青木源太と足立梨花がパーソナリティをつとめ、暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていくTOKYO FMのラジオ番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」(毎週日曜 7:30~7:55)。12月11日(日)の放送では、国土交通省 鉄道局 総務課 企画室長の土田宏道(つちだ・ひろみち)さんに「開業150周年 鉄道の魅力再発見!」をテーマに話を伺いました。
(左から)青木源太、土田宏道さん、足立梨花
◆鉄道は「環境にやさしい交通機関」
1872年10月14日、新橋~横浜間に約29kmの鉄道が開通してから、今年10月14日(金)で開業150年を迎えました。ちなみに、開業当時は蒸気機関車(SL)で、新橋~横浜間を約53分かけて走行していたそうです。なお、当時の横浜駅は、現在の桜木町駅にあたり、現在の新橋~桜木町間は、JR京浜東北線の電車で約39分。技術の進歩により、移動時間も短縮されていることがわかります。
また、日本の鉄道は、時間に正確でほぼ定刻通りに走ること、大量輸送や高速輸送に適していることなど、さまざまな優れた点がありますが、土田さんは、「鉄道が“環境にやさしい交通機関”だということをぜひ知っていただきたい」と声を大にします。
例えば、2019年度の調査で、鉄道が1人を1km運ぶのに排出される二酸化炭素の量は、自家用乗用車の8分の1。また、鉄道で貨物を輸送する際に排出される二酸化炭素の量は、営業用トラックの13分の1でした。
鉄道は、飛行機やバスと比べて一度に運べる人数や貨物の量が多く、電気を使用して走る列車も多いため、環境負荷が少ない交通機関と言えます。さらには、ほぼ時刻通りに運行されるので、到着時間が予想しやすく、予定が立てやすいというメリットもあります。
◆“ローカル鉄道”が存続の危機に…
ただ、日本国内の移動における距離別の交通機関分担率※(2015年度)については、500km~700km未満の移動では、鉄道が64%で最もシェアが多いものの、500km未満の移動となると、乗用車等のシェアが50%を超え、さらに、100km未満だと95%を乗用車などが占めており、近距離の移動には多くの人が車を利用していることが分かります。
※交通機関分担率…移動する際に、飛行機、鉄道、船、バス、乗用車などのうち、どの交通機関を利用したかの割合
さらに、新型コロナウイルスの影響で、鉄道を利用する方が大幅に減っているそうで、「現在は、コロナ以前と比較して7~8割ほどまで回復してきていますが、利用者数が元の水準まで回復することは難しいと言われている」と土田さん。
また、ローカル鉄道のなかには、コロナ以前から、沿線地域の人口減少や少子化が進んでいることで、「生活スタイル自体が自動車利用を中心としたものになっていることもあり、利用客が減少している路線が多くある」と言います。
利用客が少ないと鉄道事業者は収益が出ないため、列車の本数を減らしたり、さまざまな経費を削減するなど、鉄道路線の維持に向けた取り組みもおこなっているものの、「(本数を減らすことで)結果として利便性が低くなり、ますます利用者が減ってしまう、そんな負のスパイラルに陥っている路線も少なくはない」とローカル鉄道の現状を語ります。なかには、100円を稼ぐのに1万円以上費用がかかる路線もあるそうで、「ローカル線の維持については課題がある状況」と嘆きます。
そんな危機的状況のローカル鉄道に関して、土田さんは現状維持ではなく、地域の発展に貢献し、利用者から感謝され、利用してもらうためにも、「人口減少時代に相応しいコンパクトでしなやかな地域公共交通に再構築していく必要がある。国・沿線自治体・交通事業者などが、利用者や地域戦略の視点に立って、ローカル鉄道のあり方を見直し、将来に向けた地域モビリティについて検討を進めるとともに、協力・協働した取り組みを進めていくことが不可欠」と力を込めます。
すでに、鉄道事業者と沿線自治体などの協力・協働により、サービスが向上して黒字化を達成した事例や、郵便局や図書館など、鉄道とは直接的に関係ない事業者と連携することで、駅の活性化を図る取り組みもおこなわれているそうです。
◆鉄道分野ができる「カーボンニュートラル」
また、日本は「2050年カーボンニュートラル」を宣言しており、2030年度の目標として、温室効果ガスを2013年度と比較して46%削減することを目指しています。このチャレンジに「鉄道分野でも貢献したい」と土田さん。
鉄道から出るCO2排出量の9割が電力由来で、そのうち4分の3が火力発電です。この火力発電を再生可能エネルギーに変えれば、CO2の排出量を抑えることができます。また、既存の車両を省エネ車両に変えたり、駅を省エネ化したり、より効率的に車両を走らせられるような列車運行ダイヤの見直しなどが検討されています。
さらには、鉄道による再生可能エネルギーの生産なども検討されています。例えば、鉄道の施設内のスペースに太陽光パネルや風力発電機を設置して発電したり、そこで発電した電気を鉄道用の電線に送電し、駅や地域で使えるようにしたり、線路の下にパイプラインを敷設して水素を運ぶなど、線路の敷地や駅舎、車両基地といった鉄道が持つ膨大なインフラを利活用して、再生可能エネルギーの供給や消費ができるのではないかと考えられています。
また、土田さんによると、水素をエネルギー源とする鉄道車両も開発されていて、「2030年の実用化を目指している事業者もいます」と期待を込めます。
最後に土田さんは、「冬休みや年末年始は、旅行や帰省をされる方も多いと思います。その際にはぜひ、環境にやさしい鉄道をご利用いただければと思います。そして多くのみなさんに、ローカル鉄道を含め、今後の公共交通サービスのあり方について関心を持っていただければ」と話しました。
足立は、水素をエネルギー源とする鉄道車両がすでに開発されていて、2030年の実用化を目指していることに驚いたようで、「まだまだ鉄道が進化しているということが知れて面白かった」と感想を口にします。
青木は、鉄道が環境負荷の少ない交通機関であることに着目。「もともと環境に良いが、さらに(今後は)環境に配慮した水素で走る列車が生まれるかもしれない。150年の歴史があるけど、さらなる鉄道の未来に期待したい」と締めくくりました。
(左から)青木源太、足立梨花
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聴取期限 2022年12月19日(月) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:青木源太・足立梨花 Sunday Collection
放送日時:毎週日曜 7:30~7:55
パーソナリティ:青木源太、足立梨花
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/collection/