高校卒業後、単身フランスへ…ロードレース界のレジェンド・別府史之、プロとして過ごした17年間の経験を「日本の自転車・ロードレース界に伝えていきたい」

声優界随一のサイクリスト・野島裕史が、自転車をテーマにお届けしている番組「サイクリスト・ステーション ツアー・オブ・ジャパン」。10月29日(土)~10月31日(月)の放送は、サイクリングプロモーターの別府史之さんをゲストに迎えてお届けしました。

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別府史之さん、野島裕史

 

◆プロを見据えて過ごした中高生時代

 

野島:まずは別府さんのプロフィールを簡単に紹介させていただきます。

 

1983年生まれ、神奈川県茅ヶ崎市出身。高校卒業とともにフランスに渡ると、現地のアマチュアレースで次々と好成績を残し、2005年当時、最も強くて華やかだったチーム、ディスカバリーチャンネル・プロサイクリングチームでプロ生活をスタート。

 

その後、移籍したスキル・シマノで、2009年にツール・ド・フランス初出場。別チームながら同じく初出場した新城幸也(あらしろ・ゆきや)選手とともに日本人として初めてツール・ド・フランスを完走しました。

 

その後、世界三大自転車レース(ツール・ド・フランス/ジロ・デ・イタリア/ブエルタ・ア・エスパーニャ)、モニュメントと呼ばれる歴史的にも別格な5つのレースをいずれも完走。さらに日本代表としては8度の世界選手権 2度のオリンピックを完走。世界三大レース、モニュメント、世界選手権、オリンピックと、これらすべてを完走した選手は、現在およそ1,100人いる現役のトッププロのなかでも10人ほどしかいないという、まさにロードレース界のレジェンドです。

 

2歳の頃には、補助輪なしで自転車に乗り、小学生時代には20km離れた町(に住むいとこの家)から自転車を漕いで帰宅するなど、別府さんは伝説があり過ぎて(笑)。

 

まだまだ伝説はたくさんあって。驚くべきことに高校卒業とともにフランスに渡ろうと思ったと。当時、迷いはなかったんですか?

 

別府:高校生のとき、うちの兄がヨーロッパに行っていて、「ヨーロッパでは、U23のカテゴリーである程度成績を残してプロになるのが定石なんだよ。高校卒業して海外に行くタイミングじゃないと、なかなか正当なプロセスを経てプロフェッショナルになるのは難しい」と教えられていたので、高校を出たら(海外に渡って)プロになろうと。

 

野島:なるほど。小学生のときにマウンテンバイクを始めて、どういったきっかけでロードバイクに移行したんですか?

 

別府:もともとマウンテンバイクで自然のなかを走るのがすごく好きだったんですけど、その先を考えてみたときに世界選手権やオリンピックまでだったんですよね。ただ、ロードバイクには世界最高峰と言われるツール・ド・フランスがあって、そこに日本人で挑戦した選手は過去に2人いたんですけど、完走できていなかったので。

 

別に完走することが目的だったわけじゃないのですが、そういった華やかな世界があるということでロードバイクに転向しました。

 

野島:先ほどおっしゃっていた U23のプロセスを経ないとプロになるのはなかなか難しいと。

 

別府:そうですね。同世代で競い合って、(その走りを見て)プロがスカウトして、実力をもとにプロになっていくというのが正当なプロセスだったので。

 

野島:それが高校卒業とともに“フランスに行こう”と思った決断を後押しした理由だったんですね。それで初めての海外生活を迎えたわけですが、フランス語は知らない状態でしたよね?

 

別府:最初はイタリアに行きたくて、イタリア語をすごく勉強していたんです。当時、僕はジュニアの日本チャンピオンだったので、チームから「うちのチームで走ってほしい」と言われて行った先が、フランスのマルセイユで。フランス語は(通常の科目では)習わないので、けっこう苦労しました。

 

野島:そうですよね。

 

別府:でも、(フランス語で)コミュニケーションができないと競技につながっていかないので、一歩前に踏み込むような形で話していたらだんだんとできるようになりました。

 

野島:どれぐらいの期間でコミュニケーションができるようになりましたか?

