春風亭一之輔「『客が来なくても落語をやるんだよ』って…」いろんなことを教わった“落研時代”を振り返る

俳優・石丸幹二がパーソナリティを務めるTOKYO FMのラジオ番組「Grand Seiko THE NATURE OF TIME」(毎週土曜12:00~12:25)。各界で活躍するゲストを迎え、毎週1つのキーワードから“自分を支えている本質”を掘り下げて伺っていきます。2022年12月のマンスリーゲストは、落語家の春風亭一之輔さん。この記事では、学生時代のことを振り返った12月10日(土)放送の模様を紹介します。


(左から)石丸幹二、春風亭一之輔さん


落語家の春風亭一之輔さんは、大学卒業後、春風亭一朝に入門。21人抜きの大抜擢で真打昇進を果たすと、古典落語のみならず、登場人物を今風にアレンジしたキャラクター設定や語り口が「分かりやすい」と評判を呼んでいます。年間900席もの高座をこなし、人気・実力ともに随一といわれている春風亭一之輔さんは、いったい何を大切にしているのでしょうか。

◆「良い思い出も悪い思い出もいっぱい」

石丸:このサロンでは、人生で大切にしている“場所”“こと”についてお伺いしています。今日はどんなお話をお聞かせいただけますでしょうか?

一之輔:場所ですかね。(関東に)西武池袋線っていう路線があるんですけど、池袋(駅)から1、2……3つ目の“江古田駅の南口”です。

石丸:限定的ですね(笑)。僕も音楽大学時代は、あの辺りをうろうろしていました。江古田駅といったら、みんなが集まるカオス的な場所でしたけど、そこの南口には何があるんですか?

一之輔:僕は日本大学の芸術学部で“落語研究会”に入ったのですが。

石丸:“日芸”ですね。

一之輔:何かと飲みに行くときは、先輩に「南口(なんこう)に集合」って言われて、「じゃあ行くか」って1軒、2軒、3軒くらい飲み歩いて。

石丸:行きますね!

一之輔:そして、また“なんこう”で解散。それから、もう1軒行く人は安いお店を渡り歩いて、先輩の家に泊めてもらったり、先輩が僕の家に泊まりに来たりしていましたね。

石丸:“学生時代あるある”ですね。

一之輔:良い思い出もあれば、悪い思い出もいっぱい(笑)。

石丸:良い思い出には、どんなものがありますか?

一之輔:良い思い出は、やっぱり学園祭ですかね。日芸は“芸術祭”って言っていましたけど、教室で落語の公演をやるんですよ。教室にダンボールや木材とかで寄席のこしらえを作って、それで3日間やるんですけどね。

石丸:どんな感じでしたか? いわゆる学園祭ですから、落語目的じゃない人もフラッと入って来ますよね?

一之輔:もちろん。1年生のときに、(1年生の)部員が僕1人だけだったんですよ、先輩は7、8人いたんですけど。だから3日間、下働きをほぼ全部自分1人で……クタクタになりながらやっていましたね。

石丸:いわゆる“前座”みたいなことをやるんですね。

一之輔:そうですね。だけど、先輩たちはどこか見に行っちゃったりとかして。

石丸:あれれ。

一之輔:(だけど先輩は)「お前はずっと(教室に)いて」って言われて。それが、お客さんがちょうど来ない時間帯だったので、「来ないときはどうするんですか?」って聞いたら、「来なくてもやるんだよ!」って。

石丸:(笑)。

一之輔:だから、誰もいないところで覚えたばかりの落語をずっとやっていました(笑)。でも、デカい声でやっていると“何かやってるな”みたいな感じで、フラッと見に来てくれる人もいて。(そのお客さんを離さないように)「今やっていますから、そこに座ってください!」って。

石丸:ハハハ(笑)。

一之輔:「“客が来るまでやってろ”って(先輩に)言われたんですよ」って、お客さんにお願いして、「えー、勘弁してよ~」って言いながら、1年生の落語を聴いてくれました。それも、何だか楽しかったですね。

石丸:それは本当に良い思い出ですね。日芸の落研には、いろんな先輩たちがいらっしゃいますが、どういう雰囲気の部活だったのか教えてください。

一之輔:先輩からは、いろんなことを教わりましたね、落語以外のことを。とにかく「何が面白いか」とか、「こういうものを読んだり、見たり聞いたりするとすごく面白いよ」って。感覚としては“ためになる”じゃなくて“面白い”ですね。

石丸:例えば、何かありますか?

一之輔:普通、先輩だったら「落語はこういうのを聴いたほうが良い」って言うじゃないですか。僕の先輩は「まず、これを読め」って、藤子不二雄A先生の「まんが道」という漫画を全巻渡されて、それを読まされました(笑)。

石丸:どんなことが描かれていましたか?

一之輔:とにかく(藤子不二雄)A先生の目線で書かれているんですけど、うまくいっている人に対する嫉妬とか、“なんで俺はうまくいかないんだ”と思いつつも、ついお金を使って遊んじゃったりして怠けてしまうような。すごく人間らしいダメなところもあるし、素晴らしい夢を持ってその道を歩いて行く(ようなことが描かれていました)。

別にそういうことを先輩はあえて言わないんですけど、「これは読んでおかないとダメな漫画だから」って。(先輩に)「読んでないの?」って言われて、「まだ読んでないです」って言ったら、「大学1年生にもなって『まんが道』を読んでないっておかしいよ」って、それもおかしいんですけどね(笑)。

石丸:本当ですね(笑)。

一之輔:あとは、手塚(治虫)先生や赤塚(不二夫)先生もそうだし、そういう昔の漫画とか、映画のビデオも置いてありましたね。

石丸:部室にですか?

一之輔:はい。麻雀卓もあって、先輩に麻雀を教わりながら、いろんなバカな話をして。正直、僕が1年生で(落研に)入ったときから、落語は僕が一番詳しかったんですけど、「そんなの知っていてもしょうがないじゃん」って言う先輩で。でも、落語は皆さん(当たり前に)好きなんですよね。だから、“落語以外の視野を広げて見なきゃいけないな”っていうことは、この部室とかで教わった感じはしますね。

石丸:「“人というものは、どんなものなのか”を、映画や本、漫画とかで自分で学べよ」みたいなことを教えてくださっているんですかね?

一之輔:そうですね、本当に“サロン”みたいな感じでしたね。でもみんな、学校の授業はちゃんと出席していなくて。

石丸:みんな(笑)?

一之輔:だって“7年生”っていう人もいたんですよ、おかしいでしょ(笑)。

石丸:(笑)。でも、いろんな人生の情報や知識をいっぱい持っていらっしゃる方でしょうね。

一之輔:それくらい、へんてこな人がいっぱいいましたね。

石丸:(笑)。

次回12月17日(土)の放送も、引き続き春風亭一之輔さんをお迎えしてお届けします。どうぞお楽しみに!

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聴取期限 2022年12月18日(日) AM 4:59 まで

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<番組概要>
番組名:Grand Seiko THE NATURE OF TIME
放送日時:毎週土曜 12:00~12:25
パーソナリティ:石丸幹二
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/nature/

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