野島裕史、栗村修さん
◆大会開催で「1つでも多くの笑顔を」
野島:栗村さんが大会ディレクターをつとめている「2021ツアー・オブ・ジャパン」は、5月28日(金)からの3日間、全3ステージで開催予定です。今回、コロナ禍以降、日本で開催される初めてのUCI(国際自転車競技連合)公認レースとなりますが、あらためて、コロナをきっかけに世界の自転車レースのあり方についていろいろな意味で転換期にきていると感じますか?
栗村:そうですね。昨年は、世界中で多くのレースが開催中止、延期となってしまったので、今後レースの仕組みを変えていかないといけないという意識を、関係者全員に植え付けられた感じはありますね。
野島:エンタメ化したオンライン観戦の導入など、新たなシステムのことも考えますか?
栗村:昨年、バーチャルレースが世界的にかなり認知され、加速度が増しました。インドアトレーナーという室内で練習する機器が発達していたので、これにバーチャル空間がセットになって一気に広まったところがありますね。
野島:はい。
栗村:あと、自転車レースのいいところは、リアルで人が接して楽しむという旅の要素が強いんですけど、コロナ禍における自転車レースでは、いい面が逆にウイークポイントになってしまっているので、オンラインを活用した新たなエンタメ化は、今後一番考えていかなければいけないところですね。
野島:バーチャルの自転車って、体力の使い方や体の使い方などで言うと、ほかのスポーツと比べて圧倒的にリアルさが強いですよね?
栗村:そうですね。ほかのスポーツでは、コントローラーを使って戦うeスポーツ専門のプロがいますけど、自転車のバーチャルレースはリアルのプロ選手が(ペダルを)漕ぐと本当に速いという。
野島:そうなんですよね! そこがほかのeスポーツと違って面白いところだなと個人的に思っています。
栗村:昨年、さっそく世界選手権が(バーチャルレースで)開催されまして。今後も自転車レースはおそらくリアルとバーチャルの中間というか、うまく融合しながら新しい領域に入っていくんじゃないかと思います。
野島:(バーチャルレースも)これからどんどん盛んに発展していくでしょうね。
栗村:ただ、自転車レース解説者としては悩みがありまして……昨年、バーチャルの「ツール・ド・フランス」が開催されたんですけど、選手の顔が全員同じでした(苦笑)。
野島:(笑)。それはコンピュータが発達してほしいですね。
栗村:AIの解説者が生まれるか、解説者は生身の人間で、バーチャル空間にいる選手、いわゆるアバターがより人間に近くなるか、どっちが勝つかですよね。もしAIの解説者が出てきたら勝てない感じがしますね。
野島:むしろバーチャル空間であれば、(選手の)服装はなんでもいいですよね?
栗村:はい、CGなので。
野島:自分の好きなコスプレができるようにすれば、もっとわかりやすくなるかもしれませんね。
栗村:そのアイデアはいただきたいですね。一応、顔の雰囲気や体の大きさは何パターンかバリエーションがあるらしいんですけど、全くわからなかったですね(苦笑)。
野島:空撮だとわけわかんないですよね(笑)。
栗村:僕は、解説者としての強みがいくつかあって。そのうちの1つが、バードアイと言われているんですけど、リアルの空撮で米粒みたいな状態でも選手名を当てる。解説者歴20年、それで食いつないできたところがあるのでね(笑)。
野島:いろいろな技で食いつないでいるんですね(笑)。最後にあらためて、「2021ツアー・オブ・ジャパン」大会ディレクターとしての意気込みをお願いします。
栗村:コロナ禍以降、日本で最初のUCI公認レースとなります。まだまだ予断を許さない状況にありますけど、まずは安全第一で、自転車レースを利用した町おこしと言いますか、日本を元気にするスポーツとして、この「ツアー・オブ・ジャパン」に取り組んでいますので、新時代の新しい自転車レース「ツアー・オブ・ジャパン」を開催し、1つでも多くの笑顔をつくり出したいと思います!
次回5月8日(土)〜5月11日(火)の「サイクリスト・ステーション ツアー・オブ・ジャパン」は、野島裕史のサイクルコラム「カングーのある生活」をお届けします。お楽しみに!