ゲスト:森田剛・長久允(3) - わたしたちのDEATH DAY

自分が死んでしまう日「デスデイ」を、生まれたときから皆知っている世界───

昨年末、大晦日をカウントダウンするような形で公開された短編映画『DEATH DAYS』(デスデイズ)。

ここでは、キャストの森田剛さん、監督・脚本の長久允さんをお迎えしたオンエアのもようを掲載します。映画『DEATH DAYS』について、そして森田剛さんが立ち上げた新事務所「MOSS」についてのお話、箭内道彦が感じている森田剛さんの魅力など、全3回でお送りします。



(2022年2月12日オンエア「風とロック」より)


長久 「風とロック、長久允です。映画監督をやっております。3週連続で箭内さんと僕と森田剛さんでやっています。今日は3週目です。最初は僕、長久からのフリートークということで、”好きな話を”ってことなんですけど。僕はお笑いがすごい好きで、好きな人たちを紹介だけしたいと思います。『DEATH DAYS』っていう、森田剛さんといっしょにつくった短編映画にも、M-1に出たりしている、ももという二人が出ていたり、街裏ぴんくさんっていう漫談師の人が出ていたりします。好きな人は、Dr.ハインリッヒっていう人と、シンクロニシティっていう二人と、車海老のダンスっていう人たちと、虹の黄昏っていう人たちとかが好きです。検索してみてください。

僕はそんなお笑いに救われて、日々生きていて。この間つくった映画の『DEATH DAYS』っていうのも、僕にとってのお笑いみたいなものといっしょに、なにか辛いこととかあったときに観てもらって、なにかを感じて、ちょっと楽になってもらえたらいいな、と思ってつくりました。今日は曲を聴いていただきたいんですけど、『DEATH DAYS』という映画の中に出てくる架空のバンドの "デスデイズ" というバンドがあるんですけど、その曲の『DEATH DAYS』というタイトルの曲を聴いてもらえたらと思います。それでは、聴いてみてください、どうぞ。」


♪DEATH DAYS / デスデイズ


箭内 「はい。先週、先々週に引き続き、森田剛さんと長久允さんにゲストとして出演いただいています。風とロック、箭内道彦です。」

森田 「なんか、いまリモートでやらしてもらってるじゃないですか。(箭内さんの画面が)途中から逆光になっちゃって(笑)」

長久 「たしかに(笑)」

森田 「神様みたいになってる(笑)」

箭内 「ごめん、ちょっと部屋の電気つけてくるね、ちょっと待っててください!」

森田・長久 「(笑)」

箭内 「これ大袈裟に言うとさ、この3本録りの1時間半がなんかこう、これはこれで人生の縮図ですよね。出会って、楽しい時間が流れて、ひとまず"また今度どこかで"って言って別れる感じはね。あの映画を観た後だから、じわじわくるわけ。あの映画に出てる人と喋ってるから、ってことじゃなくて、あの映画が包んでくれたことって、とっても大きいなと思います。いいのつくった!(笑)」

長久 「やったー!(笑)」

森田 「うれしいですね。」

箭内 「いち観客が、なに偉そうなこといってるんだ…(笑)」

長久 「よかったです、ほんと。」


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箭内 「今日は、お二人からの告知!」

長久 「はい。先週まで言えなかったんですけど、いよいよ言えるんですが。3月12日から映画『DEATH DAYS』がシネクイントはじめ、全国の劇場で……YouTubeでは公開してるんですけど、それとはまた別に劇場版に再編集した1本の映画として上映されることが決まりました。」

箭内 「お〜!」

長久 「あと、制作風景を山西竜矢監督にドキュメンタリーとしても撮っていただいていて、そのドキュメンタリー映画と併映、いっしょに上映されますので、観ていただきたいなと思っています。あと、まだすごいいっぱいあって、劇場公開に伴って『DEATH DAYS BOOK』というパンフレットのような、写真集のような、ビジュアルブックを発売することになっておりまして、劇場やオンラインで買えると思うので、手に取っていただけたら嬉しいなと思います。」

箭内 「その『DEATH DAYS BOOK』の編集をしてるのが、この番組の放送作家の長嶋太陽で。」

長久 「はい、そうです。」

箭内 「で、長嶋太陽がこの案件を着地させたというか。」

全員 「(笑)」

箭内 「この二人を連れてきたんだよね。」

長久 「そうです、そうです。」

箭内 「長嶋太陽も元電通だけど、電通時代から二人は知ってるの?」

長久 「そうなんですよ!長嶋太陽くんは、クリエイティブに配属されてプランナーとコピーライターだったんですけど。なんか先輩から嫌われて、出来ないヤツみたいな感じでその辺に転がってたんですけど(笑)僕がちょっとみてみたら全然すごい優秀で、いっしょにスーパーマーケットに店頭ビデオを死ぬほど納品してました。そういう仲ですね。」

