声優界随一のサイクリスト・野島裕史が、自転車をテーマにお届けしている番組「サイクリスト・ステーション ツアー・オブ・ジャパン」。1月6日(木)〜1月11日(火)放送のゲストは、一般財団法人「日本自転車普及協会」の主幹調査役で、国内最大規模の自転車ロードレース「ツアー・オブ・ジャパン」の大会ディレクターをつとめる栗村修さん。新年恒例の企画「栗村修の学べる自転車ニュース・2021年の振り返り編」をお届けしました。
野島裕史、栗村修さん
◆栗村修が振り返る「2021年の自転車ニュース」
野島:2021年の自転車に関するニューストピックスのなかから、特に印象に残った出来事3つを、栗村さんに解説していただきたいと思います。が……ついおしゃべりしすぎてしまう栗村さん対策として、それぞれの解説について1分間の制限時間を設けさせていただきます(笑)。
栗村:あれ!? 以前は3分間だったような……(笑)。何事も長けりゃいいってもんじゃないですからね(笑)。
野島:では、まいりましょう。1つ目のテーマは?
栗村:やはり私の本職の1つと言っていい「2021ツアー・オブ・ジャパン」についてお話したいと思います。日本最大級の自転車ロードレース「ツアー・オブ・ジャパン」。本来であれば、大阪・堺をスタートして、京都、いなべ、美濃、南信州、富士山、さらに相模原、東京という8ステージで争うレースですが、残念ながら2021年は富士山、相模原、東京の3日間で開催されることになりました。日本国内の国際レースが軒並み中止になるなかで、なんとか「ツアー・オブ・ジャパン」がUCI(国際自転車競技連合)レース中止の流れを止めて、コロナ禍での国際大会を日本に復活させたという非常に熱い思いの大会でした。今だから言いますけど、東京ステージの会場で、レースが終わった後に号泣しました。
これまでも涙した大会は何回かありましたが、最初に涙を流したのは「ツアー・オブ・ジャパン」大会ディレクターに昇格した後の大会でした。そのときは大きなプレッシャーを感じたのですが、それに次ぐ解放感なのか安堵感なのか、どういう感情だったのか言葉では言い表せないのですが、目から大量の汗が流れてしまいましたね。
野島:自転車業界のみならず、スポーツ業界がこういった国際レースをコロナ禍で開催できるのかどうか注目していたと思うので、とんでもない重責だったと思います。目から流れる汗もすごく納得できるというか、僕ももらい泣きしそうなぐらい感動しました。
栗村:野島さんにもパレード走行で出ていただいて。これは僕だけではなく、大会に関わった方、地域住民の方々含め、みなさんへの感謝の思い……その気持ちが前面に出た。そんな大会でしたね。
野島:僕も感動したので、とても覚えています。続きまして、2つ目のテーマはなんでしょうか?
栗村:やはり一生に一度の経験といっても過言ではない「東京オリンピック・パラリンピック」について語りたいと思います。
本来であれば、2020年に開催されるはずだった東京オリンピック・パラリンピックですが、「ツアー・オブ・ジャパン」と同様に新型コロナウイルスの影響で開催延期になりました。私自身、直接大会には関わっていなかったのですが、「ツアー・オブ・ジャパン」がオリンピックのレガシー大会という位置付けになっていたので、オリパラが開催されるかどうかが非常に気になっていました。
僕自身“元選手”なので、一番感情移入したのが選手たちです。ただでさえプレッシャーや背負うものが大きい選手たちが、果たして自分たちが大会に出ていいのかという違う悩みを抱えながら本番に向かう。でも結局、選手たちの……。
~ここで制限時間終了のベルが鳴り響く~
栗村:ここからだったんですけどね(苦笑)。1分間の壁は高い……でも、ギリギリセーフでしたね。
野島:ギリギリアウトですけどね(笑)。言わんとすることや気持ちはすごく伝わりました。大きなプレッシャーや困難な状況での練習を重ねて、選手はかなり苦労したのでは……と、元選手の栗村さんは察していたということですね。
栗村:そういうことでございます(笑)。実行委員会のみなさんなど、開催側は本当に大変だったと思うのですけど、このトピックでは話したいは選手たちのこと。(大会が開催されるのか)どうなるかわからないなかでの努力は大変だっただろうなと、すごく気持ちが入っちゃいましたね。
野島:3つ目のテーマは、なんでしょうか?
栗村:世界最高峰の三大自転車レース「グランツール」について語ってみたいと思います。
野島:では、お願いします!
栗村:世界最大の自転車レースと言えば「ツール・ド・フランス」「ジロ・デ・イタリア」「ブエルタ・ア・エスパーニャ」があります。やはりこのグランツール、各国を1周するレースは、地元に行くと日本の箱根駅伝のような伝統があるのですが、2021年のグランツールは、当初予定していたスケジュール通りにきっちりとやり切った。
感染症対策をしっかりとしながら、お客さんが山岳コースに入って大きな声援を選手に送るという、ある意味、東京オリンピック・パラリンピックの成功の土台を作ったのが、このグランツールと言われる世界のステージレースです。本場のパワー、伝統の力をものすごく感じました。
野島:本当に三大ツールがおこなわれたのは大きいですよね。
栗村:シーズン最後には、ロード世界選手権がベルギーで開催されたのですが、“コロナ禍前よりもお客さんがいるんじゃないか?”っていうぐらい、国が定めた基準をしっかりとクリアしながらノーマスクでロード世界選手権の盛り上がりを見せました。
正直、観ていてちょっとハラハラしたのですけど、本場の自転車レースの開催ノウハウというか、すごさを感じましたね。もちろん、なにが正解かわからないところはありますけど、ただ手放しで無責任にお客さんを入れるのではなくて、しっかりと対策したうえであのような雰囲気を出せるのは、同じレース主催者として“やっぱり本場は違うな”というリスペクトというか、なにか受けるものがありましたね。
野島:一番大きく感じたことはなんですか?
栗村:選手たちもレースバブルという、ある意味、日常から隔離されている状況に置かれているのですが、そのなかでストレスを感じず、しっかりと守ることは守りながらパフォーマンスを見せて、それをお客さんたちもしっかりとわかった上で盛り上げてくれる。みんなルールを守りながら、許された部分で最大にプレーして楽しむ感覚を見習わなきゃな、という感じがしましたね。
次回1月13日(木)〜1月18日(火)の「サイクリスト・ステーション ツアー・オブ・ジャパン」は、引き続き栗村さんをお迎えして「栗村修の学べる自転車ニュース・2022年の展望編」をお届けします。どうぞお楽しみに!