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Yatch

  • 都道府県 兵庫県
  • 性別 男性
  • AuDeeプレミアム 登録ステータス
  • AuDee ベーシック
    未登録(無料プラン)
  • 【世界に一つだけの物語】として投稿させていただきます。1000文字枠に収まりませんでしたので、恐れ入りますが2分割で送らせていていただきます。

    【つづき】妻に自分のスマホから電話をして状況を伝えた時、急に申し訳ないという思いがこみ上げ、言葉が詰まりました。電話の向こうで妻も信じられないという声で『え?誰が?』と叫びました。それから仕事関係の様々なところへ連絡をとりいずれも自分の健康管理ができていなかったことを詫び、電話の向こうの驚きの声に、もう手遅れなのに不思議と何とか回復しなくては、と崩壊しそうになっている自分を奮い立たせました。
    生まれて初めての入院、生まれて初めての脳梗塞、まっすぐ歩けない、立ち上がると左へ盛大によろける・・・こんな状態で社会復帰などできるのか!?時々刻々と突きつけられる後遺障害に戸惑い、自分を責め、妻やセラピストたちの励ましの言葉だけを心の糧にリハビリに励みました。10日ほどの入院生活を妻は毎日1日中詰めてくれていました。人一倍さみしがり屋の私は面会時間が終わりに近づくに連れて、すこし落ち着かなくなります。一人きりの長い夜の孤独感に怯えさえ感じましたが、その生活も終わりを迎えました。退院です。病院の敷地外へ出ることを禁じられていた状態からやっと解放される!しかし病院の外は脳がダウングレードしてしまった私には過酷なものでした。以前なら難なくこなせていた仕事がスムーズにこなせない、ケアレスミスが多い、一番信頼できていなくてはならないはずの自分が信用できない!!人間不信という言葉は聞いたことあるが、自分不信とはかなりきつい。我ながら緻密な仕事をこなし、妥協を嫌い、そんなかっちりした自分が自分の中から姿を消し、別の見知らぬ自分が体に入ってきた…こんな私を妻は再び愛してくれるのだろうか?途中で入れ替わってしまう、そんなことは想定せず結婚しただろうに…詐欺のようなものだ、悔やんでも悔やみきれない、脳の一部が壊死した男がダンナなんて、可哀そうすぎる、これまで頼りにしてきたものの信頼性が大きくぐらついたのだ。これから彼女は何を頼りに生きていけばいいのか、それでも私を頼りにしなくてはならない妻を思うとしっかり元の自分に戻らなくては…、いや元に戻るのではなく新しい自分をつくりださす、それが懸命に私についてきてくれようとする妻への唯一の報いになるはずだから、よし!これまで以上に素敵なおっさんになってやる!!

    Yatch

    兵庫県/男性 2019/7/22 12:48

    Sound Library ~世界にひとつだけの本~

  • 【世界に一つだけの物語】として投稿させていただきます。1000文字枠に収まりませんでしたので、恐れ入りますが2分割で送らせていていただきます。

    これは先月6日、実際に私の身に起こったできごとです。
    その朝は月に二度の、瓶、缶ゴミの収集日で、近頃急増し、もはやゴミステーションへ妻が運べる限界を超えたウ井スキーや日本酒の一升瓶の空瓶を出勤前に私がゴミステーションへと運んだのでした。専業主婦である妻は私にゴミ出しや家のことをさせるのを嫌がりました。私はその朝はひどく疲れが残っており、随分眠く、できれば小分けにしてでも妻にゴミ出しを代わってほしい、などとわずかに思ったことが思い出されます。
    私はある金融機関の一支店の管理を任されており、その朝も例によって自店の芳しくない営業成績について朝礼で檄を飛ばそうとしたその時でした。あれ?しゃべりにくい!!いつもと活舌が違う・・・私のような中間管理職のおっさんのことなど普段なら気にもかけない部下たちが口々に様子がおかしいだのすぐに病院に行くべきだのやかましく言ってきました。彼女らのただならぬ様子から尋常ならざるものを感じた私はその言いようから、どうやら自分の脳に異変が起こっているらしいことを察知し、すぐさま脳を診てもらえる病院をネットで検索、直ちに向かったのでした。病院へ着くと車椅子に座らされ、今自分がどれだけ深刻な状態に置かれているのかを突き付けられました。そして次にMRI室。けたたましい鳥のさえずりのような音が響く部屋で巨大なドーナツのような装置の前で横にならされ、体をベルトで固定され、ああ、これですべてがわかるんだ、早く結果を知りたいと思いつつ、体を横にできた安堵感、休息に対する欲求が満たされていく感覚に浸りながらこのドーナツから出た時には今直面しているこの深刻な事態からもきっと解放され、日常に帰れる、などと楽観的に考えていました。しばらく待たされ、いよいよ医師との面談、結果発表の時がやってきました。『生活習慣ですね』医師は開口一番そう言い、先ほどのMRIの写真の中央あたりに白い十字架のように映っている個所を指し示し、『脳梗塞です』と言い放った。え!?なんでよりによって自分がそんな重病に…奈落の底に突き落とされたようなお先真っ暗という言葉がピッタリの瞬間でした。そして緊急入院。

    Yatch

    兵庫県/男性 2019/7/22 12:46

    Sound Library ~世界にひとつだけの本~