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私のおすすめ小説は梨木香歩さん作の家守綺譚(いえもりきたん)です。
舞台は百年と少し前の日本。主人公の綿貫征四郎(わたぬき せいしろう)が出くわす不思議で奇妙なできごとが、四季折々の自然の繊細な美しさとともに描かれています。

物語は、私達のいる現実よりも "もののけ" や "精霊" が身近ある世界観で描かれており、おとぎ話のようでありながら、どこか現実味も感じる内容となっています。

また、著者の梨木香歩さんは植物にとても詳しい方で、物語に登場する草木や花の表現からは、見た目の美しさだけでなく、力強さや儚さといった情感までも伝わってきます。

他にも、全編を通して古風な言い回しで書かれているところも特徴的です。まさに明治時代の物語を追体験しているような読み心地がしますよ。見慣れない言葉はありつつも、思いのほか読みづらさは感じずスラスラと読めました。

起承転結のようなメリハリはありませんが、人や植物、ときには "もののけ" とも心を通わしながら伸びやかに紡がれる物語は、不思議な風情とともに心地よい余韻にひたれる内容となっているので、興味が湧いたらぜひ読んでみて欲しいです。

P.S.
物語の中に"村田"という友人が少しだけ登場します。
彼もまた遠く土耳古(トルコ)の地で不思議な運命に見舞われるのですが、、それはまた別のお話しです^^

わっつ

東京都 / 男性 2020/9/23 01:05