ピアノを届ける活動「スマイルピアノ500」では、
多くの人にお力をいただいています。
ピアノを譲ってくださる人、ピアノを運んでくださる人、
スケジュールなどを調整するスタッフ、そしてピアノの調律師さん。
ピアノを届けたら、すぐに弾ける状態であってほしい。
そのためには調律師さんの力が必要です。
といっても、調律師さんってどんな仕事をするのか、
いまいち、ピンとこない人もいるかと思います。
中には「音程を整えるだけでしょう?」と思う人もいるかもしれませんね。
そこで今日は、調律師さんにスポットを当ててお話します。
調律師さんの仕事は、
ドレミファソラシドと弾いた時の音程を調整するだけではありません。
長く弾かれていないピアノだと、弦がさびていたり、カビついていたり、
湿気で鍵盤同士がくっついてしまい動きが鈍くなるなど、
本当に様々なトラブルがあります。
時には、お子さんがペンや小さなおもちゃを
ふたの上からピアノの中に落としてしまっていることもあるんです。
ですので、音の調整の前に掃除から始まることも多いのです。
また、ペダルも調整もします。
足で踏むペダルがうまく機能しているかもチェックポイントです。
調律すると、音がどう変わるか?
もちろん音が整うわけですが、聞いた時の感覚は、たとえるなら透明な水のよう。
混じり気のない、清らかな水のような音がすると感じることがあります。
ピアノをお届けする時には調律師さんも同行、
搬入の後に調律してもらうことも多いのですが、
その家のお子さんが「音が透明になった!」と、
喜んでいるのを何度も見たことがあります。
子供は感性が豊か、そして鋭いのです。
ピアノのお届けでは、福島、宮城、岩手と、
それぞれお世話になっている調律師さんがいます。
岩手でお世話になっているのは千田さん。
千田さんも高校生の頃に家に来てくれた調律師さんによって
音が変わることに感動し、調律師さんを目指したそうです。
千田さんは震災当時神奈川県にいましたが、ご主人が防災技術の設計、
また津波工学を勉強されていたこともあり、
地域のお役に立ちたいと震災後にご家族で岩手に引っ越しました。
千田さんと出会ってまだ数年ですが、
お届けした子供たちが喜んでくださる感動を何度も共有しているので、
昔からの知り合いのような気分になります。
3月10日、大槌町おしゃっちのコンサートで調律してくれた時に、
千田さんからお話を伺いました。
調律師さんは、いろんなピアノに出会います。
コンサートホールだけでなく、音楽教室やお年寄りの施設、
また学校の音楽室や体育館など。
特に、体育館のピアノは吹きさらしの場所に置いてあり
温度や湿度管理がされていないので調整が大変だそうです。
「演奏するピアニストによって調律を変えるか」尋ねてみると、
基本的には、そのピアノの特性をいかすことを考えているとのこと。
ピアニストがそのピアノのポテンシャル以上の演奏をしてくれた時、
なんともいえない嬉しさがあると話していました。
そういう意味では、
調律師さんとピアニストは共同作業で音楽を作っているのかもしれません。
震災当時は調律の仕事も全くなくなってしまいましたが、
徐々に仕事が増えているそうです。
私がお届けしたピアノも定期的なメンテナンスが必要なので、
お届けした人から「調律してほしい」と
千田さん宛に連絡がきていると聞いてほっとしました。
お届けしたピアノを弾き続けてくれているんですね。
でも、このところコロナ禍でまた仕事が減っているそうです。
ご家庭のピアノを調律する時、
調律師さんは家の中に入らないとできないので難しい、
早く終息してほしいと話していました。
最後に、「千田さんにとって最もやりがいを感じる瞬間は?」と尋ねたところ、
やはり調律したピアノを弾いた人が笑顔になってくれる時だそうです。
子供に「いい音だね」と声をかけてもらった時が1番嬉しい。
そう話してくれる千田さんの表情は輝いていました。
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