箭内 「そうなんだね。でも映画館で、YouTubeで観てるのとはまた違う、まあ画面の大きさもそうだし、あの空間もそうだけど、編集も違って…っていう。で、ドキュメンタリーもあって。」

長久 「全然違う体験になると思うので、YouTubeで観た方も…観た方にこそ面白がっていただけるかなと思うので、いらしてほしいですね。」

箭内 「僕はYouTubeしかもちろん観てないですけど、作品としての面白さ、新しさはもちろんあるんだけど、やっぱりいろんなこと考えますよね。"自分にとって大切なことはなにか" とか、自分の今までとかこれからとか。そして何より、"死ぬ" ってことってなんだろう、っていうね。観に行きます。」

森田 「ありがとうございます。」

長久 「あ、森田さん。初見でなにを思いました?森田さんにもきいてみたい(笑)」

森田 「『DEATH DAYS』を観てですか。なんだろうな。あの歌もあって、いま生きていることはラッキーだな、って思うし。やりたいことをやらないと損だな、と思うし。なんか前向きになりましたね。観てくれた人も生きよう、って思ってほしいし。」

長久 「おおー。…よかった。」

全員 「(笑)」

箭内 「その話、二人はいま初めてしたの!?(笑)"よかった" なんて監督言ってるけど(笑)」

長久 「たまにはそういう話もしてました(笑)森田さんとはもっとたくさん話していきたいんですけど。」

箭内 「僕は昔、『871569 (読み:ヤナイゴロク)』って、死んでもいないのに語録の本を出したことがあって。」

長久 「あ、数字のやつですね!」

箭内 「『871569』ってタイトルで。そこの中にある言葉のひとつで、自分で言ってわりと大事にしてるのが、〈 みんな、明日が来るって思い過ぎなんだ 〉って言葉があって。絶対明日はやってくるって、もちろん明日があるからみんな前を向いて生きていこうとするんだけど、"今日が最後の日だ" っていう風に思いながら生きることで、もっと楽しくっていうか、もっといろんなことを勇気持ってやれるんじゃないかなって思いながらこの10年、20年くらいやってきてたので。すごく共感したんです、あの映画に。お前、死ぬかもしれないぞっていう脅しでありながらも、力強く生きていけよっていう応援でもあったっていうか。すごく大事なことをああやってエンターテイメントが教えてくれるって、しかもそれがお説教でもなんでもなくてね。感情をグーッとつかんでもらったまま教えてもらえるって、すごく幸せな時間だな、と思いながら拝見しました。」

長久 「うれしいです、すごく。僕『871569』も読んでますし…」

箭内 「やめてくれよ!(笑)やめてください(笑)」

長久 「僕ふだん三つ編みとかにしてるんですけど、やっぱり箭内さんの金髪の逆サイドでやってるんじゃないかな、ってちょっといま気づきましたもん(笑)」

箭内 「(笑)いやいやいや、やめてください(笑)でも、『MOSS』がつくった映画がYouTubeで公開されて、劇場で公開されて、本が出来ていって。まだ会社ができて半年経ってないでしょ?すごいね…!」

