これからの時代の主役となる「Z世代(10代~22歳)」と「ミレニアル世代(23歳~38歳)」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どうした性質や特徴があるのか、さらにグローバルビジネスや海外進出企業も知りたいこれからの消費動向について、ミレニアル・Z世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していく。
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今回はアジア系へのヘイトクライムを受けてニューヨークのZ世代が差別を考えるというテーマでお届けします。
<本記事を要約すると…>
●日系のLabメンバーは皆人種差別を経験している。(前回分参照)
おにぎりを食べていたら「汚い」と言われたことも。
●メアリーは中学の授業で、アジア系はモデルマイノリティであると習った。
すなわち、差別をされても文句言わずに一生懸命働いて、「いつかは良くなるよ」という考え方をしている、まさに「お手本のマイノリティ」である。
●人種差別の原因は、「互いの文化や歴史への理解が無いこと」では。
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綿谷エリナ:綿谷エリナのOn The Planet 。この時間は「NY Future Labミレニアル・Z世代研究所」です。
メアリー:Hi I’m Mary.
ヒカル:I’m Hikaru.
ケンジュ:Hi I’m Kenju.
ミクア:Hi I’m Mikua and welcome to NY Future Lab 2021.
綿谷エリナ:
今夜もニューヨーク在住のジャーナリストでミレニアル世代とZ世代評論家シェリーめぐみさんと電話が繋がっています。シェリーさん!
シェリー:
エリーさん! こんばんは~!
綿谷エリナ:
こんばんは!
シェリー:
さあ、アメリカ・ミネソタ州ミネアポリスでは、Black Lives Matter運動が燃え上がるきっかけになったあのジョージ・フロイド殺害の裁判、いま行われているんですよ。
綿谷エリナ:
はい。
シェリー:
ところが、そこのすぐ近所で、また黒人男性が警察暴力の犠牲になる事件が起きて、いまこの構造的な人種差別の問題の根深さにスポットが当たっている。そんなアメリカなんです。
で、このコーナーは、ニューヨークのミレニアル世代Z世代の若者たちが本音で座談会するNY Futurelab。今月は彼らと一緒に、「SDGs(=持続可能な開発目標)」の中で、今週も先週に引き続き人種問題をテーマにしていきたいと思います。
綿谷エリナ:
はい。
シェリー:
アメリカで大きな問題となっている、アジア系へのヘイトクライム。その理由はコロナを「チャイナウイルス」と呼び続けたこと、という話を先週して、それを受けてどういう風に彼らが現状を見ているのか。そして日本人もアジア系として暴力のターゲットになっていて、そこまでいかなくても、みんなカジュアルな差別を受けた経験があると話してくれました。いわゆる「アジア系といえば」というネガティブなステレオタイプみたいなもので、やんわりバカにするような言い方でね。
綿谷エリナ:
うん。。。
シェリー:
それでも傷つくし、後々まで残ると。
そのひとつが「スシ」と呼ばれる、と。食べ物じゃないのに、「お前、スシ」みたいに呼ばれることもあるという話をしました。
今週もその続きなのですが、今週は「文化の違いが生むステレオタイプ」について。
お母さんが日本人のケンジュはこんな経験をしています。
聞いてみてください。
綿谷エリナ:
はい。
ケンジュ:小さい時にみんなでご飯食べる時に、俺だけ違う日本食の弁当持っていくと、4歳とか5歳とか6歳くらいだから、みんな知らないじゃん?おにぎりとか。普通みんなサンドイッチとか食べてる。その中で俺だけおにぎりとか食べてると、それは何?とか、汚い、とか。
シェリー:汚い?
ケンジュ:うん、汚いって言われる。なんか匂いが違うから。
シェリー:なるほどね、海苔の匂いって、みんなあまり嗅いだ事ないから。
ヒカル:アメリカ人は海苔を食べる文化がなかったから。最近寿司が入ってきて、ようやく海苔を食べる人が増えてきたくらいで。
シェリー:そんな風に日本とかアジアの文化にはまだ馴染みがないって事だと思うけれど。そういう中でアジア系のステレオタイプってどんなものだと思う?
ケンジュ:Nerd.
シェリー:Nerdって、アジアの男のイメージはガリ勉って事?
ヒカル:マジで!?
ケンジュ:ただ勉強してるだけで、弱い…
シェリー:弱そうなんだ。
メアリー:I remember the history class like they call Asians like the model minority because they are just keep their head down and do their work. You know, even if they did experience kind of racism is here, it’s fine, just keep on working and someday it’ll be fine, kind of idea.
シェリー:メアリーは中学の授業で、アジア系はモデルマイノリティだって習ったのね。差別されても文句言わずに一生懸命働いて、「いつかは良くなるよ」っていう考え方で、お手本のマイノリティという、これは白人が都合がいいようにつけた名前なんだけどね。
綿谷エリナ:
うん!おにぎり問題、私もありますよ。あのね、海苔をチョコレートだって言われました。「何それチョコレート!」みたいな感じで。「ごはんなのにおやつ食べてる!」って言われたこともあります。
でも子どもの頃、海苔って、「海苔」以外の表現が分からないんですよ。海藻ってことも分からないし。だから、「チョコレートじゃない!」としか言えなくてすごく悔しかった記憶を今思い出しちゃいました!
