新谷さん、こんにちは。お変わりありませんか?
私の夏休み終わりのエピソードは、少年時代のお祭りの出来事です。
私の街には江戸時代から続いている祭りがあって、町内ごとに歌舞伎や歴史上の有名な場面を表現した「やたい」と呼ばれる大きな山車(だし)を作って、それを子供達が引いて市内をねり歩くというものです。
小学6年生だった年の祭りの日の朝、普段は見かけない、小さくてかわいい女の子が、同じやたいを引きにやって来ました。
おとなしくて不安げなその子がなぜか気にかかり、ほうっておけず、休憩の時間に冷たいジュースやアイスをもって行ってあげたり、宵(よい)祭りの時間にはちょうちんにロウソクの火をともしてあげたりと、私はなにかと世話を焼きました。そうしているうちに少しずつ打ちとけてきて、その子は自分が「みこ」と言う名前であること、小学5年生であること、東京から夏休みでおばあちゃんの家に遊びに来ていること、私の同級生のいとこであることなどを、少しずつ話してくれました。
あたりが暗くなるころには、並んでおにぎりを食べたりするくらい親しくなっていました。
祭りが終わり、別れぎわ、私が精一杯の勇気を出して「また来年もお祭りで会おうな」と言うと、みこちゃんは私の眼をみて、ただ、こくりとうなづいてくれました。
しかし、翌年の夏祭り、みこちゃんの姿はそこになく、私の心の中に甘酸っぱい思い出だけが残りました。遠い夏の終わりの、小さな恋のお話です。
新谷さんの故郷のお祭りのお話もうかがえたら嬉しいな。
さかな師匠より
山形県 / 男性 2022/8/9 11:45