(左から)伊澤恵美子、山田玲司
◆伝説の漫画家・岡崎京子の元アシスタント
「ハッピー・マニア」は「FEEL YOUNG」(祥伝社)で連載された漫画作品。恋愛に猪突猛進な主人公が、理想の恋人を求めて奮闘する物語は、多くの読者の共感を得ました。
伊澤:「ハッピー・マニア」を読んだら、ちょっと“岡崎京子イズム”を感じましたね。
山田:やっぱり漫画の師匠が岡崎さんだったっていうのは大きいでしょうね。
伊澤:岡崎さんのアシスタントをされていたそうですね。恋愛至上主義というか、「人は恋をしていないと生きていけない」という想いが作品に込められていました。
◆岡崎と安野が描く“東京”の違い
山田は安野モヨコと岡崎京子の出身の違いから生まれた、作家性の差異について持論を展開しました。
山田:安野さんは1971年生まれで、東京都多摩市で育っています。多摩市はですね、東京だけれどほぼ森です。つまり、多摩市から見た「都会」は遠い存在なんです。キラキラしている。
伊澤:はいはい。
山田:東京にいながらにして都会には住んではいない、何とも言えない思いを抱えていたと思います。そんな安野さんがアシスタントに向かった先が、岡崎京子さんなんですけども、彼女の出身は下北沢です。5つ年上で、めちゃくちゃオシャレな漫画家が安野さんの師匠になるわけです。
岡崎さんの作品はね、過剰に装飾をしないんです。汚い河川敷で死体を探す物語(「リバーズ・エッジ」)を描いたりしているんですよ。あれが、もともと都会に住んでいる人の感性。あれこそが当時のオシャレだったんですよ。
伊澤:私、20代の頃は東京に憧れていたから、岡崎京子さんの先品をすごく読んでいました(笑)。
◆夫・庵野秀明との出会いが安野の内面に変化を与えた
山田は「ハッピー・マニア」のタイトルに「マニア」が付いている理由を考察していきます。
山田:主人公は自分のことを「幸せになるマニア」だと叫んでいるんですね。当時ね、オタクとマニアで言葉がわかれた時代だったんですよ。
伊澤:はいはいはい。
山田:何かに執着して詳しいのは「マニア」であって「オタク」ではないよって宣言。だけどね、彼女は実際、オタクなんですよ。そんななか、堂々とオタクを貫いている庵野秀明(現:安野モヨコの夫)と出会うことで(オタクを拒絶する呪いから)解放されるんです。それを描いたのが、安野モヨコの「監督不行届」(祥伝社)なわけで。
伊澤:ああ~!
山田:この2人、めちゃくちゃ面白いです。
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次回の5月2日(日)配信分は、「ハッピー・マニア」の先を描いた「後ハッピー・マニア」を掘り下げます。詳しくは音声配信サービス「AuDee(オーディー)」でチェックしてください!
<番組概要>
番組名:山田玲司とバグラビッツ
配信日時:日曜22:00配信
パーソナリティ:山田玲司、伊澤恵美子
番組Webサイト:
https://audee.jp/program/show/100000214