シェリー:
なるほど~。でもチョコレートならね、「汚い」って言われるよりまだいいかなって気もするけどね…
綿谷エリナ:
そうそう(笑)まだね。
シェリー:
こんな風にステレオタイプがあったり、あとはアジア系は「モデル・マイノリティー」っていう言葉も出ましたけど、「お手本のマイノリティー」っていう風にアメリカでは呼ばれるんですよ。
綿谷エリナ:
なんかよく分からないですよね。
シェリー:
とにかくね、おとなしくて文句言わないと。それが「弱い」っていうイメージにつながって、ターゲットにされると。まあ身体が小さいということもありますけど、とにかくそういうのがある、と。
でね、ひとつお断りしておくと、彼女の学校は白人もアジア系も色々な人種が混ざっているダイバースな学校だったから特にこういう授業があったけれど、メアリーの学校のように中学でアジアの歴史を教えてくれるのはニューヨークでも珍しいんです。
生徒が白人だけ、黒人だけどいう学校も実は多く、そうなると全く違う状況みたいです。
まずケンジュとヒカルが通った中学高校ではアジアの歴史を教えていたかどうか聞いてみました。
ケンジュ:全然ほとんど習わない。
ヒカル:教科書に書いてあってもだいたいスキップされる。
シェリー:スキップされた。
ヒカル:1つ覚えているのは歴史の授業で、日本の江戸時代のチャプターがあったんですけど、そこはまるまるスキップされました。
シェリー:教わらないから、みんな知らないから、中国も日本もコリアも一緒になっちゃうのかね。
ミクア:From my experience, think that Chinese, mostly Chinese that only kind of Asian. So it’s kind of frustrating, So it’s kind of like I have to teach them sometimes that not every Asians are Chinese, not every Asian looks the same.
シェリー:すごくもどかしいのは、私の周りの人たちはアジア人といえば中国人だと思っている、だから時々ミクアが教えてあげなければいけない。アジア人は全員チャイニーズではなくて色々な顔をしている人がいるということを。
ケンジュ:Americans aren’t educated enough.
シェリー:アメリカ人は教育が足りない。
ヒカル:個人的には諦めることにしたんですよね。例えばアフリカ系の人たちを並べられて、この人がセネガル人だ、この人が南アフリカ系の人か、俺たち言えって言われても言えないじゃないですか。
シェリー:まあそうね。でも違うっていうことがわかっているだけでも、いいと思うけどね。でもこんなに色々な人種民族が一緒に住んでたら、それぞれの文化とか歴史の勉強するのも大変だよね。
ケンジュ:大変じゃないと思うよ。逆に同じただ白人の歴史ばかり聞いていてもつまらない。違ういろんな人の歴史を集めて、これが、全体的な歴史がわかる方が面白いと思う。ただ1つのperspectiveだけでなく。
シェリー:1つの視点ではなくて、いろんな歴史をいろんな視点で学んだ方がいいってことね。
ケンジュ:このインターネットの時代でだんだん変わってきてると思う。
シェリー:そうか学校で教わらなくても、勉強したい人はネットに行けばいいもんね。
綿谷エリナ:
でもそう考えると私の学校も同じで、アジアの歴史についてはほぼスキップしてますね。
シェリー:
そう、それでね、もう海苔も寿司もみんな知らないと。
でね、とにかくお互いの歴史や文化を知ることが大切、という話になったんですが、
結局、多くの学校では結局白人視点の白人の歴史しか教わってないんです。
アジア系アメリカ人なのにアジアの歴史は教わらず、アフリカン・アメリカンなのに黒人の歴史は教えられないことがほとんど、というのがアメリカの教育の現実でもあるんですよ。
だけどお互いの歴史を知ること、自分の歴史や文化を学ぶこと、どちらも人間としての自信にも繋がり、相手のそれを知ることは深い理解と友情につながるため非常に大事。それを理解しないまま、ますます多様化している今、さらなる歪みを生んでいるとも言えそうです。
その溝を埋めているのがインターネットで、関心がある若者はどんどん情報を取りに行って理解を深めて行くけれど、そうでない人が偏見を持って差別的なことを言ったり、暴力をふるったりということになり、その温度差が広がっている感もあります。
綿谷エリナ:
そうかもしれませんね。あとは差別であるという意識は無いけど、実は差別だった、というカジュアルな差別をどう無くしていけるか。これは課題かもしれないですよね。
シェリー:
そうですね。私たち自身も気付かない間に差別していることもあるかも知れませんよね。
綿谷エリナ:
振り返る意味も込めて、気を付けていかなければいけませんね。
シェリー:
さて、来週はアースデーがやってくることもあるので、「アメリカのZ世代が地球環境に対して今どれほどの危機感を持っているのか」聞いてみようと思います。
綿谷エリナ:
はい、どんなアップデートがあるのか、どんなものが流行っているのか、気になりますね。シェリーさん、今週もありがとうございました!
シェリー:
ありがとうございました!
綿谷エリナ:
そしてNY Future Lab、JFNアプリAuDee そしてSpotifyでもぜひチェックしてみてくださいね。次回もお楽しみに。