「生物多様性」を保全するために…環境省が昨年発足した「生物多様性のための30by30アライアンス」とは?

青木源太と足立梨花がパーソナリティをつとめ、暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていくTOKYO FMのラジオ番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」(毎週日曜 7:30~7:55)。1月1日(日・祝)の放送では、環境省 自然環境局 自然環境計画課 生物多様性主流化室 室長補佐の渡邉加奈(わたなべ・かな)さんに、「30by30(サーティバイサーティ)」をテーマに話を伺いました。


(左から)青木源太、渡邉加奈さん、足立梨花



◆生物多様性の損失を止めるために…

生き物たちの豊かな個性とつながりのことを意味する“生物多様性(biodiversity)”。この言葉は、1980年代後半から使われるようになったと言われていますが、環境問題への関心の高まりとともに、ここ数年で見聞きする機会が増えてきています。

地球上の生き物は、40億年という長い歴史のなかで、さまざまな環境に適応して進化し、種を増やしてきました。これらの生命は、一つひとつに個性があり、すべてが直接、間接的に支え合って生きています。

そして私たち人間は、こうした生物多様性によって、さまざまな恩恵を受けています。しかし、近年は地球温暖化や森林の過剰な伐採などにより、こうした生物多様性の損失が心配されています。

2010年に愛知県名古屋市で開催された「COP10(生物多様性条約第10回締約国会議)」で、“2020年までに、陸は17%、海は10%を保存する”という「愛知目標」が採択されました。日本は、陸では当時から20%以上が保全されており、すでに愛知目標を達成していたものの、「海は8.3%と目標には足りていなかった」と渡邉さん。

そこで、2019年に、沖合の海底の生態系を保護するため、2020年に小笠原方面を新たな保全地域に指定し、愛知目標を達成しました。ちなみに、渡邉さんによると、現時点で陸は20.5%、海は13.3%が保護地域として保全されています。

ただし、この「愛知目標」は10年以上前の目標にすぎず、生物多様性の損失を止めるには、まだまだ十分ではないとも言えます。そこで、2021年6月に開催されたG7サミットにて、G7各国は、自国で2030年までに陸と海の30%以上を保全しようとする「30by30」を目標に取り組むことを約束。現在、この目標達成に向けて、さまざまな取り組みが進められています。

◆“30by30”の目標達成に欠かせない「OECM」とは?

2030年の目標値まで、陸であと10%ほど、海は17%ほど保全地域を拡大していかなければなりませんが、どのようにして目標を達成していこうとしているのかというと、「まず、新たに国立公園などの保護地域を拡張し、管理の質も向上させます」と渡邉さん。

さらに、「“OECM”で目標を達成していきます」と声を大にします。OECMとは、“Other Effective area-based Conservation Measures”の略で、“保護地域以外で生物多様性の保全に貢献する地域”を指します。

具体的な方法については、「まず、民間の所有地を“自然共生サイト”に認定し、その区域のうち、保護地域と重複していない区域をOECMとして国際的なデータベースに登録していきます」と説明。例えば日本の場合、企業の管理する水源の森や田んぼといった里地里山、都市の緑地、研究や環境教育のための森林、河川敷などが当てはまり、「こうした場所で生物多様性の保全が図られている地域などが、OECMになり得ると想定される」と言います。

企業などによる生物多様性の保全の取り組みの一例では、絶滅危惧種である渡り鳥“ヤイロチョウ”のつがいが、社有林(企業が所有する森林)に複数生息していることが判明したことから、ヤイロチョウが生息できる環境を保全するために、独自に環境保全林として位置付けるなど、森林が持つ生物多様性を十分に認識した森林保全をおこなっているそうです。

◆「生物多様性のための30by30アライアンス」とは?

環境省では、生物多様性の保全に貢献する場所をOECMに登録する仕組みを作り、「OECMを30by30の保全地域のなかに組み込むことで、目標達成を目指していこうとしている」と渡邉さん。

まずは「自然共生サイト」の認定を4月からスタートする予定で、「これに向けて“生物多様性のための30by30アライアンス”の協力を得て『自然共生サイト』認定の試行や課題解決のための調査をおこなっている」と言います。

「生物多様性のための30by30アライアンス」とは、自らの所有地や所管地内のOECM登録や保護地域の拡大を目指す、あるいはそうした取り組みを応援するなど、30by30の実現に向けた行動をとる仲間たちの集まりのことで、環境省が2022年4月に発足しました。

産業界や研究機関、社団法人など、各分野にネットワークを有する21団体がコアメンバーとなり、2022年12月14日(水)時点で、すでに企業や自治体、NPO、さらには個人の方を含めて合計328団体が参加。現在もアライアンスへの参加者をWebサイトにて募集しています。

最後に渡辺さんは、「2030年までに陸と海の30%以上を保全する30by30目標を達成するには、地域、企業、そして、一人ひとりの力を結集してオールジャパンで取り組む必要があります。そのためにも、まずは皆さんに生物多様性の重要さを理解していただき、関心のある方は、ぜひ“生物多様性のための30by30アライアンス”に参加いただければと思います」と呼びかけました。

今回のテーマを通して、足立は「いろいろなことを知れた回だった」と気づきが多かった様子。なかでも、“生物多様性のための30by30アライアンス”が印象に残ったようで「個人でも参加できることに驚きました。興味のある人は、ぜひ参加してみてほしい」とコメント。

一方、青木はOECMに着目。30by30で掲げる目標達成のためにも「もちろん保護地域も大切ですけど、“それ以外”の部分も大事なんだなと感じた」と話しました。


(左から)青木源太、足立梨花



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<番組概要>
番組名:青木源太・足立梨花 Sunday Collection
放送日時:毎週日曜 7:30~7:55
パーソナリティ:青木源太、足立梨花
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/collection/

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