「選手引退後は、一般的な職を探してゼロからやり直す人のほうが多い」元プロ選手・栗村修が語る、自転車ロードレースの厳しい世界

声優界随一のサイクリスト・野島裕史が、自転車をテーマにお届けしている番組「サイクリスト・ステーション ツアー・オブ・ジャパン」。1月23日(土)〜1月26日(火)の放送では、毎年恒例・新年スペシャルゲストに、一般財団法人「日本自転車普及協会」の主幹調査役であり、国内最大級の自転車ロードレース「ツアー・オブ・ジャパン」の大会ディレクターをつとめる栗村修(くりむら・おさむ)さんが登場。野島が、栗村さんのブログ 「しゅ〜くり〜むら」から、ちょっと気になる記事について尋問する「野島裕史のブログ警察!」をお届けしました。



(左から)野島裕史、栗村修さん

野島:コンプライアンス的に厳しい昨今、栗村さんのブログの内容が公序良俗的に問題がないかどうか厳しく取り締まり、本人に事情聴取していきたいと思います!

最初に事情聴取するのは……2020年11月14日の記事から「栗村修、年金未払い疑惑!」

栗村:僕、いま真剣に自分に問いかけていたんですけど……多分これ、読み違いをされていると思います。

野島:本当ですか?

栗村:プロの自転車ロードレースの世界にも“選手会”があるのですが、引退直後は経済的に大変な時期があるので、選手会が賞金の一部を積み立てていくんです。毎年、「大体これくらいの選手が引退するだろう」という予測のもと積み立てされているのですが、2020年は、コロナのこともあって引退する選手が増えてしまったんです。賞金の金額と引退する選手のバランスが崩れると、選手に対する年金の支払いが止まってしまう構造なんです。なので、私が社会保険を滞納したとか、そういう事実は一切ございません。本当に大きな誤解ですね(苦笑)。僕は、ちゃんと払っています!

野島:無事に疑惑は晴れました。自転車のスポーツ業界にも保障制度があるんですね。

栗村:ただ、正直に言うと脆弱なんです。「年金」と聞くと、選手が辞めた後に、ずっともらえるようなイメージがあるかもしれませんけど。そんなことはないんです。選手の引退後1年間、セカンドキャリアに向かうための準備期間の資金でしかないので。スポーツによって、この辺の仕組みは変わります。当然しっかりしているスポーツもあれば、そうではないスポーツもある。自転車ロードレースの場合は、自転車選手を辞めた後、新しいビジネスを始めなきゃいけないという厳しい側面があるんです。

野島:ちなみに第2の人生は、どういった職に就く方が多いのですか?

栗村:一言でいえば、人生をゼロからやり始める感じなので、あらゆる選択肢があります。自転車ロードレース界に残って監督をしたり、テレビ解説者になったりして残れる人は本当に一握りなので、一般的な職を探してやり直す選手のほうが多いです。

野島:自転車とは、まったく関係ない仕事に就く方が多い?

栗村:はい。ただし、ヨーロッパである程度のプロ選手として、ある程度の期間活躍した人は、名声を得たり人脈もできるので、それを上手く使ってセカンドキャリアに結び付けていく選手も多いです。ただ、簡単ではないですけどね。

野島:まだまだ事情聴取を続けていきたいと思います。次に参りましょう。

2020年12月5日の記事から「栗村修、給料泥棒疑惑」。記事のなかで栗村さんは「泥棒」という言葉を多用し、「給料泥棒」にも言及。栗村さん……そんなにお金が好きなんでしょうか……。

栗村:これは、今すぐにでも釈明させていただきたいです!! 怖いな……文字って(苦笑)。

世の中には「○○泥棒」と言われる言葉はいろいろありますが、私がブログで伝えたかったことは「時間泥棒」のことなんです。「○○泥棒」という、さまざまなワードを挙げて、そこから「時間泥棒」の話を膨らませていったんです。多分、この番組の台本を書いた放送作家さんは、最初の5行くらいしか読んでないですね(苦笑)。

野島:でも昨今、新聞を読まなくなり、ネットニュースなどの見出ししか見ないような世の中になっているので、これはブログの書き方にも問題があったんじゃないですか!?

