ただあな、休日朝の静かな渋谷の街で落ち着いて見てみました。きらめいているけど、どこか物寂しげな海辺の街を背景に、登場人物たちが青春時代にぶつかる葛藤を描いた心に残る作品でした。直截的な体の繋がりでなく、そっと手を携えるような心の繋がり、奇しくも先月のひとりゴトでゆづみちゃんも言っていましたが「絆」、そのぬくもりが伝わってくる話でした。
序章は、それぞれが自分を傷つけないためにへつらいながら愛想笑いを浮かべてお互いの距離を取り合う場面が散見されましたが、居酒屋で絡んでくるななみを葵が睨み付ける所で劇的に映画の雰囲気が変わりましたね。表情の変化だけで作品の流れをガラリと変えることができるのは、やっぱり女優新谷ゆづみだなあ、と思いました。ゆづみちゃんはスクリーンの中なのに、目の前で自分を問い詰めてくるような臨場感がありました。
ちなみに、ラストシーンの名鉄蒲郡線は単線なので、行き違った列車はまた必ず向かい合って停車します。何度目かの桜が咲く時、祐也と葵もまた足を止めて見つめ直すこともあるんじゃないのかなあ。

風の口笛

東京都 / 男性 2024/3/14 22:57