森田 「本当に長久さんのおかげです。」

長久 「いえ、森田さんのおかげです。すごいスピードでつくって、すごいスピードで展開させてますね。」

箭内 「とはいえ、撮ったのはもうちょい手前なんでしょ?」

長久 「11月ですよね?」

森田 「そうです。」

箭内 「ええっ!?」

森田 「ものすごいスピード感でしたね。」

箭内 「V6なのに撮ってた、とかじゃないんだ!?」

森田 「いや、違います。」

箭内 「うわー、すごい!」

長久 「そうなんですよ。そこはちゃんとしましたよね。」

箭内 「へー…!」

森田 「めちゃくちゃ集中しましたよ。グッタリでした。」

箭内 「…ストレスもあったしね(笑) 」

全員 「(笑)」

森田 「いやいやいや(笑)」

箭内 「ここらへんの話は第1週聴いてないとちょっとわかんないかもしれないんですけど。」

長久 「撮影4日間だったんですけど、1ヶ月くらい撮ってたんじゃないか、っていう気持ちになりましたよね。」

森田 「ほんとでしたね。濃かったですね。」

長久 「二人とも、お互い、ヘトヘトになってた感じしますね。ほんとに。」



箭内 「あの、これ問題あったらきかないし使わないですけど、お金とかどうしたの?」

森田・長久 「(数秒の沈黙)……(笑)」

箭内 「…あっ、ちょっときいちゃだめか、これ!(笑)」

長久 「これは、森田さんの『MOSS』が新しい映画をつくるためにつくってるので、森田さんのお金です。各所協力していただいたりはしてるんですけど。基本的には、森田さんのお金でやっていますね。だからYouTubeで公開するっていう、ふつうの映画会社じゃできないような届け方ができたりしている、っていうのはそういうところが大きいですね。」


箭内 「なんか(番組の進行台本に)〈 ゲストからの提案 〉っていうのがあるんですよ。」

長久 「あ、そうなんですよ。この『DEATH DAYS BOOK』っていうものは編集長として長嶋(太陽)くんがやってるんですけど。その中で "わたしのデスデイ"を教えてくださいっていう企画を本の中に入れたいなと思っていて。死について軽々しく語ることはできないんですけど、「自分が自分で死ぬ日、デスデイを選べるとしたら何月何日がいいですか?」っていうのを質問としてきかせていただいておりまして。その理由と、最期の日なにをして過ごすか、っていうのをおききしたいなと思っている次第です。ちょっと難しいですけど。森田さんと箭内さん、お聞きできますでしょうか。」

森田 「箭内さん、ききたいですね。」

箭内 「え〜、俺ですか。自分で選べるとしたら?」

森田 「うん。」

箭内 「ふつうに考えると、映画にも出てくる大晦日が…って思うけど、ちょっと小狡く考え始めると、例えば今日は、収録してるのが1月25日ですけど、「1月24日」って答える気がするんですよね。そうすると少なくとも364日は生きてられるから(笑)」

長久 「なるほど!」

箭内 「さらにさらに詳しく狡く考えると、「2月29日」って言えば、次のオリンピックの年の2月29日までは確実に生きてるだろう、って思える。で、そんなこと考えるのってなんかダサいなって思い始めて(笑)せこいな、って思って。だったら「1月26日」ってしてみようかな、とかね。」

長久 「明日か。明日ですね。」

箭内 「明日が、来年の明日か、再来年の明日か、その次の明日かわかんないけど。「明日」って思いきってしてみて明日を乗り越えたら、なんかすごい自信になるような気もするけど…こうやってああだこうだ言い続けてるのがまた、キレが悪いんだけど(笑)」

全員 「(笑)」

箭内 「でもやっぱり、素敵な日がいいですよね!「7月7日」とかにしとこうかな(笑)」

全員 「(笑)」

長久 「ロマンチックな日(笑)」

箭内 「なんかね、これ公の場ではあまり言わないようにしてるんですけど。人って死んだらどうなっちゃんだろう、って思ったときに、案外悪いことだけじゃないかもしれないなと思うんですよ。先に逝った先輩方とばったり会うことができたりとかね。でも、その世界が素敵な世界だ、ってあまり宣伝しちゃうと、みんな真面目に生きなくなっちゃうから、"鬼がいるぞ"みたいな話になってると思うんだけど。なんか、いろんな人と会える、みたいなのを天の川と重ねて、(7月7日に)しとこうかな。」

長久 「…4つくらいの答えが出ましたね(笑)」

全員 「(笑)」

箭内 「でもそのことを考えるプロセスが楽しい。坂本龍馬って11月15日に生まれて、11月15日に亡くなってるんだけど、同じ日だったらどうなんだろう?とか。季節はいつがいいんだろう?とか。あとみんながあまり忙しくないときの方がいいけど、みんなが休みときだと迷惑かけちゃうかな、とか、いろいろ考えちゃって(笑)」

長久 「そうですよね、納品の進行とかお葬式の出席とか(笑)」

箭内 「ゴールデンウィークの真ん中とかだったら、みんなバタバタさせちゃうなー、とか。いろいろ思っちゃいましたけど。」

長久 「なにをして過ごしますか?」

箭内 「僕はね、そのとき穏やかでいられる自信がまだ無いけど、穏やかでいたいな、と思うんですよね。暴動を起こしたり、やりたかったことを全部人に迷惑かけてもやったり、っていう風じゃない最期になれるように精進したいなと思うので。なんかほら、亡くなるときって走馬灯のようにいろいろ蘇るっていうじゃない。その走馬灯を、なんていうのかな。"ひとり走馬灯" っていうか、"自分走馬灯" っていうか、それをやりたいですよね。昔つくったCMを観たり、自分の人生の楽しかったことをちゃんと数えて、それをみてるうちに眠るように……そんな贅沢なことは無理だと思うけどね。自覚できるんだったら、そういう風に出会った人たちのことを一人ひとり思い出しながら、みたいな。ちょっとキザですけど。そういうのがいいな、と。」

