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消火器

廃校になって10年、その小学校に取り残された消火器があった。所々錆びつき一度も噴射することもなくその生涯を終えようとしている。

何のために生まれてきたのか、自分はこの世の中に必要だったのか、消火器の人生は己に問いかけ続けた日々だった。

そんなある日、懐かしいカラスの弟分の帰郷ともに消火器の神経を逆なでる嫌な臭いが同時にやってきた。

人生のクライマックスにおとずれた大きなうねり、その煙は消火器の眠っていた本能に初めて火をつけるのだった。