「涙があふれてくるような感覚でした…」コロナ禍で開催した「2021ツアー・オブ・ジャパン」を大会ディレクター栗村修&野島裕史が振り返る

声優界随一のサイクリスト・野島裕史が、自転車をテーマにお届けしているTOKYO FMの番組「サイクリスト・ステーション ツアー・オブ・ジャパン」。7月1日(木)〜7月6日(火)の放送は、一般財団法人「日本自転車普及協会」の主幹調査役で、国内最大規模の自転車ロードレース「ツアー・オブ・ジャパン」の大会ディレクターをつとめる栗村修さんがゲストとして登場。特別企画「コロナ禍で無事開催! ツアーオブジャパン・スペシャル・特別編」と題し、5月28日(金)~30日(日)の3日間にわたって開催された日本最大級のUCI(国際自転車競技連合)公認ステージレース「2021ツアー・オブ・ジャパン」について、たっぷりと語ってくれました。



(左から)野島裕史、栗村修さん



◆コロナ禍での大会開催を無事に終えて…
野島:無事に大会が終了し、あらためて、いまの心境はいかがですか?

栗村:まずは、ほっとしました。大会が終了したばかりなので、まだ解放されたというところまでは到達していませんけど、自分で認識していたプレッシャー、責任よりもさらに大きな重圧がのしかかっていたので、これまで大会ディレクターとして関わってきた大会のなかでも一番ほっとしたかな、という心境ですね。

野島:大会が終わった直後の(栗村さんの)様子は、ちょっと話しかけられないような状況で。終わった直後の状況は覚えていらっしゃいますか?

栗村:コロナ禍での開催でしたので、2週間ぐらい経過してみないと本当に安全に終わったかどうか判別できないので、いきなり解放感はなかったんですけど、お恥ずかしい話、涙があふれてくるような感じでした。それは、感動でもないし、悔しさや悲しみでもない、違う感情で涙があふれてくるような感覚でした。それはおそらくプレッシャーからの解放だったのかもしれません。

野島:いままで味わったことのない感情での涙ということだったんですね。

栗村:そうですね。自分の人生のなかで、泣くことはありますけど、泣く要因がなかなか経験できないものでしたね。

野島:相当張り詰めていたものが、少しほころんだことからの涙だったのかもしれませんね。

栗村:やはり感謝の気持ちもありました。公共型のスポーツなので、まずは(コースの)周辺住民のみなさんのご協力、こういう大変ななかでレースをやらせていただけたことへのご理解に対する感謝は、本当に語り切れないものがあります。あとは、大変な準備を支えてくださったスタッフのみなさんなど、挙げ始めるとお礼の言葉だけで尺が1時間ぐらいかかっちゃうので(笑)。代表的なところだけになってしまいますけど、本当に感謝しています。

野島:今回、例年の8日間、8ステージから“3日間、3ステージ”、そして、国内チームのみ参加と規模を濃縮しての開催となりました。あらためて、コロナ禍での準備は大変だったと思いますが、具体的にどんな点が大変だったでしょうか?

栗村:やはりコロナ禍ということに直結しますけど、感染症対策ですね。コロナ禍以降、UCI(国際自転車競技連合)がレースバブルという方式でレースを開催するためのガイドラインを定めていまして、大会事務局含め、いままで国内で実施したことのないゼロから1を作るような作業でした。そういった意味では、なにが正解かわからないというところでの難しさや大変さがありましたね。

野島:はい。

栗村:あとはレース的な観点から言うと、8日間、8ステージから3日間、3ステージになったんですけど、(5月28日(金)の)富士山ステージと(5月29日(土)の)相模原ステージは、広域で民家のある地域でおこなう一般公道型レースを新設しましたので、新たに大規模な2つのレースを作ったのに等しいですから、そこの準備も、地元の実行委員会を含め、かなり負担がかかったのではないかと思います。

◆大会ディレクター・栗村修が今大会を総括!
野島:大会に目を向けると、東京オリンピック自転車ロードレースの日本代表に内定している宇都宮ブリッツェンの増田成幸(ますだ・なりゆき)選手(37歳)が日本人選手としては2004年以来となる個人総合優勝を果たし、幕を閉じました。大会自体を振り返ってみていかがですか?

栗村:今年は、入国制限などの都合で、海外チームを招聘できないこともあり、国内チームのみでの開催となりましたので、大会のグレードを下げるといったこともあったのですが、蓋を開けてみると、若い選手たちの活躍が目立ちましたね。

野島:はい。

栗村:海外チームの出場がないなかでしたけど、日本代表に内定している増田選手が勝ってくれたのは、すごく大きなトピックだったと思います。

野島:最終戦(5月30日(日))の東京ステージは、弱虫ペダルサイクリングチームの川野碧己(かわの・あおき)選手(19歳)が優勝。さらに 留目夕陽(とどめ・ゆうひ)選手(18歳)が個人総合10位で新人賞を獲得するなど、若い世代の活躍が目立った大会でしたね。

栗村:そうですね。本来であれば、弱虫ペダルサイクリングチームは、UCIの登録チームではないので、「ツアー・オブ・ジャパン」には出場できなかったんですけど、今大会はグレードが変わったことで、特別に招待させていただいたなかでの優勝でした。来年以降正常化してくると、彼の優勝、チームとしての優勝は見られないかもしれません。

野島:はい。

栗村:「2021ツアー・オブ・ジャパン」は、未来への扉を開くという意味合いを持っていたんですけど、川野選手と留目選手という10代の2人が「ツアー・オブ・ジャパン」で4つあるうちの特別賞の2つを獲ったのは、そこに比例するような活躍ぶりだったと思います。

◆今大会で得たもの、学んだこと
野島:早くも来年の話で恐縮なのですが……現時点で、次回開催に向けて栗村さんご自身のお気持ちはいかがでしょうか?

栗村:まずは、8日間、8ステージの通常開催に戻したいです。それは我々の努力だけではどうしようもできないですけど、コロナが収束していくことが、通常開催するために必要なことですから、なんとかそうなってほしいと願うばかりです。

野島:はい。

栗村:今大会で得たもの、学んだことという意味では、難しい状況に置かれたときに、しっかりと思いを持って、しっかりとした準備をおこなって、そしてこういう大変なときだからこそ、みなさんへの感謝の気持ちを、本気で心の中心に持って取り組むと、物事が好転したり、閉まっている扉が開いたりするんだなと感じました。大変なときこそ、感謝の気持ちを持って必死で取り組むことが大事なんだと痛感しましたね。

野島:栗村さん自身があらためて感じた「ツアー・オブ・ジャパン」の楽しさ、魅力とは?

栗村:自転車レースは、わかりやすく言うと一般公道で催されるお祭りなんですよね。レース自体はまだ完全復帰はしていませんが、あらためて、今大会を開催したことで、実際に選手たちが体を動かして競争する姿を通して、そこから生まれるエネルギーや楽しさ、そこが自転車レース、「ツアー・オブ・ジャパン」、そしてスポーツ全体の魅力だなと感じました。

次回7月8日(土)〜7月13日(火)の「サイクリスト・ステーション ツアー・オブ・ジャパン」も、引き続き、栗村修さんをゲストにお迎えしてリスナーからのメールにお答えします!

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