野島裕史、別府史之さん
<b>◆事故なくロードバイクを楽しむために大切なこと</b>
野島:今回、別府さんにはロードバイクと安全運転について伺いたいと思います。
今年9月4日(日)鹿児島県で開かれた「第77回 全日本大学対抗選手権自転車競技大会」の男子ロードレース中に転倒事故が発生し、法政大学1年の選手が頭や首を強く打って亡くなるという不幸な事故がありました。
主催する日本学生自転車競技連盟などによると、現場は県道の下りカードで、当時は雨で路面が濡れていて、少なくとも13人が落車に絡む状況だったということです。
別府さんは、この事故のことはご存知でしょうか?
別府:はい。この事故のことを聞いたときは、すごくショックを受けました。
野島:そうですよね。ショックを受けたと同時に何か感じたことはありましたか?
別府:どうしてもこういった事故があると、“自転車って危ないよね”っていうイメージが先行してしまって……自分が現役だったときは、レースの結果ではなく“自転車は危ない”ということは大きく取り上げられるんだけど、自転車に対しての啓蒙的な部分がはしょられる部分があるのかなと。
野島:(現役当時)実際、別府さんも参加されていたレースで事故や落車などに遭われたことはあるのですか?
別府:実際、自分が見ていたなかでは2件、目の前で落車する死亡事故がありました。本当にあと0.2~0.3秒変わっていれば助かっているんです。
野島:不幸が重なってしまったということですね。
別府:いろいろな要因が重なって。今回の事故もたくさんの要因が絡んでいたと思うんです。なので、そういった起こり得ることをどうやったら防げるかということを考えていかなきゃいけない。
野島:そうですよね。事故をゼロにすることはできないのかもしれないですけど、少しでも減らすためにはどういったことが必要だと思いますか?
別府:ライドの意識と、やはりこういう事故をきっかけに、どうやって走ったらいいかということもしっかりと考えなきゃいけない。個人的に思うのは、今回の事故のような下りで路面が濡れていてスリップするかもしれないようなところは、飛ばさない(スピードを出さない)。プロ選手は、みんな一斉に“ここはスローダウンしようぜ”という意識があるんですよね。
野島:確かにありますね。
別府:そういった意識も埋め込んでいかなければいけないし、ただのスキル不足というわけではないと思うんです。
野島:今回、特に大学対抗ということもあったので、教育のほうもそういったことを啓蒙していくのも大事かもしれませんね。
レース中のみならず、アマチュアライダーがツーリングをする際に特に気をつけるべきポイントなどありますか?
別府:まずは無理をしないこと。無理に止まるのは危ないですし、無理にすり抜けたり、スピードを出したり、自分のスキル以上のことをやると、どこかで反動が出てしまうのかなと感じられます。なので、ゆとりを持って車やバイクの運転と同じように、自転車も自分の空間をしっかりと確保して、前を見て胸を張って走ってもらいたいなと思います。
野島:アマチュアライダーは、やはり楽しむのが一番大事ですよね。無理をして、自らを危険にさらすことはないですよね。ツーリングはレースじゃないですから、別府さんがおっしゃる通り無理をしないという心がけは大事だと僕も思いました。
別府:自転車は、みんなで楽しく安全に乗る乗り物なので、ルールやマナーを守って楽しんでもらえたらと思います。
次回11月12日(土)~12月14日(月)の「サイクリスト・ステーション ツアー・オブ・ジャパン」は、野島裕史のサイクルコラム「キャラクターヒルクライム2022」をお届けします。お楽しみに!