思い出のムルギカリー

新谷さん、こんにちは!

今や日本人のソールフードとなったカレー。誰しも思い出の一つや二つありますよね。私にも忘れられないカレーがあります。

それは平成の初め頃、私が22歳で就職して住み始めたある街の、小さな洋食屋さんのカレーです。ムルギカリーという名のそのカレーは、その店に2つしかないメニューの一つでした、

ムルギとはインドの言葉で鶏のムネ肉を表すのだそうで、不思議な香りのスパイスが入ったサラサラのルウの上に、外はカリっと中はジューシーにローストされたムルギがドーンと乗っているというもの。インドには行ったことのない私も、ムルギカリーを食べている時間はインドを旅しているような気分になったものでした。

その街には6年間しかいませんでしたが、あまりにムルギカリーが好き過ぎて200回以上は通ったはずです。シェフは私よりも少し歳上でしたが、年齢が近かったこともあり次第に仲良くなりました。「今日は少しヨーグルトを入れてみたんですけど、いかがですか?」などと味の感想を求められることもありました。

しかし、転勤でその街を離れ、10年20年と経つうちにあれだけ大好物だったムルギカリーも、過去の味となっていきました。しかし、コロナ禍が落ち着いた去年のある日、どうしてもムルギカリーが食べたくなり、思い切って出かけてみようと決心したのです。ところがその矢先、あのお店が閉店した事をネットで知りました。

ガーン!!!あのムルギカリーは永遠に思い出の味となってしまったのです。実はこれまで何度も、かすかな記憶を頼りに、似たようなカレーを作ってみたのですが、どうしてもあの味にはなりませんでした。

まさに後悔先に立たず。今は、あのシェフがお元気で、どこかの街でムルギカリーを作り続けていることを祈るばかりです。

さかな師匠

山形県 / 男性 2024/2/11 19:44