嬉しい忘れもの

忘れものというと、困ったり恥ずかしい思い出が多いのですが、嬉しい忘れものの思い出がありました。

中学生のとき、国語の授業が始まってしばらくした頃、隣りの席の女子が、カバンの中や机の中をゴソゴソし始めました。

すると先生が近づいてきて
「どうした?教科書忘れたのか?」と。
黙って頷く彼女に、先生は、
「じゃあ隣に見せてもらえ」
と僕の方を指差します。

机を僕の方に寄せながら、「ごめんね」と言う彼女。
引っ付けた机の真ん中に開いた教科書を置きながら、「全然大丈夫」と言う僕。

平静を装ってはいたものの、実は心臓が飛び出るくらい緊張していました。だって、その隣りの席の女子は、勉強もスポーツも出来てしかも容姿端麗というみんなの憧れの存在で、僕も密かに思いを寄せていたのです。

もうその日の授業の内容は全く入ってこなくて、ひたすらこのまま授業が終わらないでくれ〜と祈っていました。

しかし時は無情に過ぎ、授業の終わりと共に「ありがとね」という言葉を残して彼女は元の席に戻っていきました。
「こちらこそ、教科書忘れてくれてありがとう」とは言えず、
「どういたしまして」と言うのが精一杯の僕でした。

新谷さんも、教科書忘れて隣りの男子に見せてもらったことありましたか?

アキヤマニア

神奈川県 / 男性 2022/9/8 17:19