 

別府:難しい会話はできなかったですけど、競技やレースのなかで使うフランス語はすぐに覚えました。

 

野島:さすがですね。チームメイトとの交流はいかがでしたか?

 

別府:それも準備をしておいたんです。海外に行ったときに、自分が住んでいる国の話ができないといけないじゃないですか。それをよく聞かれるので、中高と社会や日本の歴史を自分で学んで……ということは集中してやっていましたね。

 

野島:中高の頃から海外に行って、“そういうコミュニケーションを取るんだ”という意識があったということですよね。

 

別府:そうしないと話についていけないので、(チームメイトに)日本のことをちゃんと伝えられるような知識を覚えていました。

 

野島:素晴らしいですね。自転車のプロ選手になりたいがゆえに、日本の歴史を学ぶというのは、一見関係なさそうですけど、海外で活躍するという思いがあるからこその知識の広さになってくるんでしょうね。

 

別府:そうですね。ただ単純にプロになりたいというだけだと難しかったんですけど、ちゃんと自分なかでそういったことを準備していました。

 

野島:僕は、中学生ぐらいの頃の夢って漠然と思っていたんですけど、やはり別府さんのように世界で活躍する方は、幼いときから夢が具体的なんだなとあらためて感じました。

 

<b>17年間、海外で培ってきた経験を「伝えていきたい」</b>

野島:別府さんが所属したアマチュアチームは、数々の優勝をさらった強豪チームだったそうですね。当時、日本人選手に対する周りの目はどんな感じだったんでしょうか。

 

別府:向こうでは本当にステータスの高いスポーツなので、みんなプライドを持って戦っているので、「日本人・アジア人には負けたくない」って本気でかかってくるんです。自分も目指しているところがトッププロでしたから、負けじとやっていました。

 

野島:その後、世界最強と言われたディスカバリーチャンネルでプロ生活を開始し、世界三大レース(グランツール)、さらにモニュメントと呼ばれる5つのレースをいずれも完走と。グランツールは日本でも浸透してきていますけど、モニュメントというのは、海外ではどのような位置づけなんですか?

 

別府:グランツールは、ステージレースで21日間走り続けるんですけど、モニュメントはワンデーレース、1日で走るレースです。すべて100年以上の歴史があって、さらに(走る道は)平らじゃなくて、石畳の上だったり、丘が何度も登場するような起伏が激しい場所だったり。

 

モニュメントと言われるレースは5つあって、ベルギー、フランス、イタリアの3つの国で開催されるんですけど、レースに勝っただけでも34代まで語り継がれるというぐらい由緒あるレースです。

 

歴史がありますし、これまで何千人、何万人と走ってきて、そこに血と汗と涙がにじんでいますから。チーム競技ではあるんですけど、その厳しい環境のなかでも戦って勝ち残っていくという本当にタフなレースの位置づけが、モニュメントだと思います。

 

野島:そんな過酷な環境を戦い抜いた、プロとして過ごした17年間。別府さんがこの17年間で学んだことや得たものは?

 

別府:やっぱり深いですね。僕が本当に自転車をやってよかったなと思うのは、世界各国いろいろなところへ行って、現地の人と話したり、自転車を軸にしていろいろな出会いができたりしたのは、本当に貴重な経験だったなと思います。

 

野島:自転車業界、ロードレース界への提言のようなものはございますか?

 

別府:僕はずっとフランスに住んでいて、日本に帰ってくることが年に1ヵ月ぐらいしかないんです。今回の新型コロナで3年間ぐらいいろいろなものがストップして、レースもなくなってしまいましたけど、最近は自転車のレースも開催され始めていて、やっと選手たちや競技者がレースを走ることができるようになってきました。 

 

今後は、自分がプロとして17年間ずっとやってきたことを、日本の自転車業界、ロードレース界に伝えていきたいと思っています。

 

次回11月5日(土)~11月7日(月)の「サイクリスト・ステーション ツアー・オブ・ジャパン」も、引き続き別府さんをゲストに迎えてお届けします。お楽しみに!

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