大手電機メーカー「パナソニック」が“自転車産業”に力を入れている理由は? 自転車声優・野島裕史、企業の軌跡に「謎が解けました」

声優界随一のサイクリスト・野島裕史が、自転車をテーマにお届けしている番組「サイクリスト・ステーション ツアー・オブ・ジャパン」。12月16日(木)〜12月21日(火)の放送は、サイクル・ヒストリー「パナソニックヒストリー」をお届けしました。



「Panasonic」の頭文字「P」を手で表現する野島裕史




◆パナソニックが“自転車産業”に参入した理由は?
野島:このコーナーでは、自転車にまつわるさまざまなヒストリーを紐解きながら、サイクル知識の心肺機能を高めていきます。

大阪府に本社を置くパナソニック、旧社名は松下電器産業株式会社。言わずと知れた日本を代表する国内総合電機メーカーです。創業者は松下幸之助さん。

パナソニックは電気器具メーカーですが、創業者の幸之助さんは自転車店の丁稚奉公から職業経験を始めているため自転車に思い入れがあり、自転車産業に参入しています。

幸之助さんは1894年、8人兄弟の末っ子として和歌山で生まれ、旧家の裕福な家庭で育ちますが、1899 年頃に父親が米相場に失敗して破産。小学4年生で学業を断念し、大阪の自転車店に丁稚奉公に出ることになります。

6年間の奉公を経て、1910年に大阪電灯(現・関西電力)に見習工として入社。入社の理由について、幸之助さんは「当時大阪市が計画中の電車ができたら、今に自転車の需要は減り、反対に電気事業は将来有望になるだろう」と語っており、弱冠16 歳ながらしっかりと電気の未来を見ていたのです。

大阪電灯時代は、異例のスピードで昇進し、通天閣の電灯工事などさまざまな工事を担当。 しかし、自分のやりたいことと会社側とで意見が合わず、1917年に大阪電灯を23歳で退職して独立。2畳あまりの小さな工場から事業をスタートします。

その後、電池寿命が従来の10倍という自転車ランプのヒットなどで順調に業績を伸ばし、この頃から、“国民の必需品”という意味を込めて「ナショナル」という商標を使用し始めます。

昭和に入ってから、世界恐慌や第二次世界大戦を乗り越え、日本経済が好景気を迎えた1950年代。白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫、いわゆる“三種の神器”が売れ、家電ブームが到来。その勢いに乗り、大戦中に途絶えていた自転車向け事業も復活!

1951年には自転車業界への復帰を宣言し、販売店網を組織。1952年には、ナショナル自転車工業株式会社(現・パナソニックサイクルテック)を創立し、自転車の生産をスタートさせました。

その後、“電気屋らしい自転車を”と、1980年に日本初の電気自転車「エレクトリック・サイクル」を開発。83歳の幸之助さんが試乗し、高齢者でも乗れることを実証。現在、市場を席巻している電動アシスト自転車の先駆けとなる製品となりました。

このようにパナソニックは、幸之助さんの思いを引き継いで、今も自転車を作り続けています。一方、スポーツサイクルの分野でも、トップブランドのパナソニック。ロードレースの分野では1980年代から90年代にオランダを本拠地とする「Panasonic チーム」をスポンサードし、フレームなどの機材を供給。チームは「ツール・ド・フランス」にも出場する強豪で、特にチームタイムトライアルが強く、ステージ優勝も果たしています。

また、日本国内のフレーム・完成車メーカーとしては、初めてマイヨ・ジョーヌ(個人総合成績1 位の選手に与えられる黄色のリーダージャージ)を獲得しています。

ということで、パナソニックの自転車にこんな歴史があるとは知りませんでした。今は電動アシスト自転車でとても有名ですけど、僕は自転車マニアなので、自転車フレームメーカーとしてもパナソニックが好きで。

でも、パナソニックは電機メーカーなのに、なぜ自転車を作っていたんだろうと疑問に思っていたのですが、幸之助さんは自転車店で6年間も奉公をしていたということで、ここで初めて謎が解けました。自転車に対する思いがそこで強まったんですね。

現在もパナソニック サイクルテックという形で残っていて、比較的リーズナブルな価格でクロモリもチタンもオーダーフレームを作ってくれます。

僕の通っている美容室の美容師さんが、「自転車に乗りたいんですよね。でもみんなが乗っているロードバイクじゃ嫌だ。“知る人ぞ知る”みたいなロードバイクなんだけど、比較的リーズナブルな自転車がいい」と言われたので、僕はあえてパナソニックのロードバイクを推したら、「パナソニックってロードバイクも出しているんですか!?」と最初はビックリしていたのですが、見事にハマって、玄人好みの自転車ができあがかったようです。

パナソニックで僕が特に好きなのは、クロモリのオーダー。シングルギアなんかもすごくシンプルで渋い自転車を作ってくれます。一方、チタンになると、かなりかっこいい。もちろん電動アシスト自転車もトップを走るメーカーでもあります。これからも、パナソニックには自転車の研究を続けていっていただきたいと思います!

次回12月23日(木)〜12月28日(火曜)の「サイクリスト・ステーション ツアー・オブ・ジャパン」は、野島裕史のサイクルコラム「自転車で2021年を振り返ります」をお届けします。どうぞお楽しみに!

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