アメリカZ世代への「9.11教育」が十分でない理由 9/8 NY Future Lab

      

これからの時代の主役となる「Z世代(10代~22歳)」と「ミレニアル世代(23歳~38歳)」にフォーカス。アメリカの若者たちが普段何を考え、何に影響を受け、どうした性質や特徴があるのか、さらにグローバルビジネスや海外進出企業も知りたいこれからの消費動向について、ミレニアル・Z世代評論家のシェリーめぐみが座談会形式で彼ら、彼女らの本音を引き出していく。



☆シェリーさんのPresident記事「「9.11ってなに?」アメリカで同時多発テロを知らない若者がどんどん増える深刻な理由」こちらから!

今回のテーマはアメリカZ世代にとっての9.11とは


<本記事を要約すると…>

●今年は9.11から20年の節目の年。ただ、911関連のイベントは最小限しか行われない。シェリーさんの感覚では「20年という長い月日の中で風化しつつある」。

●学校教育において「911」は扱い方がまちまち。先生が体験談を話す授業、ドキュメンタリー映画を見せる授業を行う学校がある一方で、当日に黙とうするだけ、という学校もあるのが実態。全米50州のうち、911に関する教育を義務付けている州は14州。

●911に関する教育が十分でない理由はいくつか考えられるが、「終わっていない歴史」であることが要因として大きい。幼い子供にトラウマを植え付けないよう配慮している、遺族への配慮、なども理由として考えられる。悲劇的な面だけへのクローズアップにならないように、あるいは愛国心に偏った教育になってしまわないように、という配慮もあるかもしれない。



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綿谷エリナ:綿谷エリナのOn The Planet 。この時間は「NY Future Labミレニアル・Z世代研究所」です。



ヒカル:Hi I’m Hikaru.

メアリー:Hi I’m Mary.

ケンジュ : Hi I’m Kenju

ミクア: Hi I’m Mikua, welcome to New York Future Lab 2021.



綿谷エリナ:
今夜もニューヨーク在住のジャーナリストでミレニアル世代とZ世代評論家・シェリーめぐみさんと電話が繋がっています。シェリーさん!

シェリー:
エリーさん! こんばんは~!

綿谷エリナ:
こんばんは!

シェリー:
今週土曜日は、"911"から20年になるんですよ。

綿谷エリナ:
もう20年なんですよね!

シェリー:
信じられないですよね。

綿谷エリナ:
20年って、私すごく「長い20年だったな」って気もするんです。というのも当時15歳だったんです、私。だからまだ子供だったっていう、だからかもしれないですけど。

シェリー:
そうですよね。大人だった私から見ても、「短いようでやっぱりすごく長かったな」って感じもするんです。それも含めて今日お話していきます。

一応情報をお伝えしておくと、恒例の追悼式が"グランドゼロ"で、2年ぶりに遺族と関係者だけを集めて開催されます。バイデン大統領はそれを含めすべての式典に参加します。でもね、NY、それ以外は何もないんです。大きなイベントは一切ないんです。コロナもありますけど、20周年だから何かあっても良さそうな気もしますけど、無いんです。やっぱりこの長い20年の間でかなり風化したな、という感じはしますよね。当事国であるアメリカで、ですよ。

綿谷エリナ:
うん…。

シェリー:
ところが最近アフガニスタンでの状況がね、大変大きく報道されて、ここで「あ、終わってなかったんだ!?」って気が付いたくらいの感覚なんだと思うんです。これって何なんだろう?って思いますよね。平和ボケしたのかな?とも思うし、逆にコロナやBLM、学校での銃撃などいろんなことがありすぎて忘れられてしまったという。
今新たなテロの危機も語られている中で、これから変わっていくのかもしれません。いきなり長く話してしまいましたが…(笑)

綿谷エリナ:
(笑)

シェリー:
この20年振り返ってみるとそんな感じです。

綿谷エリナ:
NYで生まれ育ったラボのメンバーからするとどうなんですか?

シェリー:
昨日もちょっと話したのですが、体験してない若者からすると「歴史」なんですよね。このラボのメンバーで最年長のヒカルは当時5才、メアリーは3才、ケンジュは2才、ミクアは生まれてもいなかったんです。

綿谷エリナ:
そうか・・・じゃあ感覚は全然違うんですね。私にとってはベルリンの壁が崩壊した時くらいの感覚なのかな?と思っていました。

シェリー:
ああ、そうかもしれないですね。まず生まれていた3人に、当時の記憶があるのか聞いてみました。まずメアリーから。


メアリー:I kind of think I remember when it happened because my mom lost her job. They were watching TV a lot more like in terms of like news and it was like a little bit scary-ish.

シェリー:なんとなく記憶があるのは911のあと母が失業して家にいたこと。両親が見ていたテレビのニュースで、なんとなく怖いなと感じたことを覚えている。

ケンジュ:ただ、Only thing I can remember was like sense of fear and also like 匂いが、smells like very specific smoke smell.

シェリー:2歳だったケンジュが覚えているのは、怖いという感覚、そして町中に漂っていた独特の煙の匂い。覚えているものなんですね。ヒカルはその時5歳、日本に住んでたの?

