2021.8.18 ~ ゲスト:野口健さん③

第360回 先週から引き続き、ゲストはアルピニスト:野口健さん。 *今週も松室はお休み中...杏子が1人でお話伺っております。


(撮影時のみマスクを外しています)

今週は、野口さんが行った学校設立のプロジェクトのお話から。

学校設立のきっかけは、
2006年のネパールにあるマナスル山の麓にある
サマ村での出来事でした。

「村のみんなの夢ってなに?って何気なく聞いたら、
 僕と長年共にしているシェルパが、『その質問は意味がない』
 と言うんです。やっぱり、子供もキョトンとしていてね。
 サマ村で生まれ、そこで外の世界を知らずに生きて亡くなり、
 子供は労働力として働くんです。夢という概念がないんですよ。」

そこで、本から外の情報や新たな夢を得られるように、と考え
まずは読み書きを教える施設=学校を設立しようと考えたそう。
ただ最初、”子供は労働力” とされる村からは反発....
そこから、3年かけ学校設立を成し遂げます。

「いきなり学校作っても生徒が来ないと意味がないので、
 最初は、村の清掃から始めました。
 ゴミがそこらじゅうにあるし、川で排泄するので水は汚いです。
 そこで3年間は掃除して、環境を整えて喜ばれてから
 『実は学校を〜』って話したら聞いてもらえて、
 乗り気になってくれました。」

2010年に完成したサマ村の学校は、
今では村中の子供が通い、たくさん喜ばれているそうです。
そこから、ランドセルの寄付も進み、
数多くの支援の輪がひろがりました。

「事務所がすごい数のランドセルで大変なことになりますけど(笑)
 日本の子供達が使ってるランドセルって綺麗なんですよね!
 それを持っていくと、学校の先生や大人が驚いてくれるし、
 子供はランドセルを大事にして使ってくれるんです。
 床にはおかない、横に置いて一緒に授業受けてる。」

ただ、学校生活が進むにつれ、新たにカーストの問題で、
一部の生徒が教室に入れないという課題も。

「偽善的な事、言います。
 生徒たちが自分の子供のように感じるんですよね。
 親目線になっていて、『自分の子供が教室に入れない』と。」

この問題を解決するために村人を集めるも、
カーストに関してはタブーであり、
長年築かれ根付いた事を変える事は出来ない、と
断られてしまったそう。

でも、諦めないのが野口さんです!

「僕は大変な思いをして学校を作ったんだから、
 その思いに応えてくれ、と村人に話しました(笑)
 そこで、最後の切り札。
 カーストで子供が入れないのはやめてくれと、
 それが無くならないなら、全部手を引くぞ!と、逆ギレですよね!
 その翌年行ったら、全員教室にいるんですよ〜
 僕がタブーに触れた事で村人たちが話し合って、
 やってみようって事で、変わったんですよ」

もともと生徒間では差別がなく、ただの習慣だったため、
今では全員で同じ教室に入り、
手を取り合い踊るようになったのだとか。


この経験から、昨年にポカラという町で
子供の教育に尽力される校長先生と一緒に、
"カーストの低く貧しい生徒たち"のための学校を設立されました。



明るい校舎、大きな人工芝の校庭、綺麗な図書館...
さらには、日本の学校教育も取り入れています。

「トイレや廊下、教室を生徒に清掃させます。
 上履きの導入、たくさんの手洗い場、
 体育や音楽の授業も導入しました。
 そしたら、日本式の教育がネパールの教育を変えると
 現地で報道されて、嬉しかったですね。」



最後の質問!
野口さんの人生のspice は...『生きたいと感じる冒険』

「人間は死を強く感じると、生きたいと思うんですよ。
 日頃なかなか、生きたい、とは思わないですよね。
 あ、そういう意味じゃスパイスですよ!
 エベレストは、まさにスパイス!
 でもエベレストは帰りたくない〜(笑)」

娘さんである 野口絵子さんに関する情報は
公式webサイトをチェックしてください!
https://www.noguchi-eko.com



M1. 朱夏色 / 長澤知之 
M2. Menino / Alexandre Andrés, Rafael Martini, Joana Queiroz & Gustavo Amaral