かったり、もっと古いジャズ・ロックやプログレッシヴ・ジャズと呼ばれるような、ロックに近いジャズが紹介されることが多かったのですが、最近は、アフリカやカリブの島からの移民の2世や3世が作っている、自分たちのルーツに紐づいた新しいサウンドのジャズが評価されています。

― 2010年代の後半から、「トゥモローズ・ウォーリアーズ」という、ジャズを教える教育機関が、イギリスで話題になりました。1980年代からイギリスのジャズシーンで活躍するジャズベーシスト、ギャリー・クロスビーが設立した教育機関で、ジャマイカ移民だったギャリーが、自分と同じような境遇のカリビアンやアフリカンたちに、ジャズを演奏する機会を与えるために設立しました。
 そこから、カリビアンやアフリカンたちの新しい才能がシーンに出てきて、今、UKのジャズが活発になっています。

― まずご紹介するのは、トゥモローズ・ウォーリアーズの卒業生の中でも、今のUKのジャズシーンを代表するスター、テナーサックス奏者のヌバイア・ガルシアです。

M1「Source feat. Ms MAURICE, Cassie Kinoshi, Richie Seivwright」/ Nubya Garcia
<Spotifyリンク>※ラジオでOAしたものとヴァージョンが異なる場合があります。

 ヌバイア・ガルシアは、母親はガイアナ出身、父親はトリニダード出身の、ロンドン出身のテナーサックス奏者です。イギリスの文化と、自身の両親の文化を受け継いで、イギリスにしかないジャズを演奏しています。
 レゲエのリズムと音響的なエフェクトは、ジャマイカのダブを思い起こさせるようなサウンドです。

― 続いても、トゥモローズ・ウォーリアーズの卒業生を紹介します。テナーサックス奏者のシャバカ・ハッチングスです。彼は、「キング・シャバカ」と呼ばれていて、イギリスのシーンでリーダー的な存在になっています。

M2「They Who Must Die」/ Shabaka And The Ancestors
<Spotifyリンク>※ラジオでOAしたものとヴァージョンが異なる場合があります。

 シャバカ・ハッチングスは、イギリスのロンドンで活動していますが、彼のルーツはカリブ海のバルバドスという島にあって、住んでいたこともあります。カリビアンの彼がここで共演しているのは、すべて南アフリカのジャズミュージシャンです。
 19世紀から、南アフリカはイギリス領の一部だったこともあり、イギリスのジャズシーンに、南アフリカのジャズミュージシャンはかなりたくさんいたことが知られています。

― ちなみに、南アフリカのジャズは、今とても注目されており、ンドゥドゥーゾ・マカティニというピアニストが、南アフリカ初の、ブルーノートとの契約アーティストとしてデビューしたりもしています。

― 続いて紹介するのも、トゥモローズ・ウォーリアーズの卒業生。ドラマーのモーゼス・ボイド。

M3「Stranger Than Fiction」 / Moses Boyd
<Spotifyリンク>※ラジオでOAしたものとヴァージョンが異なる場合があります。

 モーゼス・ボイドは、父親はドミニカ、母親はジャマイカの出身という、カリビアンの2世です。彼は、カリブとアフリカの両方のサウンドを取り入れながらも、イギリスの今のトレンドに近い音作りをしています。
 今のイギリスの若者の間で盛んな”グライム”という音楽の影響をかなり受けていると思われます。

― 最後は、トゥモローズ・ウォーリアーズ以外の、今のUKのジャズミュージシャンを紹介します。若手ギタリスト、ロブ・ラフトです。

M4「Life Is The Dancer」/ Rob Luft
<Spotifyリンク>※ラジオでOAしたものとヴァージョンが異なる場合があります。

 ロブ・ラフトは、白人のギタリストで、イギリスらしく、ロックやテクノの影響を取り入れていますが、それと同時にアフリカの音楽の影響を昇華した曲を作っています。


進行:柳樂光隆(音楽評論家)
 島根・出雲生まれ。21世紀以降のジャズをまとめた、世界初のジャズ本「Jazz The New Chapter」シリーズ監修者。共著に鼎談集『100年のジャズを聴く』など。 Instagramで「24時間で消えるディスクレビュー」などを展開。現在のジャズ・シーンを俯瞰的に捉えて発信していく音楽評論家。