栗村:そうですね。これ反省点ですね。まずは見出しの頭に、僕のポジティブなイメージを植え付けるワードを置かないといけませんね。失敗しました。

ただ、せっかくなので時間泥棒について書いた記事の説明をさせていただくと、昨年からリモートワークが増え、世の中の仕組みが変わりました。それに伴い、「今までのリアル会議は無駄だったのでは……」という話題もよく出てきます。特に「定例会議をなくして時間を区切ってやっていこう」「ダラダラやるのではなく効率化しよう」と。

でも、人間の特性というか、ズルズルいってしまうこともあります。僕もいろんな仕事をして、いろんなチャレンジもしていくなかで最近、すごく思うことがあるんです。話が長い人は迷惑です……。

野島:ちょっと待ってください栗村さん! ご自分のことは棚に上げている感じですか(笑)?

栗村:人間、たまに棚に上げる生き物です。話は簡潔に要点をまとめて伝えることが大事ですね。

野島:リモート会議をするときは、やはり“短め”を意識していますか?

栗村:文章もそうですけど、まず結論から言うのが基本と言われていますよね。それを徹底したいんですけど、前置きの話の最中に結論が分からなくなるんです。だから長くなってしまう……。不思議なもので、40歳を過ぎてから「これ何の話だっけ?」って、自分で言う回数が増えているんですね(苦笑)。今も既に迷走状態ですけど……。

野島:ゴールが見えない状況(笑)。

栗村:だから自分に向けて「2021年は時間泥棒にならないようにしよう」というメッセージを送ったブログの記事の話でした(笑)。

野島:良かったです。これで疑惑が晴れました。ラストの疑惑は、2020年6月11日の記事から「栗村修、年齢詐称疑惑」

昨年は、ブログに若い頃の写真をアップして、整形疑惑の目を向けられた栗村さん。今回は年齢詐称疑惑。2、3歳のサバ読みならまだ許せますが、記事ではなんと、ご自分のことを「5歳」と偽っている。40歳以上もサバを読む意味が分かりません。どういうことですか?

栗村:もはや、僕の伝えたいことの2%も伝わっていないですね(苦笑)。これは、何を言ったかというと、「自分の人生をもう1回やり直したら、どうするかシリーズ」の記事です。

僕は今50歳前ですけど、例えば30歳に戻ったら選択の連続の人生です。だから究極の話として「5歳からやり直したい」と。私がメインで仕事をしている自転車ロードレースの選手発掘育成について絡めた話題なのですが、たとえば5歳の男の子が、どういうスポーツをチョイスして、どうやって体を鍛えていけば、自転車ロードレースの選手になれるのか……僕が5歳に戻って、もう一度やり直してみたい、という内容の記事でした。でも実は僕、「子どもの頃は、あまり自転車に乗らないほうがいい」という新しい概念を打ち出しているんです。

野島:どういうことですか?

栗村:自転車は競技で見た場合は、けっこう楽なんですね。ロードバイクは、すごく追い込むとキツイのですが、子どもの頃は限定的な動きで楽に乗れてしまうので、いろんなスポーツをして、フィジカルのベースを高めることが大切。その後、17、18歳くらいから本格的にロードバイクに乗ったほう、その後の伸びがいいですよ、という話です。

野島:そういう考え方もあるんですね。

栗村:なので僕が5歳だったら、若い頃にやっていたスポーツ歴を変えたほうが本当は良かったかも、という内容のブログでした。

とはいえ、人生に無駄なんて何もないんです。人生は選択の連続です。しかし、そのすべての選択に意味があって、たとえ失敗していたとしても、その先に必ず、その失敗が生み出す成功が待っているんです。なので5歳に戻ろうが、何歳に戻ろうが、皆さんの人生に失敗なんてないんです。

野島:素晴らしい一言をありがとうございます。容疑がすべて晴れたどころか、哲学者にまで昇華してしまった栗村さん……ありがとうございます!

さて、次回1月30日(土)〜2月2日(火)の「サイクリスト・ステーション ツアー・オブ・ジャパン」は、「野島裕史のサイクルコラム 2021年の野望!」をお届けします。お楽しみに!

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