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さすらい人

  • 都道府県 秋田県
  • 性別 男性
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  • 喜びの季節に、ブルックナーの交響曲第4番第1稿を!

    雪国でも春の大きな足音が聞こえる季節になりました。
    最近、ブルックナーの交響曲第4番変ホ長調の第1稿を聴き、そのあまりにも革新的な内容に衝撃を受けました。ブルックナーは自作曲を、弟子や指揮者らの意見を取り入れて何度も改訂した作曲家ですが、9つある交響曲の内、第3、4そして8番には複数の改訂稿があり、それぞれの稿で楽曲の展開や内容が大きく異なります。
    第4番の場合は、1874年の第1稿、1878/80/86年改訂の第2稿、そして主に弟子たちが改訂した1888年の第3稿が存在し、現在最も演奏機会が多いのは第2稿で、以前この番組のクラシックプレイリストで紹介されたのも第2稿による演奏だと思います。第1稿と第2稿では、第3楽章が丸ごと差し替えられ、ほかの楽章は主題は同じでも展開が大きく異なるのですが、私が特に衝撃を受けたのは第4楽章です。
    第2稿の第4楽章は重厚で壮大、厳粛な雰囲気さえ感じますが、それに対して第1稿の終楽章は若々しく躍動感に満ち溢れています。第2稿以降の哀愁を帯びた流麗な第2主題のいわば「生まれたての姿」を第1稿では聴けますが、この第2主題と楽章末尾の箇所で耳に残る特徴的なリズムが気になり、第1稿の楽譜を取り寄せ、改めて聴いてみると、そこで頻繁に用いられていたのは5連符でした。素人目にも(素人耳にも?)ほかの楽器群の音につられてしまいそうになる「5連符の洪水」ですが、完璧に演奏できれば不思議な魅力を持つリズムになります。作曲当時の演奏技術ではあまりにも難しかったためか、第2稿以降はこの5連符は一切登場せず、またブルックナー存命中は第1稿による演奏は一度も行われませんでしたが、もし当時第1稿が完璧な演奏で初演されていれば、あるいは西洋音楽の歴史が少し変わっていたかもしれないなと思います。もしかしたら、ブルックナーはいつか演奏が可能になる未来のために、第1稿を廃棄せず遺してくれたのかもしれません。
    私のおすすめの演奏は、エリアフ・インバル指揮、フランクフルト放送交響楽団の1982年の録音です。喜びの季節にぴったりな躍動感に溢れたブルックナーの交響曲第4番第1稿、機会があればぜひお試しください。
    (万が一放送中に流していただけるのであれば、インバル盤第4楽章11分以降が第1稿の魅力が堪能できる箇所と思います。)

    さすらい人

    秋田県/男性 2022/3/29 20:45

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