声優界随一のサイクリスト・野島裕史が、自転車をテーマにお届けしている番組「サイクリスト・ステーション ツアー・オブ・ジャパン」。5月12日(木)~5月16日(木)の放送は、サイクル・ヒストリー「スーパーカー自転車 ヒストリー」をお届けしました。
パーソナリティの野島裕史
◆少年たちの心をつかんだスーパーカー自転車の歴史
野島:このコーナーでは、自転車にまつわるさまざまなヒストリーを紐解きながら、サイクル知識を高めていきます!
1970年から1980年代にかけて、少年たちの心を鷲づかみにしたすごい自転車がありました。セミドロップハンドル、艶消しブラックのダイヤモンドフレーム、トップチューブの上に配置された多段ギアシフト、そして、“ムダにやりすぎな”フラッシャー装備(ウインカー機能や、光が左右に移動する光りものギミックがある装備)などを備えた「ジュニアスポーツ車(フラッシャー自転車)」が一大ブームを巻き起こしました。
ちなみに始まりは、昭和40年代半ばに丸石自転車が開発した電子フラッシャー付きの自転車だそうです。当時は、自転車が商業用や大人だけの贅沢品だった時代から、“子どもに買い与えるもの”としての新たな認識が広がり始めた頃で、この特需を巡り、各メーカーがこぞってジュニアスポーツ車を発売しました。
価格は1台5万円前後と当時としてはかなり高価でしたが、ジュニアスポーツ車の装備はどんどん豪華に過激になっていきます。
自転車メーカー各社は、“少年たちの期待に応えたい!”と、毎年、主要商品をフルモデルチェンジする勢いで、装備やデザインを追求する開発競争にしのぎを削りました。
当時はフェラーリ、ランボルギーニ カウンタック、ポルシェ 911ターボなど、スーパーカーブームの真っ只中ということもあり、ジュニアスポーツ車は、後に「スーパーカー自転車」と呼ばれるようになりました。
そして、スーパーカー自転車は、スーパーカーに憧れる少年たちの心とがっちり結びつき、「自分でも、乗れる、運転できる」を実現してくれるアイテムとして、大人気となりました。
一方、豪華な装飾だけでなく、当時からLED、液晶パネル、油圧式ディスクブレーキなど、現代にも通用するアイテムも次々に採用していきました。しかし、ブームはいつか過ぎ去るもので、スーパーカー自転車の売り上げは、その後、急速に冷え込み、ブームの終わりを迎えます。その理由として挙げられているのは、主に3つあります。
1. スーパーカー自転車の装備が年々過激になった結果、最上位モデルのフル装備だと、10万円を超えるほど高額になってしまい、「高すぎる」「教育に悪い」「買えない子や家庭のことも考えてほしい」と、学校などで問題視されるようになったこと。
2. ブリヂストンが手頃な価格で本格的なロードバイク「ロードマン」を発売したことをきっかけに、より高い年齢向けのスポーツ自転車へ人気が移ったこと。
3. 1980年代後半の「マウンテンバイクブーム」が、とどめを刺したこと。
以上が、主な要因として挙げられています。
今も閉店した自転車店の倉庫からスーパーカー自転車の新品在庫が見つかることもあるそうで、レア車両も含め、当時の車両はクラシックカーと同じようなファン市場があり、オークションサイトやフリマサイトなどで高値で売り買いされています。
僕も子どもの頃、スーパーカー自転車に憧れましたよ。確かに、謎の装備がいっぱい付いていましたけど、LEDや液晶パネル、油圧式ディスクブレーキなどが付いていたんですね。知らなかったなぁ~。
少年の心をつかむために最新技術を使う代わりに、10万円を超えてしまうという、とんでもない価格……。しかも当時ですからね。昭和45年頃~昭和50年代ぐらいにかけて流行ったということで、まさに僕はガッチリ当てはまる世代なんですけど、僕は買ってもらえなかったですね。
実は僕、自転車好きになってから(スーパーカー自転車に)乗ったことあります。でも、子ども用なのでサイズが合わなくて若干小さくて乗りにくかったんですけど、印象はとにかく重い(笑)。20㎏は超えていますね。
やはり無駄な機能・装備が大量に付いているので、まぁ重い(笑)。当時、さすがにカーボンは使っていなかったので、全部金属でできていて、でっかいライトが左右に2つ付いていて、それを守るために鉄のガードが付いていたので、それもまた重い。さらに右側の後ろに折り畳みできるカゴなども付いていたので、それも重くて……とにかく、めちゃくちゃ重いという印象がありましたね(笑)。
なんでなくなっちゃったんだろうと思ったんですけど、いろいろな他のブームに移っていったというのもあるんですね。
そのなかで印象的だったのが、1980年代後半の「マウンテンバイクブーム」。これは絶対、映画「E.T.」で有名になったマウンテンバイクがとどめを刺したんですね。大阪にある「Kuwahara(クワハラ)」の自転車が映画「E.T.」に使われていたんですけど、それが大ブームになりまして。僕は、まさにこの時代なので、このスーパーカー自転車が“欲しいな”と思った後に、映画「E.T.」を観て“マウンテンバイクが欲しいな”と思ったので、まさにこの時代とともに生きてきた。そして、大人になって好きなように自転車が買えるようになったんだなって、あらためて思いました。
僕はこのスーパーカー自転車に懐かしさもありますが、憧れもあるので、夢が1つあるんです。スーパーカー自転車のパーツがオークションなどで売っているので、それをちょいちょい買って、最新の自転車に搭載したいと(笑)。
当時、豆電球だったライトをLEDに交換したり、ガードの部分をカーボンにして軽量化したり、軽くて乗り心地のいい“大人が乗るスーパーカー自転車”を作ってみたいな~!
次回5月19日(木)~5月23日(月)の「サイクリスト・ステーション ツアー・オブ・ジャパン」は、トライアスリートでオリンピアンの庭田清美さんをゲストに迎えてお届けします。どうぞお楽しみに!