声優界随一のサイクリスト・野島裕史が、自転車をテーマにお届けしている番組「サイクリスト・ステーション ツアー・オブ・ジャパン」。8月5日(木)〜8月10日(火)の放送は、野島裕史のサイクルコラム「沿道スポーツ事件簿」をお届けしました。
パーソナリティの野島裕史
◆野島裕史もビックリの「沿道スポーツ事件簿」
6月26日(土)に開幕した「ツール・ド・フランス2021」で、ニュースやワイドショーなどでも取り上げられた騒然とする出来事が起こりました。
沿道で選手たちを応援していた観客のなかの1人の女性が道路に突き出て、掲げていたプラカードに選手が衝突してしまい転倒。後続選手も続々と落車し、多くの選手が負傷する事態となりました。
その原因をつくってしまった女性は現場から立ち去りましたが、その後逮捕。世間から非難の声を浴びました。大会主催者は事態を鎮静化させるため、女性への訴えを取り下げる一方で、「大会を観に来るなら、子どもやペットをしっかり離さず、不注意に道路を横断しないでほしい。なにより選手たちを大事にしてほしい。テレビの生中継に値するのは選手たちだ」とコメントしています。
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野島:要は、(大会の)主役は選手たちということ。それにしても、この事故は衝撃的でしたよね。自転車レースやマラソンなどの沿道スポーツは、どれだけマナーを訴えかけてもこうした事故や事件がなくならないということで、今回は過去の例を挙げつつ、いろいろと反省していきたいと思います。
まず、1904年の「ツール・ド・フランス」での事件を紹介します。上位4人の選手が列車の使用などの不正行為をはたらき、レース後に失格という大波乱。そのほかにも不可解な事件が続発……優勝したコルネ選手は、レース中にチキンを食べた直後、突如吐き気を訴えました。当時のルールでは、知らない人から食料を受け取ったり、自転車を借りたりしてもOK。したがって、何者かが薬を飲ませるなどした可能性も否定できないようです。
そして、レース中にかゆみを引き起こす薬をまき散らすなどの事件も頻発したそうです。さらに、スタート前にブレーキレバーが破壊されていたり、フレームにノコギリで切れ込みが入れられていたり……これはもう殺人未遂という感じですよね。(当時は)こういった事件が1回や2回だけではなかったそうです。
そのほか、ファンや選手自身が“釘をばらまいたのでは?”と思うほどパンクも多発。さらには、ひいきの選手を援護するために、フーリガンもどきの集団がほかの選手たちに襲いかかり、審判がピストルで威嚇したとの記録もあると……。
さすがは100年以上前となると、起こった出来事がすごいですね。「ツール・ド・フランス」って、歴史のある大会なんだなと思いますよね。
次に紹介するのは、「ツール・ド・フランス2013」での出来事。イギリスのマーク・カヴェンディッシュ選手が路上の観客に尿を浴びせられる騒動がありました。前日のステージのゴール直前で、オランダのトム・フェーレルス選手と接触した際、カヴェンディッシュ選手の対応に怒った観客による仕打ちと見られています。これはひどいですね……。
今年4月にベルギーで開催された「ツール・デ・フランドル(ロンド・バン・ブラーンデレン2021)」では、ポイ捨てを減らすために導入された新ルールに違反したスイスのミハエル・シャー選手が失格処分に。沿道に観客はほとんどいなかったそうですが、少数の人がいる方向に従来のやり方で空のボトルを投げた行為が、新ルールに抵触しました。
自転車ロードレースでは、(選手が投げたボトルを)ファンが拾って持って帰るのも恒例で、わりと当たり前の光景なんですけど、ベルギーでは、こういった水分補給のためのボトルを投げ捨ててはいけないことになっているんですね。
沿道以外では、2017年の「ブエルタ・ア・エスパーニャ」に参戦するアイルランドのアクアブルースポートのチームバスが、スペイン南部で放火被害に遭遇するという事件もありました。
ヨーロッパでは自転車ロードレースがすごく盛んで、熱いスポーツの1つなので、こういったいろいろなトラブルが起きるんですね~。でも、起きないに越したことはないので、みなさんもルールやマナーをしっかり守って、沿道スポーツを観戦いただきたいです。
次回8月12日(木)〜8月17日(火)の「サイクリスト・ステーション ツアー・オブ・ジャパン」は、野島裕史のサイクルコラム「自転車ロードレースを振り返って」をお届けします。どうぞお楽しみに!