「小中高生の自殺者数」2022年から2年連続“500人超”…悩んでいる人にとって大きな支えとなる「ゲートキーパー」とは?

青木源太と足立梨花がパーソナリティをつとめ、暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていくTOKYO FMのラジオ番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」(毎週日曜 7:30~7:55)。3月17日(日)の放送では、岩手医科大学 医学部神経精神科学講座教授で精神科医の大塚耕太郎(おおつか・こうたろう)さんを迎えて、「今日からあなたも、命を支えるゲートキーパー!」をテーマに話を伺いました。


(左から)青木源太、大塚耕太郎さん、足立梨花


◆認知度は1割程度「ゲートキーパー」とは?

ゲートキーパーとは、悩んでいる人に気づき、声をかけ、話を聞いて、必要な支援につなげて見守る、という適切な対応を図ることができる人のことです。これらの対応が1つできるだけでも、悩んでいる人にとっては大きな支えとなります。しかし、残念ながらゲートキーパーの認知度は“わずか1割程度”という調査結果があります。

過去の自殺の原因や動機の統計を見てみると、主なものは健康問題、経済・生活問題、家庭問題などで、これらが複雑に絡み合っています。ちなみに、2023年の自殺者数は、前年よりもわずかに減って2万1,818人(暫定値)。女性が4年ぶりに減少しましたが、男性は2年連続で増加していて、特に自殺者数が多いのは50代の男性です。

また、非常に残念なのが小中高生の自殺者数で2022年は514人、これは統計以来過去最多で、2023年はそれに次ぐ507人となっています。過去のデータを見ると、学校問題が自殺の原因・動機の場合、「学業不振」が最も多く、次に「進路に関する悩み」「学友との不和」「入試に関する悩み」と続きます。前出の「学友との不和」には「いじめ」は含まれておらず、「いじめ」を原因とする自殺は数だけを見ると、他の原因・動機よりも少ないのが現状です。

精神科救急、自殺対策、災害精神医学を専門とし、日頃から心のケア活動に携わり、ゲートキーパーの普及活動にも尽力している大塚さんは、小中高生が自殺にまで追い込まれる背景について、「それぞれ“身近な問題”が関わります。子どもたちにとっての“世界”とは、学校、友達、成績、進路、家庭です。それによって悲しんだり、傷ついたりして、孤立やつらさを感じますが、まだ子どもの心の働きは未熟のため、追いつめられるようなストレスにさらされると、防衛機制が働き、抑圧して(ストレスを)抱え込んでしまいます」と説明します。

さらには、「防御することで強い不安や混乱は避けられますが、本心が見えづらくなってしまうこともあるので、防御して出てきた反応を“本音・本心だ”と勘違いしないように注意する必要があります。(不安は)無理に取り払うものでもないですが、見守る大人たちが一歩を踏み出し、子どもたちのサインをキャッチしてほしい」と望みます。

“生きるのがつらい”と深刻に悩んでいるからこそ、人には言えずに自ら命を絶ってしまう場合もあるため、そうした悩んでいる人に気づき、声をかけ、話を聞いて、必要な支援につなげ見守るゲートキーパーの存在が、とても重要だといえます。

◆悩みを抱えている人がいたら…

続いて、ゲートキーパーの役割を具体的に紐解いていきます。深刻な悩みを抱えている人は、例えば、体調が悪そう、元気がない、以前より痩せてきているなど、さまざまなサインを出しているので、「“いつもと違う”様子が見受けられた場合は、温かく声をかけてほしいと思います」と大塚さん。

とはいえ、どのように声をかければいいのか躊躇しがちですが、「“見て見ぬふり”ではなく、『最近お仕事が忙しそうですが、大丈夫ですか?』と、勇気を出して温かい態度で声をかけてみてください。“(あなたを)心配している”ということを伝えると良いかと思います」と言います。

そして、相手が話をしてくれた場合には、「話に相づちを打つなど、真剣に聞いている姿勢を相手に伝えることが大事です。聞き手がうなずくと、相手の発言量は増えるといわれています。また、最初に話を聞く場合は、相手が体験したこと、考えていること、感じていることを十分に聞いてあげてほしいと思います。相手は支援者の聞く姿勢によって、安心して悩みを話すことができるようになります」と解説。

話を聞く際の注意点として“正しいかどうか、良いか悪いかを判断したり、批判しないこと”を挙げ、「“話を聞くだけでは何も始まらない”と思う人もいるかもしれませんが、危機を感じている人にとって、寄り添って話を聞くことは最大の支援になります。“話を聞いてもらうだけで安心した”とおっしゃる方は非常に多いです」と強調します。

そして、話をしてくれた場合には、「話してくれてありがとう」「これまでよく頑張ったね」などと労いの言葉をかけることも大切だと言い、「労いは相手を認めることでもあります。たとえ本人の失敗から至った困難でも、これまで苦労してきたことをねぎらうことが大切です」と補足します。

◆“悩む人”を支援窓口につなぐ際の注意点

厚生労働省の「まもろうよ こころ」というサイトには、電話やメールで相談にのってくれる団体や、18歳以下の子どものための支援センター、法的トラブルの相談にのってくれる法テラスなど、さまざまな支援窓口が掲載されています。

こうした支援窓口につなぐ際、大塚さんは「心の働きかけを十分におこないながら、(相談先には)丁寧に具体的な情報提供をすることがとても大切です。また、本人が動けないような状況であれば、本人の了承を得たうえで相談先に連絡を取り、相談場所や日時などを調整して伝えることが必要な場合もあります」と注意点を挙げます。

そしてゲートキーパーは、相談先につないだ後も温かく見守ることが大切で、「なかには、声をかけても専門家の相談などを望まれない方や、相談先につながらない方もいらっしゃるかもしれません。ですから、つないだ後も温かく見守り『必要があれば相談に乗る』と伝えるのが良いと思います」と大塚さん。

最後に「あなたの大切な家族や友人、職場の仲間など、周りに“いつもと様子が違う”と感じる人がいたら、まずは声をかけてみてください。それが、悩みを抱えている人を支える第一歩となります」と呼びかけました。

今回のテーマで印象に残ったこととして、足立は、ゲートキーパーとして大切な行動である“声をかける”“寄り添ってあげること”について、「これが一番大事(な行動)じゃないかと思いました。皆さんも、声かけは難しいかもしれないけれど、周りをよく見て“いつもと違うな”と感じたら、話を聞いて寄り添ってあげることを、ちょっとずつでも心がけていただけたらうれしい」とコメント。

一方、青木は「具体的な問題を抱えている場合は、専門家や相談機関に相談するように促して、つなげていくことも大事。“つないだら終わり”ではなく、温かく見守ることが大事だなと思いました。ぜひ“ゲートキーパー”という言葉と、そういう役割があるということを覚えていただきたいです」と話していました。


(左から)青木源太、足立梨花



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3月17日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年3月25日(月) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。

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<番組概要>
番組名:青木源太・足立梨花 Sunday Collection
放送日時:毎週日曜 7:30~7:55
パーソナリティ:青木源太、足立梨花

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