実家で「猫を飼う事にした」と言うので見に帰ったら
お袋がそいつを、僕の名前で呼んでいた。
隆「よくないだろ」
葵「なんでよ」
隆「振り向いちゃうじゃん」
葵「なんとなく声質でわかるでしょ」
隆「わかんないでしょ」
葵「たかし~だったら猫でしょ」
隆「いや俺すごい可愛がられてるからね」
葵「いや二十歳超えてる息子そんな猫呼ぶみたいに呼ばないでしょ」
隆「いや俺がメロンもらってきて、それ預けて2階の自分の部屋行って、メロン切って、階段の下から俺呼ぶときそんな感じかもしれないだろ」
葵「そんな時くらいしかないならいいじゃん」
隆「よくないよなんかむず痒いだろ猫が自分の名前で呼ばれてたら」
葵「なんで隆になったの?」
隆「忘れないからだって」
葵「だけ?」
隆「だけ。だから忘れないやつなら変えてもいいって」
葵「えっじゃあよかったじゃん」
隆「でもどんな名前言っても忘れるって言うんだよ」
葵「厳しいんだ」
隆「全然覚えとけない?猫の名前くらい」
葵「老化と共にできなくなってくんじゃない」
隆「なんか、自分の親のそういうの寂しいな」
葵「ごめんごめん。なんならいいんだろうね」
隆「家族の名前とかじゃないと忘れるってさ」
葵「じゃあお父さんは?」
隆「いや、しんだとおもわれちゃうだろ」
葵「そう?」
隆「近所の人から心配されるよ。旦那が死んで、生まれ変わりとして猫育ててると思われちゃうじゃん」
葵「まぁ、そうか」
隆「おれ一人っ子だし。どうしようかなぁ」
葵「好きな食べ物は?」
隆「あぁ」
葵「お母さんの好きな食べ物とかだったら忘れないでしょ」
隆「いや、」
葵「お母さん何好きなの?」
隆「ヒモQ」
葵「え?」
隆「ヒモQ。いやじゃない?」
葵「まぁ、嫌かも」
隆「まんじゅうとかせんべいとか想像してるからそういう案出るんだよ。母ちゃん偏食だから、あとチキンフィレオとかケバブサンドとかだよ」
葵「かわいいじゃんケバブサンド」
隆「挟まないでいいじゃん猫の名前。あともう飼ってるしね」
葵「え?」
隆「3匹いるんだようち。」
葵「あ、そうなの?」
隆「ハイチュウと、月餅」
葵「月餅かわいいじゃん」
隆「まぁ2匹はもういいよハイチュウと月餅と隆だよ?俺食おうとしてるのかと思われるって」
葵「思われないでしょ」
隆「もうどうしよう」
葵「家族の名前も無理なんだもんねぇ」
隆「それかまぁ葵にするか」
葵「え?」
隆「いやまぁ、どうせ家族になるだろうから、葵にしとくか」
葵「え、それって」
隆「あ、ならない?」
葵「いやまぁ、なるだろうけど」
隆「だよね、じゃあまぁ、葵にしなよって言っとこうかな」
葵「いや、一旦猫挟むの変じゃない?猫が人間になって息子の嫁になったと思ったらどうすんの?」
隆「オスだから」
葵「…反論合ってる?」
隆「じゃあとりあえず来週くらいに紹介してもいいかな。そしたら猫の名前、あおいにしてくれると思うから」
葵「まぁ、いいけど」
隆「よかった。じゃあそうしよ」
葵「…プロポーズしやすくするための作り話だったりしないよね?」
隆「違うよ!」
2週間後、猫の名前は葵になった。母はたまに隆と呼んでいる。
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