ヒカル:その年の冬に俺アメリカに来ているんですよ。3ヶ月くらい滞在したと思うんですけど。そこらへんの記憶は結構鮮明で。うまい表現が思いつかないんですけれど。普通ではないなという。ニュースとかでもまだ流れていたと思いますし。



綿谷エリナ:
2才、3才でも覚えているんですね。

シェリー:
怖いという感覚はちっちゃくても分かるんですね。
そしてこの煙の匂いって言うのは、私たちニューヨーカーにとっては忘れられないです。ずっと燃えてましたから。今でも匂うような気もします。

彼らはそういう体験があっても、それが何なのかは後から知ったわけなのですが、「911」についてアメリカの学校ではどれくらい教えられているのか聞いてみました。

綿谷エリナ:
何の授業で教えるんですかね?歴史じゃないし社会とか政治とか?

シェリー:
アメリカって歴史って言う授業がないらしいんです。全部「社会」の授業に入ってるようなんです。
それで学ぶわけなのですが、まずはまだ生まれていなかったミクアから話を聞いてみました。

ミクア:My teachers. Like sharing their experience of that day. She works from the top floor and she can just see everything. It was like everybody is like panicking. Trying to figure out what’s going on.

シェリー:学校の先生からそれぞれの過去の体験談を聞かされたんですね。アートの先生はビルの最上階から事件の全てを目撃して、人々がパニックして何が起きているのか必死で知ろうとしている様子などを話してくれたそうです。そういう話聞いてミクアどう感じた?

ミクア:It’s pretty scary to experience. Just watching the documentaries. They used to show us like videos in school. People jumped out the buildings. You can hear the people crashing into the cars in the street. That’s traumatizing. It’s scary so I just imagine like being there and living their experiences.

シェリー:怖かった。特に授業で見たドキュメンタリー映画で、人が窓から飛び降りて、止めてあった車にぶつかる音まで聞こえた。それだけでトラウマになってしまいそうといか、実際にその場にいたらどれほど怖かっただろうと思った。

ケンジュ:I don’t really remember that the teachers really talking about it at school. I guess we take like a moment of silence.

シェリー:ケンジュはミクアのように学校で色々教わった記憶がない。911当日に黙祷したのは覚えているけれど。

ヒカル:その当日のその日だけ、その事について習うみたいな。そんなに細かい詳細までは習わないですし。

メアリー:I think I remember in elementary school we went to the 911 Museum. I think in high school when we were learning American racism that was experienced afterwards or something. But it never went to super detail.

シェリー:メアリーが覚えているのは、小学校で911ミュージアムに社会科見学に行ったこと。そして高校でイスラム教徒への差別の問題について教わったこと。でもそんなに詳しいことは教わってない。



綿谷エリナ:
じゃあまだまだ科目の中に「こうしましょう」ということが決まっていないんですね。

シェリー:
みな教わったことがバラバラなんですね。特に先生が体験談を話すというのが一番大きい。あとはドキュメンタリー映画を見たり、という、そういうのはちゃんと教えてもらっている方で、「黙とうしたことくらいしか記憶がない」みたいな人も。本当にバラバラ。これが実態なのですが、内容は先生の判断に任されているんです。これが自由でクリエイティブな学びの場を生むっていうのもあるんだけど、「911」については教えることを義務付けている州もあるんです。ただ、義務付けているのは50州のうち14州だけというデータも。

綿谷エリナ:
1/4だけなんですね。

シェリー:
なんで教えないのか?理由を皆に聞いてみたんですけど、若いうちに教えることでトラウマになるのでは?とか、遺族がいることも考えて?とか。あと日本もそうだと思うけど現代史は最後に教わると。あと「911」という日が、まだ夏休み期間中であることもあるんです。

綿谷エリナ:
ああ、そうか。

シェリー:
何より一番大きいのが、「終わっていない歴史」であるということ。

綿谷エリナ:
そうですね。

シェリー:
だからやっぱりそれを教えるのが難しい。そうすると、どうしても事件の悲劇的な面や愛国心のようなものに偏りがちで、そういう批判もあるんです。

でも今世界で起こってることの多くは「911」を発端にしているからこれがわからない事には世界が理解できない、ということもあるし、やはり同じ間違いを犯さないために歴史を知っていくことは必要なのかなと。

綿谷エリナ:
まだ「歴史」になっていないというところが難しい、、だから教えにくいということもあると思うのですが、いまアフガニスタンの情勢はどんどん変わっているところだから、それとどうつながっていくか教える、あるいは「考えてみよう」っていう機会はますます大事になってくるような気もしますよね。

シェリー:
そうですね。ラボの皆がアフガニスタン情勢についてどう思っているのかも聞いてあるので、機会があればお伝えします。

綿谷エリナ:
気になる!是非是非!シェリーさん、今週もありがとうございました!!!

シェリー:
ありがとうございました!

綿谷エリナ:
そしてNY Future Lab、JFNアプリAuDee そしてSpotifyでもぜひチェックしてみてくださいね。次回もお楽しみに。

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