長久 「七夕にそれをやってる箭内さんはいいですね。」

箭内 「(笑)七夕にそれをやりたいですね。長久允さんはどうですか?」

長久 「僕は、暑い日がいいな、とは思うんですけど。子ども2人いるんですけど、子どもとプール行って、暑い!つってアイス食って、死にたいですかねー。なんか、カーッとする感じがいいなと思うので。8月の…21……あ、でも、夏休み中がいいから、7月末かな!「7月30日」にします。」

全員 「……(笑)」

長久 「ちょっと湿っぽい話になっちゃいますね!(笑) でも、死ぬときにどうなるだろう、みたいなのって、課題が与えられない限り、考えないで生きてるな、って思ってて。今回『DEATH DAYS』の映画もそうやってつくってるんですけど。でも1回は考えてみたら、"どう生きるか"の方にかえってくるなっていう思いがあるので、この本もいろんな方のデスデイをどう過ごすか、とかどう捉えるか、とかをきいて入れてみて、読むことでちょっと逆の方の反動で生きるエネルギーになったらいいな、と思っています。……なんか、流れで暗くなっていっちゃうんですけど。意図はそう言うことですね。」

箭内 「ううん、なってないなってない。」

長久 「あとは死に対してフラットにというか、より日常的な目線で暮らす世の中になってるな、っていう思いもあって。コロナだとかいろんなことは起こるので。でもやっぱり生きていたいなと思いますね。」

箭内 「そうですね。」

箭内&長久 「森田さん、森田さんはいかがですか?」

森田 「あー……難しいですね。今回演じて、12月31日っていうのは、年の終わりで、死なないで生きることができたらまた1年頑張れるっていうのがすごくいいな、と思ったし。誕生日と……僕は2月20日なんですけど、一緒にしてもらえると、気持ちの整理がつくな、って思ったり。なんか全然関係ない、体育の日とかでもいいなって思ったり。」

長久 「全然関係ない(笑)」

森田 「うーん……どうしよっかなぁ。…でも、なんか、誕生日って難しそうですよね?気持ちの整理、つかないなぁ。うーん。関係ない日がいいかな。……なんだろうなあ……難しいっすねー。」

全員 「(笑)」

森田 「いや、決めらんないなー。決めてもらった方がいいな。」

箭内 「そうだよね。」

長久 「じゃあダーツかな。ダーツとかで……?」

森田 「そうですねー。」

長久 「なにをして過ごします?」

森田 「俺、箭内さんといっしょで「ひとり」かな。なんか、家族とも一緒にいたいけど、ちょっときついかな。だったら、ひとりになって大事な人を想って、最期…っていう感じですかね。なんか、こもると思います。ひとりで。」


♪生きてくことは / 音速ライン


箭内 「3週間、あっという間でした。」

長久 「そうですね。」

箭内 「まあ3週間と言いながら、3本録りしてるんですけど(笑)」

全員 「(笑)」

箭内 「でも、3本録ったから、1時間半前の3人の感じと、1時間半経ったときの3人の感じって、またどこかたぶん違っててね。聴き直してみると。そういうのってすごい楽しいよね。」

長久・森田 「楽しかったです。」

箭内 「人と会ったり喋ったりとかって。幸せでした。」

長久 「(少し間があって)……僕もです(笑)」

全員 「(笑)」

長久 「もっと、もっとやりたいです!(笑)」

森田 「やりたいですね!」

長久 「うん、6週ぶち抜きにしたいくらい(笑)」

箭内 「でもこうやってZoomでしか会ってなくて、どっかでばったり会えたら、ますますうれしいでしょうね!」

森田 「会いたいですね!」

箭内 「そのときは知らんぷりしないでくださーい。」

森田 「あはは、わかりました(笑)」

箭内 「誰でしたっけ、みたいなね(笑)」

森田 「(笑)」

箭内 「じゃあ、ますますこれからの『MOSS』の発展を祈って、願って、今日はお開きにしたいと思います。」

森田 「ありがとうございます。」

箭内 「風とロック、箭内道彦でした。森田剛さんと、長久允さんでした。ありがとうございます!」

森田・長久 「ありがとうございました!」