おばあちゃんへ

両親、そして父方の祖母と僕の4人家族の実家。

両親が共働きだったので、幼い僕はおばあちゃんと過ごす事が多かったです。

大正生まれのおばあちゃんは、時代や家の事情のせいもあってか満足に学校に通うことができなかったそうです。

気が強いけど心配性、口が悪くてわがままだった僕はいつもガミガミ怒られていました。
でも、ひとりっ子だった幼い僕とよく一緒に遊んでくれました。

一緒にお菓子を食べたり、花札やオセロをしたり、一緒に近くの山に山菜を採りに行ったり。おばあちゃんが大好きだった民謡の教室についていったり。
甘えん坊だった僕は小学一年生になってもおばあちゃんにおんぶをねだっていました。

おばあちゃんは高校生になった僕によく「民謡の歌詞の漢字の読み方を教えてほしい」と僕の部屋に遊びに来ていました。小さい頃学校に行くこともままならなかった為、読めない漢字が多かったのです。

僕が使わなくなった鉛筆で歌詞カードに漢字の読み方を書くおばあちゃんは、すっかり腰が曲がり、おんぶされていた僕の方が大きくなっていました。

「教えてくれてありがとうね。また分からないのがあったら教えてくれるかい。」

昔はあんなに口が悪くてガミガミ口うるさかったおばあちゃんが丸く小さくなっていくのを感じました。

高校を卒業し、上京して十年ほど経ったある年の春。おばあちゃんは天国へ旅立ってしまいました。92歳、老衰でした。
僕はおばあちゃんの最期に立ち会う事はできなかったけれども、お葬式でおばあちゃんにお手紙を書いて読みました。
走馬灯のように蘇るおばあちゃんとの記憶。
おばあちゃんが歌っていた民謡が頭の中で再生されます。

幼い僕とたくさん遊んでくれてありがとう。
いつかそっちで会ったらまた民謡の歌詞カードの漢字を教えるね、おばあちゃん。また大好きな民謡を隣で歌ってね。

lotta

東京都 / 男性 2021/9/11 01:31